“自分が絶対に欲しいもの”でもニーズを冷静に見極める

高橋: これまでに発売した商品の中で、何が一番売れているんですか。

山光: 一番は「ゴロ寝デスク」系ですね。あおむけになって、寝ながらパソコン作業ができるツールです

「超軽量折りたたみ式 仰向けゴロ寝デスク」(税込み3980円。以下、価格は全て税込み)。
「超軽量折りたたみ式 仰向けゴロ寝デスク」(税込み3980円。以下、価格は全て税込み)。
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高橋: 寝ながらパソコンを見るとか、そういうアイデアって出ても一瞬で消えちゃう気がするんです。それが形になっていて、しかもちゃんと売れているのは面白いですね。

山光: 私が腰痛持ちなので、机に座って前傾姿勢で作業しているとだんだん腰が痛くなるんです。だから、寝転がってパソコンが使えたらラクだろうというところから作り始めました。社内では、「誰も欲しがらない」というような否定意見ばかりだったんですが、腰が痛くて悩んでいる人はいっぱいいるはずなので、「これはいける」と踏んで発売しました。結果として、発売直後からかなり売れました。10年ぐらい前なので正確な数は覚えてないんですが、当時は本当に一日中ずっと、ゴロ寝デスク、ゴロ寝デスクって注文が来るんですよ。やっぱりこういう不満を抱えていた人は多かったんだと実感しました。

サンコーのレアモノ 「面白い」と「売れる」の境界線(画像)
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高橋: なるほど。僕も商品を考えるときに、“自分事”で考えるんですよ。マーケティング的には、そこにニーズはあるのかというところから考え始めるじゃないですか。でも自分が絶対欲しいと思ったものは、ほかにも欲しい人がいるという考えを一番に持っていきます。

山光: ただ、自分が絶対に欲しいものでもニーズがあるかということは、ちゃんと冷静に考えていました。腰痛の人がどれほどいるのかとか、自分が欲しいと思うようなプロセスが他の人にも当てはまるのかどうかというのは冷静に見るようにしていて。自分だけがすごくとがっている人間だと、自分が欲しいものでもほかの人が欲しくない場合もある。

第三者より家族や友だちの意見を重視

高橋: アイデアを思いついたときは、周りに聞いたり調査したりするんですか。

山光: マーケティングという感じで第三者に意見を聞いても、逆にバイアスがかかってしまうと思うんですよ。アンケートに答えてもらったとしても、どうしてもちょっとずれてきてしまうのかなという気がして。友だちに聞くとしても、あまり親しくない人だと気を使って「いいね」と言ってくれているのか、本気で言ってくれているのか分からない。でも、家族とか本当に親しい友人だったら気を使わないで言ってくれるので、バイアスがかからない素直な意見が聞けると思っています。あと、今はネットですぐ検索できるので、自分と同じような人がどのくらいいるのか、件数で表示されますよね。そのあたりは調べやすい時代になっているかなと思います。

高橋: 僕も最初は家族や友だちに聞くんですけど、そのときのリアクションの反応速度みたいなものをすごく重視します。特に社長だと、社員が気を使って言ってくれることもありそうじゃないですか。気を使っているのか、本当にいいと思っているのかは、反応速度に表れると思います。

サンコーのレアモノ 「面白い」と「売れる」の境界線(画像)
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山光: ああ、そうですね。説明したときにすぐにパッと出てきた反応って、バイアスがかかっていない素の情報ですもんね。

高橋: でも、ゴロ寝デスクのときは社内からは反対意見が多かったんですよね。

山光: そうですね。反対意見が多い商品のほうがヒットしている気がしなくもないんですよ。

高橋: 他でもそういう例をよく聞くんですが、僕は実感したことがなくて。

山光: ∞(むげん)プチプチは最初から反応が良かったんですか。

高橋: あれもやっぱり反対意見のほうが多かったんですよ。賛成してくれた人もいたんですけど。この前聞いた話ですが、ゲームの『シーマン』は周りから「これは売れない」と言われて、それを聞いた作者が「それならいける」と思った、と。周囲が否定すればするほどいけると思ったというような話はよく聞きますけど、何で反対意見が多いとヒットするのか……。とがっているからかな。

山光: それが目立つということはあるのかもしれないですね。ゴロ寝デスク以外では「USBあったか手袋」というヒット商品があるんですが、当初は社内から「パソコンは家で使うもの。室内なんだから暖房もあるのに、なぜ手袋を室内でしなければならないのか」という反対意見が多かったんですよ。

高橋: そうなりますよね。

山光: でも、私はすごい冷え性で、暖房が入っていても寒いんですよ、手足が。だから、エアコンが効いている部屋でも手足が寒い人は必ずいると思ったんです。冷え性じゃない人からすると、こういう気持ちは分からないみたいなんですよね。でも、冷え性の人は世の中に一定数いて、私と同じように暖かい部屋にいても手足が寒くて困っているだろうと思ったんです。

高橋: 周囲から反対されないようなものって、多くの人に共感されやすいものじゃないですか。ターゲットが広いという時点で、“浅い”のかもしれないですよね。僕も冷え性なんですよ。しかも手足の末端が本当に冷えるから、この手袋が欲しくなる気持ちはすごく分かるんです。そういう人はそんなに多くないかもしれないですけど、だからこそ「よくぞ作ってくれた」という気持ちになって、買うのかもしれないですね。

山光: ああ、それはあるかもしれないですね。

高橋: 面白いと思っても、買うか買わないかの境目って、本当に大きいじゃないですか。たぶん、御社が「これは面白い」と思って作った商品は、そういう人の心に刺さるものがきっとあると思うんですよ。だから「買いたい」というところまでリーチするんじゃないかと。