2014年に配信を開始した『GRANBLUE FANTASY』(グランブルーファンタジー)は累計登録者数が1800万人を突破。2016年に配信を開始した『Shadowverse』(シャドウバース)はスマートフォン版だけでなくPC版も人気が高く、12月には優勝賞金100万ドル(約1億1000万円)という高額な賞金付きのゲーム大会「Shadowverse World Grand Prix 2018(仮)」も実施する予定だ。息の長い人気タイトルを育成し、話題性にも事欠かないのがCygamesだ。同社の戦略やゲーム業界全体の現状、そして今後の展望について、同社常務取締役で、『グランブルーファンタジー』や『シャドウバース』などのプロデューサーも務める木村唯人氏に話を聞いた。
(聞き手/稲垣宗彦、写真/志田彩香)

●木村唯人(きむら・ゆいと): Cygames常務取締役。東京大学大学院卒業後、カナデン、シリコンスタジオを経て、2011年、渡邊耕一代表とともに創立メンバーとしてCygamesに参加。『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』『シャドウバース』『プリンセスコネクト!Re:Dive』などのプロデューサーを務め、2015年4月より現職。運営中のタイトル以外に、今後リリース予定の新作のプロデューサーも担当するなど、経営と並行して、ゲーム開発にも深く携わっている
●木村唯人(きむら・ゆいと): Cygames常務取締役。東京大学大学院卒業後、カナデン、シリコンスタジオを経て、2011年、渡邊耕一代表とともに創立メンバーとしてCygamesに参加。『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』『シャドウバース』『プリンセスコネクト!Re:Dive』などのプロデューサーを務め、2015年4月より現職。運営中のタイトル以外に、今後リリース予定の新作のプロデューサーも担当するなど、経営と並行して、ゲーム開発にも深く携わっている
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昨年の「新作タイトル」はゼロ……!?

――2017年は重点課題として「新作」「クロスメディア」「海外展開」の3点を挙げていらっしゃいましたが、昨年を振り返っていかがですか?(関連記事:ゲーム連動アニメに注力のCygames 海外ヒットも狙う

木村唯人氏(以下、木村氏): 実は新作は何も出なかったんです。子会社のWithEntertainmentから『セブンズストーリー』という新作は出ましたが、当時出そうと思っていたものは何も出ず、すべて今年にずれ込んだ形になります。どれもトラブルが起こって仕方なく延期したのではなく、作りながら「もっとすごいものができそう」という思いがあってのことでした。

 2018年は『プリンセスコネクト!Re:Dive』が2月15日にリリースされたのを皮切りに、いくつか出せればと思っています。

――開発の遅延というよりも、完成度の向上というかなり前向きな理由だったんですね。クロスメディア展開についてはいかがですか?

木村氏: 一般的な意味での「クロスメディア」とは少し意味合いが違うかもしれませんが、リアルイベントや各企業とのコラボを実施して、それらが成功したと自負しています。

 例えば、『グランブルーファンタジー』(以下、グラブル)では初となるリアルイベント「グラブルフェス2017」を大好評のうちに終えられました。コラボは『グラブル』と、『サムライスピリッツ』『カードキャプターさくら』『活撃 刀剣乱舞』『進撃の巨人』などで実施しています。中でも、2017年10月のマクドナルドさんとのコラボレーションは大きな取り組みでした。

新作と海外プロモが結実 「今年はCygamesの年になる」(画像)
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新作と海外プロモが結実 「今年はCygamesの年になる」(画像)
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2017年12月22日、23日と2日間にわたって幕張メッセにて開催された「グラブルフェス2017」。ステージイベントや物販コーナーなど、さまざまなコーナーを設え、ファンを楽しませた

――Cygamesはアニメを絡めたクロスメディアが有名ですが、かなり多方面で展開している印象です。

木村氏: アニメのプロジェクトは規模としては非常に大きかったですね。『グラブル』のアニメ放送はかなり好評で、これを機にゲームを始めた人も多いですし、ブルーレイやDVDのセールスも好調です。

 2017年前半はこうしたアニメの動きが、後半はマクドナルドとのコラボが大きかったということです。非常に多くの方にマクドナルドで食事をしていただけました。『グラブル』には「スカイコンパス」という専用の周辺アプリがあって、アニメと同時にリリースしたのですが、これがリアル店舗とコラボする上での架け橋になってくれました。

GPSと連動したチェックイン機能や、アニメの放映情報やイベントの開催予定といったスケジュール管理機能を持つアプリ「グランブルーファンタジー スカイコンパス」。リアルイベント会場での特典配布など、プロモーションに活用された
GPSと連動したチェックイン機能や、アニメの放映情報やイベントの開催予定といったスケジュール管理機能を持つアプリ「グランブルーファンタジー スカイコンパス」。リアルイベント会場での特典配布など、プロモーションに活用された
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海外プロモーションのノウハウを蓄積

――「海外展開」についてはどうですか?

木村氏: 『シャドウバース』の各国ローカライズ版がリリースされました。まだ順調とまではいかないものの、各国でリアルなイベントやオンライン大会ができるようになり、足場を固めています。ようやく海外のそれぞれの場所で、地域ならではの大会やイベントを開けるようになってきたことには、大きな手応えを感じています。

――具体的にはどんな国でプロモーション活動をされたのでしょう?

木村氏:  韓国、台湾、フランス、ドイツ、イタリア、米国、まさに世界中という感じでしたね。

 『シャドウバース』に「アルティメットキャロット」というニンジンのオバケみたいなキャラクターが出てくるんですが、海外ではその着ぐるみをイベントに出演させたりもしました。着ぐるみの制作過程をYouTubeで公開したことが効いたのか、海外、特に欧米圏ではすごく人気が出ました。日本ではそういうことを海外でやってることすらあまり知られてないんですが(笑)。

――国内とは全く違う動きでプロモーション活動をされていたんですね。そうした海外での活動が国内にフィードバックされることもあるんでしょうか?

木村氏:  海外の事業部が地域に合わせて活動していて、開催するイベントにしても、集まってくるユーザーにしても、国内とはなに一つ同じではないですね。海外の活動からのフィードバックといえば、アルティメットキャロットが帰国して国内の大会に出演するくらいでしょうか(笑)。

 やはりプロモーション活動は国内のほうが先んじていろいろやっているのと、海外は海外でしかうけないことや、地域ごとの習慣的な違いもあって、日本と同じことはあまり通用しないです。例えば、韓国ではミニイベントを開くと無料で昼食が配られるのが当たり前なんです。そういう「当たり前のこと」が分からないと、ミニイベントひとつ開くにも逆効果になりかねないと分かりました。ノウハウの積み重ねができてきた感はあります。

2017年5月21日に『シャドウバース』初の国際大会として韓国で開催された「日韓戦」の日本代表選手たち(INVEN提供)
2017年5月21日に『シャドウバース』初の国際大会として韓国で開催された「日韓戦」の日本代表選手たち(INVEN提供)
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『シャドウバース』は中国語版もリリース

――国内、海外のゲームマーケットについて、2018年の戦略をお聞かせください。

木村氏: 国内に関しては『グラブル』をはじめとして既存のアプリが好調ですから、そこをしっかりサポートしていく。それと同時に、新たな挑戦をしていこうと思っています。

 まずは「昨年出せなかった新作を今年こそは出す」ということですね。Cygamesにしては数も多いですし、「今年はCygamesの年」になりますよ。

――それは力強い言葉です。

木村氏: 何しろ昨年は1本も出していないんで、2本くらい出せば「Cygamesの年」と言っても過言ではないんですが……(笑)。今年出す分に関しては既に手応えを感じているんです。

 ずれ込んだ分、去年の時点で2018年に出す予定だったタイトルはまだまだこれからというものがほとんどなので、来年以降のサービス開始に向けて煮詰めていく感じでしょうか。

――海外ではどういったタイトルの展開を考えているのでしょう?

木村氏: 海外向けタイトルを作るのではなく、既存タイトルの海外展開を予定しています。去年より今年、今年より来年という勢いで日本向けに作ったタイトルが海外で受け入れられる時代になってきている実感があるんです。海外と一口に言っても国によって事情は違うのですが、需要があるところにそれぞれ適したタイトルを投入していくということを今年はやっていこうと思っています。

 世界の各地で情報のパイプができてきて、例えば韓国では『プリンセスコネクト!Re:Dive』のリリースが決まっていますし、アジアのほかの地域でもローカライズを考えています。今年は『シャドウバース』の中国語版をネットイースさんからリリースする予定で、それも楽しみですね。

今年のリリースがほぼ決定している『ウマ娘 プリティーダービー』のティザービジュアル。超人的な走力を持つ神秘的な美少女たち「ウマ娘」を育成し、国民的スポーツ・エンターテインメント“トゥインクル・シリーズ”というレースバトルでの勝利を目指す
今年のリリースがほぼ決定している『ウマ娘 プリティーダービー』のティザービジュアル。超人的な走力を持つ神秘的な美少女たち「ウマ娘」を育成し、国民的スポーツ・エンターテインメント“トゥインクル・シリーズ”というレースバトルでの勝利を目指す
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――新作に関しては昨年出すはずだったものがすべて今年にずれ込んでしまったとのことですが、期待している自社タイトルについて、公開可能な範囲で教えてください。

木村氏: 2月15日にアニメRPGの『プリンセスコネクト!Re:Dive』をリリースしましたし、「ウマ娘」という種族のアイドルを育てる『ウマ娘 プリティーダービー』もおそらく年内に出ます。他に、まだタイトルを言えませんが、開発中のものを加えて、最低3タイトル。スマホ向け以外では、KONAMIさんと共同で開発しているコンシューマータイトルも今年リリースとなります。どれも期待できる内容です。

 もともとCygamesはあまり同じようなゲームを作らないのですが、今年発売されるタイトルも、ジャンルとしては多岐にわたっています。

――先ほどは海外でのプロモーション活動において、地域ごとのノウハウが積み重なってきたというお話が出ました。今年は国内でも海外でも、プロモーションはさらに本格化するということでしょうか。

木村氏: 『シャドウバース』については世界中でイベントの出展や大会の開催を計画してまして、最終的に国内で12月に開催するゲーム大会「Shadowverse World Grand Prix 2018(仮)」につなげていく予定です。昨年は海外展開を始めたばかりで、先々のことを語れる状態ではなかったのですが、今年はようやくこうした展望を語れるようになりました。

コナミデジタルエンタテインメントとの共同開発タイトルとして2018年の発売が予定されている『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS』(PlayStation4)。2003年にPS2で発売され、熱狂的なファンを生み出したロボットアクションゲームをPS VRに対応させ、新たにリマスタリングしている
コナミデジタルエンタテインメントとの共同開発タイトルとして2018年の発売が予定されている『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS』(PlayStation4)。2003年にPS2で発売され、熱狂的なファンを生み出したロボットアクションゲームをPS VRに対応させ、新たにリマスタリングしている
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『プリンセスコネクト!Re:Dive』。総勢50名以上のヒロインに70万字以上におよぶ膨大なシナリオ、『進撃の巨人』などで知られるWIT STUDIO制作の美麗なアニメシーンなど充実の内容を誇るアニメRPG。豪華声優陣をそろえ、メインのシナリオライターは日日日氏、メインテーマ作曲は田中公平氏とスタッフも粒ぞろいだ
『プリンセスコネクト!Re:Dive』。総勢50名以上のヒロインに70万字以上におよぶ膨大なシナリオ、『進撃の巨人』などで知られるWIT STUDIO制作の美麗なアニメシーンなど充実の内容を誇るアニメRPG。豪華声優陣をそろえ、メインのシナリオライターは日日日氏、メインテーマ作曲は田中公平氏とスタッフも粒ぞろいだ
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eスポーツはあくまでもゲームの一側面

――『シャドウバース』の世界大会のお話が出ましたが、日本では2月にeスポーツの新団体「JeSU」が発足するなどeスポーツを本格的に盛り上げようという活動が始まっています。Cygamesはかねてより独自にゲーム大会を展開されてきましたが、このような動きは、御社の取り組みに影響がありますか?

木村氏: 『シャドウバース』はこれまでから単独でも大会を開催していますし、今年末には100万ドル(約1億1000万円)の高額賞金を賭けた「Shadowverse World Grand Prix 2018(仮)」も日本で開催する予定です。

 ただ、こうした国内の動きに足並みをそろえるのは悪いことではありませんし、JeSUとともに何かしらの取り組みは検討はしています。『シャドウバース』はたまたまシステムとして日本でのeスポーツ展開に関する諸問題をクリアできましたが、JeSUのライセンスはすべてのタイトルを網羅できるという点で、意味のあるものだと思います。

 eスポーツという流れに注目はしていますが、当社としてはそれに向けた専用タイトルを出すというより、大会以外でもどう遊んでいただけるのか、プレーヤーに喜んでいただけるのかを考えたいですね。eスポーツはあくまでもゲームの一側面でしかなくて、プレーヤーに楽しんでいただけるゲームを作るのが第一。その中にeスポーツにも対応できるものが出てくるだろうとは思っています。

新作と海外プロモが結実 「今年はCygamesの年になる」(画像)
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IPをフックにユーザーを拡大する

――御社でも今年はコンシューマーゲームのタイトルが控えているとのことです。PS4、Nintendo Switchなど据え置き機が引き続き好調ですが、この状況を踏まえて、2018年のゲーム産業のトレンドをどのように予測されていますか?

木村氏: 確かにNintendo Switchも売れていますし、直近では『モンスターハンター:ワールド』(カプコン)も好調と、コンシューマーにも明るいニュースが多くて、久しぶりにゲーム業界全体が活気を帯びた1年になりそうだなと感じています。

 スマートフォンゲームはここ数年、上位のタイトルが固定化していて、年に1~2本しか新しいゲームが上位に入ってこられない状態が続いていました。毎年言っている気もしますが、そういった状態がどこかでガラっと崩れて、長期間人気だったタイトルが飽きられるタイミングが来ると思っています。ユーザーの中で新しいタイトルを遊びたいという意欲は、時間経過とともにどんどん高まっていて、それに見合うタイトルを適切なタイミングで出せれば大ヒットとなる可能性はあるでしょう。そのチャンスは去年よりも今年のほうがさらに大きくなっていると思います。

 スマートフォンゲームに関しては国内のプロモーション活動がかなり洗練されてきて、常に新しいものが求められているというか、スマートフォンのテレビCMひとつをとっても、ちょっと面白いくらいでは埋もれてしまうようになってきました。プロモーションの企画自体が非常に重要になってきたと思います。

――世界的に見るとPCでのゲームユーザーもかなり増加の方向にあると思います。PCでの展開はどのように考えられていますか?

木村氏: 例えば『プリンセスコネクト!Re:Dive』がそうですが、スマートフォン版のタイトルのいくつかは、PCでも展開していく予定です。また、コンシューマーのタイトルについても、需要によってPCでも遊べるようにするつもりでいます。

 つまり、PC専用のタイトルを出すということではなく、スマートフォンやコンシューマーをベースにマルチプラットフォーム化する形で、PCも視野に入れるということです。『グラブル』はPCのブラウザーでも遊べますが、『シャドウバース』はPCのネイティブアプリとしてリリースしました。あれでいろいろとノウハウを得られたのが大きいですね。『シャドウバース』もそうだったのですが、ゲームのデザイン段階からマルチプラットフォームでの展開はある程度考えています。

――若い世代にとっては、ゲームのプラットフォームはスマートフォンが中心です。そうしたユーザーを他のプラットフォームへと広げていくには何かしらの工夫が必要にも思えます。

木村氏: Cygamesの場合は、もとより漫画やアニメなどのマルチメディア展開をしていますし、地続きになっているゲームが多いので、IPのつながりが1つのフックになると思います。『GRANBLUE FANTASY PROJECT Re: LINK(仮)』も、昨年末初めてプレー画面を発表しましたが、スマートフォンで『グラブル』を遊んでいる人にすごく反響がよくて、プラットフォームをまたいで遊んでもらえるわけですし。

 Cygamesは若い会社なので、歴史のある会社に比べてIPが未熟な部分があると思うんです。ですからIPを僕らの手で大事に育てて、10年後にもみんなが好きでいてくれることを目標にしてクロスメディア戦略を展開しています。

――昨年から練り込み続けた新規タイトルの発売と、ノウハウを蓄積してきた海外でのプロモーション。10年後に向けて、今年はまいてきた種が結実する年、まさに「Cygamesの年」になりそうですね。

木村氏: そうですね。今年は新しいタイトルを含め、いろんなものをお目に掛けられると思うので、ぜひ期待してほしいです。

新作と海外プロモが結実 「今年はCygamesの年になる」(画像)
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