事業売却後も「TOSHIBA」ブランドは継続

 こうしたなかで、やはり気になるのは、家電事業の行方だ。

 東芝の室町社長は、「家電事業は、東芝を支えてきた事業であり、ブランドイメージでも重要な財産だった。その過半を委譲することは忸怩(じくじ)たる思いがある」と悔しさをにじませる。

 買収する美的集団は、1968年に設立。空調、冷蔵庫、洗濯機、キッチン家電および各種小型家電などを含む、幅広い製品群を展開。さらに、暖房・換気・空調システム分野でも実績を持つ。2014年の総売上高は230億ドル(約2兆7600億円)。全世界で10万人を超える従業員を誇る。東芝と美的集団は、コンプレッサや小型家電、インバーターなどの分野において20年以上にわたる協業関係があり、今回の動きも、こうした関係を下に進められたものだといえる。

 東芝によると、現在、美的集団とは、従業員および国内外拠点は維持する方向で協議を進めており、東芝のブランドについても、当面は使用することになるという。「美的集団は、東芝ブランドを維持すると明言している。また、当社が実績を持つ東南アジア市場においても、美的集団が東芝ブランドを引き続き採用していくと理解している」(室町社長)というように、今後も東芝ブランドによる白物家電製品が投入され続けることになりそうだ。

 国内市場において、東芝ブランドを維持するかしないかで、白物家電事業の業績が大きく左右されるのは明らかだ。パナソニックに買収後に中国ハイアールに売却された三洋電機の洗濯機および冷蔵庫事業は、「AQUA」という三洋電機時代の製品ブランドを継続したものの「SANYO」ブランドを使用できなかったため、結果として、三洋電機時代に比べて国内シェアを半減させた。量販店の店頭では、「AQUAの洗濯機は旧三洋電機の事業を継承した製品です」という言葉を入れたことで販売が上向いたという逸話もあるほどだ。

 一方でPC業界では、中国レノボが、NECからPC事業を買収した後も、国内においては「NEC」のブランドを維持。その結果、現在でも国内トップシェアを維持している。東芝の場合も、白物家電で「TOSHIBA」のブランドが使用できれば、一定のシェアを維持することにつながるだろう。東芝によると、東芝ストアを含む販売網との取引も継続することになる予定で、ブランド、販路は維持されたままで、白物家電事業が継承されることになる。

家電事業の従業員、国内拠点は維持することで美的集団と合意した。写真は3月18日の記者会見から
家電事業の従業員、国内拠点は維持することで美的集団と合意した。写真は3月18日の記者会見から
[画像のクリックで拡大表示]