若い世代ほど、血圧を測ってほしい――。

 そう呼びかけるオムロン ヘルスケアが、30代、40代男性を対象にした手首式血圧計の新商品「HEM-6321T」を、11月30日から発売した。国内の手首式血圧計市場において、シェア60%を目指すための戦略的製品という。実勢価格は1万4800円前後(税別)である。

HEM-6321T
HEM-6321T
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 HEM-6321Tは、家庭用の手首式血圧計としては初めてBluetooth通信機能を搭載し、測定データをiPhoneに転送できる。同社が提供する健康サポートサービス「ウェルネスリンク」を活用して、スマートフォン専用アプリ「からだグラフ」や、PCでも測定データを管理することができる。PCでは、日々の測定データの変化を基にした分析結果を表示する「データナビ」や、朝と晩に測定した血圧データをグラフで表示し、簡単に印刷することができる「朝晩血圧手帳」の利用も可能になる。

血圧の推移をiPhoneでグラフ化できる
血圧の推移をiPhoneでグラフ化できる
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 2人分の血圧値と脈拍を自動的に記録できることから、血圧計とデータを夫婦で共有するといった使い方も可能。最新の測定記録から10分以内に測定された記録の平均値と、100回分の測定記録を呼び出して、本体で確認するといった使い方もできる。液晶画面にはバックライトを採用しているので、暗い場所でも測定結果が見やすい。

 さらに、手首式なので上腕式に比べて、シャツを腕まくりせずに測定できるという手軽さに加え、重量約100g、幅89×高さ61×奥行き25mmという、手のひらサイズを実現。持ち運びにも適している。正しい血圧を知るには、1日に朝晩2回の測定が必要といわれ、忙しいビジネスパーソンが、オフィスや外出先、出張先で血圧を測定することも可能だ。

 圧電ポンプを採用することで、測定中の音が静かな「サイレント測定」に対応。手首に巻くベルト部分(カフ)が適切な強さで巻けているかどうかを知らせる「カフぴったり巻きチェック」、心臓の高さまで手首を持ち上げて正しく測定するための「測定姿勢ガイド」機能なども搭載しており、これも周囲の状況を気にすることなく、気軽に測定するための工夫だといえる。

 「ブーンという音や、強い巻き付けによって血圧を高める原因にならないようにしている」(オムロン ヘルスケア)という。

 測定姿勢ガイドでは、測定時に血圧計が正しい高さになると、液晶画面上に青色のランプと「測定姿勢チェックマーク」が点灯して、自動的に測定を開始。正しい測定をサポートする。ちなみに、同製品は、三重県松阪市の同社松阪工場で生産しており、国内生産による高い品質も強みになるという。

 「日本の高血圧患者は約4300万人。そのうち、30、40代が占める割合は20%の約850万人。そして、iPhoneユーザーは約350万人と想定される。iPhoneユーザーで高血圧の方も相当数になる。これらのユーザーをターゲットにする」という。

HEM-6321Tの特徴
HEM-6321Tの特徴
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家庭で血圧を測ることで高血圧かどうかを正確に知る

 オムロンヘルスケアでは、今回の製品を開発した背景として、家庭における血圧測定の重要性と、若い世代こそ血圧を測定すべきという2つの観点があるとする。

 それはなぜなのか。

 その理由を知るために、まずは、高血圧症がどんなものなのかを知っておく必要がある。

 高血圧症は、日本人に最も患者数が多い生活習慣病といわれ、推定患者数は前述の通り約4300万人と見られている。しかも、そのうち2500万人が、1度も病院で治療したことがない未通院。通院を中断した人などを含めると3750万人と、実に87%の人が病院に通っていないという。

国内の高血圧症の患者は約4300万人、そのうち2500万人が未通院
国内の高血圧症の患者は約4300万人、そのうち2500万人が未通院
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 血圧は高齢であるほど高くなる傾向があるものの、厚生労働省の調べでは、医療機関において「高血圧」と言われたことがある人の割合は、10年前に比べて、30~70代のすべての男女で増加傾向にあり、高血圧の状態を長期間放置していると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まると指摘されている。

 では、なぜ家庭で血圧測定をすべきなのか。

 実は、血圧には、「白衣高血圧」と「仮面高血圧」と呼ばれるものがある。白衣高血圧は、実際には血圧が正常なのに、病院で血圧を測定すると血圧値が高くなる人のことだ。病院の雰囲気や、看護士の白衣を見て、緊張してしまい血圧が上がるといった人たちも含まれる。ただ、これはわずか一部の人たちだけの現象ではない。調査によると全体の20%の人が、この白衣高血圧に当たるという。病院で高い値が出るために、不要な薬剤を投与される可能性も高い。

 もうひとつの「仮面高血圧」は、いわば白衣高血圧とは逆の人であり、通常は血圧が高いのに、病院では正常値が出るという人だ。これも全体の17%を占めるといわれる。血圧を下げる薬を飲んだ後に病院で血圧を測定したりといった場合のほか、「会社の健康診断の場では、近くに嫌な上司がいないため、ストレスが無くなり、血圧が正常値に収まるという人もいる」という笑い話のようなケースもある。ここでも最適な治療が受けられないという問題が発生することになる。

白衣高血圧と仮面高血圧
白衣高血圧と仮面高血圧
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 こうした白衣高血圧、仮面高血圧の人たちにとっては、家庭で血圧を測ることが自らの血圧値を知るうえでは重要であり、白衣高血圧、仮面高血圧を合わせた38%の人が当てはまる。

 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインによると、診察室血圧と家庭血圧に差がある場合は、家庭血圧を優先すると示されており、日ごろから、自宅の落ち着いた環境で血圧を測ることの重要性を指摘している。

高血圧は若いうちに治療することが大切

 もうひとつの観点が、若いうちから血圧を測定することの重要性である。

 70代になると、男性の80.8%が高血圧、女性では71.2%が高血圧になるという調査結果が出ているが、30代の男性でも20.0%、40代男性では29.9%が高血圧だという。

 だが、若年になるほど治療率が低く、その一方で、高血圧による脳心血管疾患発症への影響は高齢者よりも、若年者のほうが高いという調査結果も出ている。

年齢と高血圧症の関係
年齢と高血圧症の関係
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 そして、オムロンでは、血圧が高い人ほど認知機能が低いという関係が、調査から明らかになっていることを指摘しながら次のような傾向を示す。

 「57±4歳の中年期に、血圧が正常だった人が、15年後の高齢期にも血圧が正常だった場合の認知症の発症率を1とした場合、正常から高血圧になった人は3.7倍、高血圧から高血圧の人が6.9倍となる。だが、中年期に高血圧だった人が、高齢期に正常になったとしても認知症の発症率は6.7倍と高い。つまり、高齢になってから降圧しても手遅れである。むしろ、50歳までのあいだに高血圧を治療すると、認知症の発症は大幅に抑制できる」

高血圧と認知症の関連
高血圧と認知症の関連
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 オムロンヘルスケアでは30代、40代からの血圧測定の必要性を訴え、若いうちから高血圧治療を行う必要性を訴求している。

 ちなみに、一般的に冬場は全国的に血圧があがることになる。

 オムロン ヘルスケアが公開している「にっぽん健康情報マップ」によると、8月の最高血圧の平均値で、135以上となったのは島根県だけ。だが、1月には、島根県のほか、青森県、宮城県、富山県、石川県、岐阜県、和歌山県、奈良県、福岡県、宮崎県と10県に増加。全国平均も8月の125から、1月は132へと上昇している。

にっぽん健康情報マップ
にっぽん健康情報マップ
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 正しい血圧を知るためにも、最適な治療を行うためにも、家庭での血圧測定は重要だといえそうだ。

大河原克行(おおかわら かつゆき)
フリーランスジャーナリスト
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、約20年にわたり、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、パソコン誌、Web媒体などで活躍。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社)などがある。近著は「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(アスキー新書)、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。