『バイオハザード7』が戦略の試金石

――昨年のインタビューで「2016年はインターネットによる変革に対応する重要な年、次の時代に備える1年になる」とおっしゃっていましたが、振り返っていかがでしょうか。

辻本氏: カプコン全体の売上高において、デジタル配信の構成比率が上がってきていますし、プラットフォームホルダー企業の状況をうかがっても、その流れは同じのようです。ただ、こうした状況は予測できたことです。

 今、カプコンが検証したいのは1月に発売した『バイオハザード7 レジデント イービル』の動向です。既に体験版のダウンロードが世界全体で715万件(2017年2月10日時点)に上っているのですが、そのうちどれくらいの人が実際にゲームを購入してくれるのか国別で把握したい。このタイトルは13カ国言語に対応しており、これはカプコンのゲームの中でもトップクラスです。ゲームを購入できる所得水準の国の言語を、ほぼ網羅していると言えるでしょう。

――具体的にはどんなことを検証したいのですか。

辻本氏: 今やゲーム機はインターネットにつながっているので、デジタルによるダウンロード販売数だけでなく、パッケージを購入したユーザーでも専用のWebサービスに登録してもらえればユーザー動向が把握できるのでビジネスに活用できます。

 『バイオハザード7』では追加アイテムをダウンロード販売して、1年ほどかけて継続的に売っていきたいと考えていて、デジタルとパッケージの販売比率を見ながら戦略を変えていくことも検討しています。

 例えば体験版は遊んでいないけど本編を買ってくれているユーザーが多い国なら、体験版をもっとプッシュすれば販売が伸びるかもしれない。また「バイオハザード」シリーズの『4』『5』『6』も現行機に対応しているので、データに照らし合わせて分析すれば、売れる余地が見つかるかもしれませんよね。

 これまでパッケージについては出荷ベースでしか状況を把握できなかったのですが、インターネットの接続により、販売本数ベース、つまり実際に遊んでいる人のリアルな数字がわかる。これによって今までパッケージ販売でしか得られなかった“経験上の仮説”が、大きく変わるかもしれません。そうして得たデータは新たなビジネスチャンスにつながる可能性があるので、しっかり検証を行い、分析しながらこれから販売・開発されるタイトルについて活用していきたいと考えています。

――『バイオハザード7』はゲーム単体としてだけでなく、カプコンの今後のデジタル戦略を検討する上でも、重要なタイトルといえそうですね。

辻本氏: 今年は『バイオハザード7』を基軸にデジタル戦略を構築し、開発やマーケティング、販売等の体制を整えていきます。デジタル販売も浸透し始め、ゲームを販売するのに店頭陳列や在庫の心配もいらない。これは日本に限らずグローバルでの傾向です。今回の『バイオハザード7』は、デジタル時代におけるユーザーの動きを客観的に分析するいい機会になるととらえています。

 例えば、「RESIDENT EVIL.NET」というバイオハザードシリーズをサポートする無料のWebサービスがあります。定期的にゲーム内イベントを開催したり、ダウンロードコンテンツの情報を発信するなど、コミュニティサイトを運営しています。世界中のユーザーはさまざまなプレイデータを管理でき、当社もそのデータを参考にして、ユーザーの遊び方を検証できます。

カプコン代表取締役社長COOの辻本春弘氏
カプコン代表取締役社長COOの辻本春弘氏
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