稟議書に書きにくい企画ほどプロモーション効率がいい

──2017年は創業10周年を迎えた年でした。2017年から今年にかけて、状況はいかがですか?

木谷高明氏(以下、木谷氏): 2017年春にリリースしたスマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下、ガルパ。Craft Eggとの共同制作)が大ヒットしました。『ガルパ』は、ガールズバンドをテーマにしたゲーム、アニメ、ライブなどのメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』から生まれたリズムゲーム。ゲームに先がけてアニメを2017年1月にスタートし、その時点からゲームのプロモーションに全力で取り組みました。 その効果もあって、先日、500万ダウンロードを突破することができました。

 2018年1月には、JR山手線で『ガルパ』のラッピング車両を10編成走らせました。同じ時期に『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』(KLabとの共同制作)のラッピング車両も10編成走らせたので、山手線全52編成中、20編成がブシロードのゲームでラッピングされていたことになります。こんな規模で展開するのはJRさんでも初めてのことだったそうです。

『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(iOS/Android、配信中)
『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(iOS/Android、配信中)
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2018年1月2日から27日まで、JR山手線で運行したラッピング車両
2018年1月2日から27日まで、JR山手線で運行したラッピング車両
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――それはすごいですね。

木谷氏: 2018年の元日には、21時から翌朝10時まで13時間にわたり、TOKYO MXテレビで『バンドリ!&ガルパお正月13時間スペシャル!』を放送しました。テレビアニメ全話のほか、過去のライブイベントの映像などを一挙に流す企画だったのですが、オンエアされている夜中じゅう、私も局に詰めて立ち会い、実況ツイートしながら、ファンの方とも交流しました。

 全く同じものをYouTube Liveでも流していたのですが、同時接続数は一番多いときで1万4000人ぐらい、延べ視聴者数は40万人ぐらいに達しました。

――夜中とはいえ、元日に地上波テレビで13時間もの枠を取れるんですね。

木谷氏: 元日って暇じゃないですか。店も開いてないし、テレビ番組もバラエティーばかりだし。だから、やってみようと。TOKYO MXさんとの長年のお付き合いの関係で、13時間という枠をご用意いただき、結果、ユーザー層を広げることができました。TOKYO MXさんには本当に感謝しています。

――昨年のインタビューでは「プロモーションにもシナリオが必要」と話されていました(関連記事:ブシロード、『バンドリ!』は声優ライブやアニメと連動)。

木谷氏: これは僕の主義なのですが、稟議書を書きづらい方法ほど、プロモーション効率がいいと思っているんです。結果の予測が数字としてちゃんと出てこない、というやつです。

 上司は「それはどれだけ効果があるんだ、数字で出せ」というじゃないですか。先ほどの交通広告にしても、1日の乗降客がこれだけある、というのは示せるけれど、「じゃあ、どれだけの人が広告を本当に見ているのか」と問われると、実数は分かりません。その結果、普通の会社なら「だったら、だめだよ、そんなの」となってしまいます。そして、ダウンロード当たりの単価が見えるネット広告に流れてしまうでしょう。でも、うちは、そこをあえてやってみる。だから、みんながびっくりしてくれるんだと思っています。

――なかなか、他にはまねできないことかもしれませんね。

木谷氏: 今の時代、コンテンツを立ち上げたり伸ばしたりする、とりわけ立ち上げるときに、何が一番重要かというと、どうやって“勝ち組感”をつくるか、ということです。一度、負けたイメージが付いてしまうと、なかなかひっくり返せません。全部は無理だけど、何か1つに集中して、一点突破していく。それで、“勝ち組感”をつくっていくのです。

 10年前に比べ、エンタメの種類はものすごく増えている。スマホのゲームだけでも、とんでもない種類があります。接する情報量も格段に増えています。そんな中で、大切な時間とお金を何かに費やすというのは、投資することと同じだと思います。下がる株をわざわざ買いに行く人はいないですよね。勝ち馬にしか乗らないですよ。だから、勝つ雰囲気を出すことが、コンテンツを立ち上げて伸ばすうえで、一番大切なことなのです。

木谷高明取締役
木谷高明取締役
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