「誠実キャラ」が婚活パーティーをやったらありがたがってもらえるんじゃないかと

高橋: ところで、このお店ができたきっかけについて伺いたんですが。どうしてこういうお店を作ろうと思ったんですか?

遠山: まず、デベロッパーさんからこの場所で店をやらないかという話があったんですよ。3年くらい前に。見に来たら、天井が高くてガード下という場所がユニークだと思って。普通の商業施設にはあり得ないような、場の持っているユニークさがあった。入り口から店までの通路が50mくらいあるんですが、この通路も面白いじゃないかと。そこはもともと貸すためのスペースじゃなかったようなんですが、通路も含めて貸してもらうことになったんです。

パビリオン正面入り口
パビリオン正面入り口
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入り口から店舗まで、約50mの通路が続いている
入り口から店舗まで、約50mの通路が続いている
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パビリオンの店内
パビリオンの店内
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遠山: それと、われわれは「スープストックトーキョー」などをやってきまして、会社を人物に例えるなら、かなり「誠実キャラ」でずっとやってきたんですよね。

高橋: 誠実キャラ。それは遠山さんがというかスマイルズが?

遠山: スマイルズが。

高橋: 確かに、これまでの事業を見ると誠実という感じがしますね。

遠山: それで、この物件が出てきたのと同じ頃かな。「婚活」とか「出会い系」とかっていう話をよく聞くようになって。「ひょっとしたら、スープストックトーキョーをやっているスマイルズが、婚活パーティーや出会いの会をやったら、ありたがってもらえるんじゃないかな」と思ったんです。でも、当時は言葉が大事だと思っていたんですよ。婚活でも出会いでもない、次なるいい言葉が見つかれば、スマイルズでも何かできるんじゃないかと思っているうちに、2、3年くらいたっちゃったんです。そのうちに、「アートのあるレストランをやりたい」という構想も浮かんできて。

高橋: アート?

遠山: 美術関係者の人から「海外からお客さんを連れてきても、日本にはアートのあるレストランがない」という話を聞いたんですよ。例えば、ロンドンには「ザ・トラムシェッド」というレストランがあって、ダミアン・ハーストのすごく巨大な作品があるんです。私自身、アートが好きなので、ロンドンに行くとその店に行っちゃうみたいな感じがあるんですね。

 5年くらい前からスマイルズが会社としてアートのコレクションを始めているので、作品もそれなりに手元にもあるし、アート作品が展示されているようなレストランをやるのもいいかなと。そう考えているうちに、レストランにアートがあるということを一つのきっかけにして、人と人が出会うような場所ができたら楽しいんじゃないかと思ったんです。それで、「LOVE」と「ART」がテーマのレストランにしようと。もう言葉を濁すんじゃなくて、むしろ、真っ正面から行ったほうが面白いんじゃないか。ラブと言い切っちゃうのも気持ちよくていいかなと。

高橋: なるほど。

カップルが2人きりになれる「懺悔室」というスペース
カップルが2人きりになれる「懺悔室」というスペース
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店内にはアート作品が展示されている
店内にはアート作品が展示されている
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遠山: レストランというと「何料理? 」と聞かれます。イタリアンとか熟成肉とかそういう答えが普通なんだけれども、単純に「こういう料理です」と答えるのもちょっとシャクだなというか。何料理という質問に対して、肉じゃなくて、「ラブとアートです」みたいなそういう返しがいい。料理ももちろん大事で、実際には大きなオーブンに入れて窯焼きにした、希少な肉を出したり、かなりこだわっています。

高橋: 来店する人は、実際にラブというか恋愛を求めている人が多いんですか?

遠山: オープン前は、男女2人で来るイメージをしていました。でも、仲間同士で来店されるお客さまが多いですね。たまり場っぽいというか。カップルも来ますが、カウンター席も、2人でしっぽりできる席も少ないですし。私はもうほぼ毎日のようにいるんですけど、知り合いとかをくっつけたりするのが楽しいです。

高橋: 僕は、結婚している今だからこそ、こういうお店って面白そうに思える気がするんです。結婚前は、本当は出会いが欲しいと思っていても「ここに行ったら出会えるかもしれない」みたいな場所って逆に行きづらかったですね。

遠山: そういう方もいますよね。その場合は、アートを見るのを理由に来てもらえたら。

高橋: 仲間同士何人かで行って、別のグループの人たちと交流するのもいいですよね。

スープストックがなぜ“婚活レストラン”なのか(画像)
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遠山: 今度、ここでラブ活というイベントをやります。昨日告知して、女性はもう、あっという間に埋まっちゃったんだけど、男子はまだ空いているので(笑)。別に独身じゃなくても、ユニークな方は大歓迎なので。

高橋: (笑)。ラブ活と言っても、ラブは人類愛くらいの愛ということですか、それは。

遠山: もちろん、本当に結婚がしたいのに出会いがないという人はすごくたくさんいるので、女性の枠はすぐ埋まっちゃいましたし、男性も結婚をしてない人のほうがありがたいと言えばありがたいけど……。でも、あまりにも狭くしすぎず、もう少し広く。例えば、LGBTも、もちろんオーケーみたいな、そういう感じにしたいと思っています。

【後編はこちらから】

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2017年5月1日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています