動画配信でTGSの熱気を世界に発信

――課題とされていたスマートフォンなどモバイル系でも、そろそろ実績が上がってきたのはありませんか。

辻本氏: 実はまだ十分なデータが集まっていません。集められるような環境がようやく整った、といったところでしょうか。2015年9月に配信を始めた『モンスターハンター エクスプロア』についても、さまざまなイベントを打ちながら検証を続けている段階です。昨年10月から始まったアニメの影響もあり、パズルゲームの『オトモンドロップ モンスターハンター ストーリーズ』もユーザー評価が良いようです。また、ソーシャルゲームではありませんが昨年『囚われのパルマ』も投入しましたし、こちらについても注目しています。

 しかし、肝心なのは収集したデータをどのように分析するかということです。データを基に仮説を立て、具体的な施策に落とし込んでいかなくてはなりませんが、十分にノウハウが蓄積されたとはまだ言えません。データが収集することができたので、それでいったい次はどうするんだ、ということですね。開発はチーム体制を含めて既にモバイル向けの取り組みを始めています。次は営業部隊、マーケティングやプロモーションでも頭を切り替えてやっていく時期に来ていると言えるでしょう。

――最後に2017年、日本のゲーム産業はどのようなトレンドになるとお考えですか。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)理事として、業界全体を俯瞰して教えてください。

辻本氏: 日本のゲーム業界全体を見れば、スマートデバイスで遊ぶユーザーが増えていますし、据え置き型ゲーム機についても販売台数が伸びており、ソフトも売れています。そうした中、考えなくてはならないのはゲームをプレイする環境が非常に変わってきていることです。先ほど申し上げた、ダウンロードしてすぐにゲームが買えるといったことも含めてですね。こうしたデジタルな環境をプロモーションやセールスにどう結び付けて展開していくか、プラットフォームホルダーさんと共に考えてやっていきたいと思っています。

 もう一つの変化は、Nintendo Switchの発売です。これはゲーム業界全体として盛り上げていきたい。さらにVRについてもまだユーザーの手に行き渡っている状況ではないので、AR(拡張現実)を含め有効な手立てを考えていくべきでしょう。こうした新しい動きだけを見ても、2017年はゲーム業界に大きな変化が訪れてもおかしくありません。各社とも、このビジネスチャンスをとらえるために開発を進めていることでしょう。

――東京ゲームショウ2017(TGS2017)に対する期待感はいかがでしょうか。

辻本氏: 昨年の東京ゲームショウ2016には、4日間で過去最高の27万1224人もの人たちが来てくださいました。これほどの規模になると、会場である幕張メッセのキャパシティではもはや限界です。そこで会場に来なくても東京ゲームショウを楽しんでもらえるような方法として、動画配信の強化を考えなくてはなりません。

 昨年は、国内向けに実施したTGS公式動画チャンネへの来場者数が約440万人となり、実際の来場者の方と合わせて500万人弱の人に東京ゲームショウを体験してもらいました。これが1000万人くらいになれば、世界の多くの人たちに東京ゲームショウを楽しんでいただいたと言えるのではないでしょうか。そうすることによってゲームに対する注目度も上がるでしょうし、出展企業にとっても東京ゲームショウの価値が高まります。

 また、当たり前のことですが来場者は関東圏の方々が中心で、動画配信ではそれ以外の地域の方々が多くなります。今年はさらに、全国のゲームユーザーに対して東京ゲームショウへの理解を深めてもらえるよう推進していきたいですね。そして国内だけでなく海外にも、特にアジア圏の方々に対して動画配信を通じて東京ゲームショウの熱気を伝え、ゲーム購入のきっかけにしていただければと思っています。

 2017年はVRのような新たなデバイスに向け、さらにクオリティーを向上させたゲームが登場するでしょうし、Nintendo Switch対応のゲームも出展されるでしょう。新たなゲームの変化を感じとってもらえるのではないでしょうか。もちろん、eスポーツも東京ゲームショウで盛り上げ、日本におけるeスポーツ時代の到来をアピールするつもりですよ。

『モンスターハンター エクスプロア』
『モンスターハンター エクスプロア』
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eスポーツ時代の到来をアピールしたいと話す辻本氏
eスポーツ時代の到来をアピールしたいと話す辻本氏
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