“買いたい気持ち”を後押し

 初代プリウスの発売から20年が経ったとは言え、PHVはまだ新しいカテゴリーだ。オーナーになったことがある人はもちろん、乗ったことがある人すら、ガソリン車に比べれば少ない。そのためPHVに対して、「乗っているうちに電池が切れて、走行できなくなるかもしれない」といったネガティブイメージを持たれかねない。そこでアプリを介して現在の充電量を簡単に確認できるサービスなどを提供することで、購入を検討している人に安心感を提供。心理的ハードルを下げ、“買いたい気持ち”を後押ししようとしている。

 アプリの地図で、近隣の充電ステーションを探せる機能を充実させたのもその一環だ。新型プリウスPHVはEV走行距離が68.2kmと従来モデルの2倍超延びており、出先で電池切れを起こす懸念は減っている。それでも、ユーザーなどの不安心理を少しでも軽減するよう努めた。

充電が減ったらメールでお知らせ

 新型プリウスPHVにはエンジンを始動させなくても家電製品などに給電することができる「EV給電モード」が新たに搭載された。ここにも安心・安全につながるきめ細やかなサービスがある。

 外部給電機能は、キャンプなどに出かけた先でも家電製品などが使えて便利だが、「管理せずに給電し続けると、電池が切れて(プリウスPHVが)鉄の塊になってしまう恐れがある」(トヨタ)。そこで給電プラグからデータを取得してDCM経由でアプリにデータを送り、手元で確認できるようにした。さらに電池残量が一定レベルを下回ったらメールでアラートを飛ばすなど、鉄の塊にならない工夫を徹底している。

 この給電状況の表示などは、先に触れたDCMとアプリとが通信することで実現している。またDCMはオーナーサポートにも活用している。エンジンや各種パーツの状態などのデータをDCM経由で取得することで実現した、「故障予知サービス」という新しいサービスがそれだ。

 クルマから取得したさまざまなデータを販売店とサポートセンターとで共有して分析。乗っているクルマに不具合が発生しそうな兆候が見られた場合は、トヨタ側からオーナーへ積極的に連絡するもの。従来はオーナーから問い合わせがあった場合にのみ対応する“待ちの姿勢”だったが、これを転換。安心・安全という視点で一歩踏み込んだサービスの提供を実現した。

出かける前にエアコンをつけ、快適な気温にコントロール
出かける前にエアコンをつけ、快適な気温にコントロール
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 一方、「より便利に、快適に」という観点では、アプリから車内のエアコンをリモートコントロールできる機能を新たに提供する。自宅に居ながら車内温度を設定し、快適な状態でドライブを始められる。従来モデルではコントロールできるのは冷房のみ。新型では暖房も操作できるようになった。

 こうしたトヨタにおけるデータやネット活用を推進する役割を負っているのが、昨年4月に設立された「コネクティッドカンパニー」である。同カンパニーはDCMなどを通じて収集したデータを活用し、クルマの新しい魅力や価値を創造することを目指している。Pocket PHVというスマホアプリは、その具体的な成果物の1つ。購入予備軍を含めて、プリウスPHVの使い勝手や安心・安全性能を高め、購入意欲の向上につなげる。オーナーの満足度を高めることにも一役買う。

 もちろん、全てのクルマを通信ネットワークにつなげるというトヨタの「コネクテッドカー(つながるクルマ)」構想からすれば小さな一歩だが、踏み出した意義は大きい。今後もクルマの新たな価値創出を目指して、アプリ開発のアクセルを踏み込む方針だ。

(文/中村勇介=日経デジタルマーケティング)