だが、ソフトバンクの孫社長が、ARMを手に入れたかった理由は、単に、スマホ市場を押さえるためではない。

 説明では、ARMは独自の基盤技術を保有するマーケットリーダーであること、モバイル、エンタープライズ、IoTといった巨大市場においてさらに成長するポテンシャルを持っていること、長期的な潮流に対して投資するというソフトバンクグループの戦略に適合していること、ARMが非公開企業として、長期的、戦略的に投資できることなどを挙げた。

 そして、孫社長は、ARMがビジネスを行っている市場として、モバイルアプリケーションプロセッサー、ネットワークインフラ、サーバー、エンベデッドインテリジェンス、自動車、家電製品などを挙げながら、2020年に向けて、いずれも大きな市場拡大が見込まれることを強調してみせた。

 これらをひとつの言葉で表すのならば、IoTということになろう。IoTは、「Internet of Things」の略だ。すべてのものがネットワークに接続された世界で、それらの情報を収集、分析し、社会的問題や企業が抱える課題を解決したり、個人の生活を豊かにしたりする新たなサービスやビジネスの創出が期待されている。2020年には、500億台のデバイスがネットに接続され、44ゼタバイト(1ゼタバイトは10億テラバイト)のデータが生成されると予測されている。ARMは、IoTを支えるプロセッサー技術やソフトウエア技術などを有している企業。今回の買収が、そうした市場に向けた布石であることを、孫社長は示してみせる。

発表会に登壇した孫正義社長。同社発表会の中継動画から
発表会に登壇した孫正義社長。同社発表会の中継動画から
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 「囲碁で、碁石のすぐ隣に石を打つのは素人の戦い方である。プロは、遠く離れたところに打ち、それが50手目、100手目になって力を発揮する。私は7手先を読んで、手を打つことを心掛けている。なぜ、いまこの手を打つのか。ほとんどの人は分からないだろう。3年、5年、10年を経過すれば、ソフトバンクグループにARMがいる意味が分かる。ソフトバンクグループの中核中の中核になる企業がARMである」と、孫社長は語った。

 ソフトバンクグループとのシナジー効果について、現時点では具体的な数値を示さなかったものの、孫社長は「直接的、間接的にすべてのグループ会社がかかわる」としている。「アリハバのジャック・マー(馬雲)からは、中国におけるARMのパートナーになりたいという連絡をもらっている」というように、ソフトバンクグループの幅の広さを生かした展開から、どんなシナジーが生まれるのかは、外野から見ていても楽しみだ。