MVNO事業「LINEモバイル」など、昨年も積極的に新規事業に挑戦したLINE。ゲーム部門では『LINE バブル』シリーズや『LINE:ディズニー ツムツム』など、既存タイトルの人気を維持しつつ、ミドルコア(中級者)層に向けた新規タイトルも複数投入。エントリー(初級者)層からミドルコア層までターゲットを広げた2016年に続き、2017年にLINEが目指すスマホゲームの理想像とは。LINE執行役員の鄭 然喜(チョン・ヨンヒ)さんに話を聞いた。

(文/小沼理=かみゆ、写真/田口沙織)

鄭然喜(チョン ヨンヒ): LINE 執行役員 (Executive Officer)。2000年愛知淑徳大を卒業。2005年にNHN Japan株式会社へ入社し、PCオンラインゲームのソーシングから事業までパブリッシング事業を統括する。2012年からは「LINE GAME」の立ち上げを主導し、2013年にはNHN Japanの商号変更に伴いLINEにて「LINE GAME」事業を統括する。2016年4月に執行役員に就任、現職。
鄭然喜(チョン ヨンヒ): LINE 執行役員 (Executive Officer)。2000年愛知淑徳大を卒業。2005年にNHN Japan株式会社へ入社し、PCオンラインゲームのソーシングから事業までパブリッシング事業を統括する。2012年からは「LINE GAME」の立ち上げを主導し、2013年にはNHN Japanの商号変更に伴いLINEにて「LINE GAME」事業を統括する。2016年4月に執行役員に就任、現職。
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ゲーム初心者に届いた『LINE ブラウンファーム』

――登場4周年の『LINE バブル』『LINE POP』、3周年の『LINE:ディズニー ツムツム』など、2016年もLINE GAMEは既存の人気タイトルが好調だった印象があります。改めて2016年を振り返って、いかがですか。

鄭然喜氏(以下、鄭氏): 『LINE バブル』シリーズが2016年10月7日にシリーズ世界累計5000万ダウンロード、『LINE:ディズニー ツムツム』が同10月29日に世界累計6500万ダウンロードを突破するなど、既存タイトルが好調でした。『LINE バブル』『LINE POP』に関しては、その後に発売された『LINE バブル2』『LINE POP2』も好調で、これらのゲームをユーザーに継続して遊んでもらえたのが、2016年の特徴の1つです。

タイ、台湾でヒット作 LINEは「ゲームの人口増やす」(画像)
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2016年11月に世界累計1000万ダウンロードを突破した『LINE ブラウンファーム』。日本のほか、台湾、タイ、香港、マカオでリリースされている。(c)LINE Corporation/(c)LINE PLAY Corporation. ALL RIGHTS RESERVED
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――『LINE ブラウンファーム』のどういった点がヒットにつながったと考えますか。

鄭氏: 毎日コツコツ遊んで、農場をかわいく成長させていくというシステムが、ゲーム初心者の女性層に届いた結果だと感じます。

 もともとLINE GAMEがここまで多くの方に遊んでもらえるようになったのは、「ゲームは難しい」「男性がやるもの」といった固定観念を取り払い、ハードルを下げたことにあります。普段から「LINE」でスタンプに登場するブラウンやコニーなどのLINEキャラクターに親しんでいれば、そのLINEキャラクターがゲームを始めるきっかけになる。また、友人同士でスコアを競ったり協力プレーをしたりすることで、ゲームはメッセンジャーでテキストやスタンプを送るのと同じ「コミュニケーション」になります。

 これまでゲームに触ったことがない人に、その入口を提供したことがLINE GAMEにとって、最も意味があることだと思います。今後もエントリー層への開拓は続けていきたいと考えています。


進む海外進出 次のねらいはインドネシア

――海外展開の状況はいかがしょうか?

鄭氏: 海外で安定した市場を獲得しているのは台湾とタイです。ただ人気のゲームは異なります。

 台湾では『LINE レンジャー』『LINE ゲットリッチ』の人気が高く、パズルゲームは日本ほど主流ではない。人気は低い。ゲーム市場全体を見るとしっかりとした世界観のRPGが人気で、LINEの中ではミドルコアなゲームが受けています。

 一方、タイでは『LINE クッキーラン』がヒットし、高い人気を博しました。日本や台湾と比べると、タイのゲーム市場はまだ新しく、完成されていないので、ポテンシャルがある。今後もいろいろなジャンルの展開が考えられると思います。

タイで人気ゲームに成長したという『LINE クッキーラン』。上は日本、下はタイのタイトル画面。(c)2014 Devsisters Corp., All Rights Reserved
タイで人気ゲームに成長したという『LINE クッキーラン』。上は日本、下はタイのタイトル画面。(c)2014 Devsisters Corp., All Rights Reserved
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タイでリリースされている『LINE クッキーラン』のゲーム画面。「タイのゲーム市場はまだ新しく、今後もいろいろなジャンルの展開が考えられる」という。(c)2014 Devsisters Corp., All Rights Reserved
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――その他に今後力を入れていきたい国はありますか。

鄭氏: 期待しているのはインドネシアです。インドネシアは現在「LINE」が成長中。これに合わせて、ゲームも準備していきたいと考えているところです。デバイスや通信環境を考え、まずはスペックの軽いものから提供していく予定です。

 LINE GAMEの展開には、まず「LINE」が普及していることが先決です。「LINE」が普及していればそのプラットホームを活用しながら展開していくことができます。それはLINEにしかできないことでもある。ゲーム単体でユーザーにアピールするのではなく、新しい体験として提供していくのがLINE GAMEの役割だと考えています。

市場に浸透していない新たなゲームを届けたい

――2017年はどんなアプローチを考えていますか?

鄭氏: 去年はどのジャンルにも偏らず、いろいろなゲームが人気を集めていました。この路線を踏襲し、今年も多様化を続けていきたいと考えています。ただ、既存のものをまねするのではなく、新しいことにチャレンジしていきたい。昨年はエントリー層、ミドルコア層向けのゲームが半々でしたが、今年はエントリー層を大事にしつつ、ミドルコア向けの新しいゲームにチャレンジして、客層を広げていきたいと考えています。

 ただ、LINE GAMEにとっての新しさとは、まだ市場に浸透していないものをちゃんと届くようにするということでもあります。例えばFPS(主人公視点のアクションゲーム)というジャンルは日本ではヒットしないと言われていますが、幅広く考えればリアル対戦するゲーム、遊びだと考えられます。特定のジャンルで語るのではなく、いろんな種類の遊びを提供する、チャレンジしていくのがLINE GAMEの役割だと考えています。

 既存のゲームタイトルやキャラクターなどのIP(知的財産)を起用するにしても、最近は既存タイトルの衣替えをするようにIP要素を加えても成功しません。新しいゲーム性を足さないと、ユーザーにも愛されないんです。これはキャラクターなどを使っていないゲームでも同じですね。既存のゲームの改良ではなく、新しいものを提供したいと考えています。

――具体的にはどんなゲームでしょう?

鄭氏: 現時点でタイトル名を言えるのは、イマジニアの子会社であるSoWhatというスマホゲーム会社と共同開発した『LINE アキンド星のリトル・ペソ』というゲームでしょうか。現在事前登録中(2017年2月現在)で、癒やし系のかわいいキャラクターを使った、女性向けのゲームです。

 『LINE アキンド星のリトル・ペソ』は画面をタップすることでキャラクターを育成する「タップゲーム」というジャンル。タップゲームは欧米やアジア圏では一定の需要がありますが、日本ではまだ浸透していません。日本にはそもそもタップゲームというジャンルがあることを知らない人も多いでしょうし、これこそLINE GAMEが挑戦していく分野だと感じます。

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 それ以外にも、『LINE ぷるぽん』というゲームを2月にリリースしました。『LINE ぷるぽん』はオリジナルIPを使った若者向けのパズルゲームで、2015年から準備していたもの。ゼロベースで作ったゲームです。これも新しい取り組みなので反響が楽しみです。

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いやし系のかわいいキャラクターを使った『LINE アキンド星のリトル・ペソ』。画面をタップすることでキャラクターを育成するタップゲームだ。(c)SoWhat, Inc. (c)LINE Corporation

――昨年はスマホでVRが楽しめるようになりましたが、VRを使ったゲームのリリースは考えていますか?

鄭氏: 現在はまだ様子を見ている段階で、もっと一般的に浸透してから開発を検討したいと考えています。特定のユーザーを対象にするのではなく、なるべく大勢の人に遊んでもらいたいと考えているので。

 「LINE」はゲームをやらない人、エントリー層、ミドルコア層、ハードコア(上級者)層とすべてがいるプラットホーム。その特性を生かし、ユーザーが望んでいるものを提供するのがLINE GAMEの役割だと思います。

 LINEでは「今年は○本のゲームを投入する」というように本数で目標は決めていないんです。大事なのはユーザーのニーズを考え、それをきちんと提供すること。新しい市場を作ったり、ユーザーに新しい体験を提供したりすることが一番大切なので、一つひとつのクオリティーを上げることが重要だと考えています。

 私たちが考えるクオリティーとは、グラフィックのきれいさ、派手さではなく、ユーザーに面白さがちゃんと伝わることです。LINEで作る以上、「分かりやすさ」は必ず守らなくてはいけない要素だと思っています。ゲームの入口を増やすのが私たちの役割ですから。

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日本ゲーム産業史
ゲームソフトの巨人たち
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