厳格な基準に則って作られた「ハラルミール」の味は!?

 日本を訪れるムスリムの観光客が最も困るのが食事だという。というのも、「豚肉と豚由来のもの」「イスラムの作法に則らずに屠畜された家畜」「野生動物の肉及び各部位」「お酒」などを口にすることが禁じられていて、ハラル(戒律で許されたもの)しか食べてはいけない。

 この戒律は非常に厳密で、アルコール由来の調味料、豚肉を調理したものと同じ製造ラインで作られた加工品を食べることや、ほかのものといっしょに洗った食器を使うこともご法度だ。

 そこでロイヤルホールディングスの子会社「ロイヤル」(福岡市)では、福岡セントラルキッチンに日本イスラーム文化センター(東京都豊島区)の認証を受けた専用の製造ラインを設置。同センターの助言・支援を受けながら半年かけて開発を進め、4種類の弁当「ハラルミールBOX」のハラル認証を取得した。このホテルでは当面、宿泊客のプレミアラウンジでの朝食ブッフェメニューのひとつとして、「ハラルミールBOX」(弁当)を販売する(前日21時までの予約が必要)。

 4種類のうち、和食の「白身魚の柚子餡&鶏めし」、洋食の「バターチキンカレー」を試食した。和食は全体的に上品な味付けでおかずのバランスが良く、バターチキンカレーはスパイスの効いた本格的な味。弁当としてはかなりハイレベルな味で、普通の料理との違いは全く分からなかった。

 店舗では調理をせずに電子レンジで弁当を温めてご提供する形をとったのは、日本イスラーム文化センターの厳格な基準に基づいたハラル専用厨房をレストランに設置するのが難しいと判断したため。電子レンジによる仕上がりにムラができないよう、各食材の量、配置、包材などに調整を重ねたという。

 ハラル認証を得た弁当はなんば大国町(大阪府)や、プレミア武蔵小杉(神奈川県)などの既存のリッチモンドホテルでもテスト販売しており、今後は全国のリッチモンドホテルで順次展開していく計画。さらに空港内レストラン、社外にも販路を拡大していく予定で、すでにムスリムが参加する研修会、ムスリムの学生が通う学校などから引き合いが多くあるそうだ。東京五輪など今後もハラル食の需要が増えると想定されるため、さらにノウハウを蓄積していきたいという。

 東南アジアの人々の多くは、日本に好意や憧れを抱いているといわれる。にもかかわらず、東南アジアの富裕層が旅行先としてタイやマレーシアを選ぶのは、「日本でハラル食を提供する飲食店がほとんどないから」だと日本イスラーム文化センターのクレイシ・ハルーン・アフマド事務局長は指摘する。

 全世界のムスリムの食マーケットは全世界で約60兆円ともいわれ、日本は大きなビジネスチャンスをみすみす逃しているともいえる。日本でのハラル食市場が拡大すれば、インバウンドの主役は大きく変わるかもしれない。

朝食ブッフェで食べることができる「ハラルミールBOX」。和食が「鰆の照り焼き&ごぼう飯」「白身魚の柚子餡&鶏めし」、洋食が「ハンバーグ&ビリヤーニ風」「バターチキンカレー」の計4種類。うち2種類を試食したが、おいしかった
朝食ブッフェで食べることができる「ハラルミールBOX」。和食が「鰆の照り焼き&ごぼう飯」「白身魚の柚子餡&鶏めし」、洋食が「ハンバーグ&ビリヤーニ風」「バターチキンカレー」の計4種類。うち2種類を試食したが、おいしかった
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ハラルに基づいた調理を施したあと、誰も手が触れていないことを証明するため、密封した状態で提供される。洗い物が禁じられているものに触れてもいけないため、すべて使い捨て容器
ハラルに基づいた調理を施したあと、誰も手が触れていないことを証明するため、密封した状態で提供される。洗い物が禁じられているものに触れてもいけないため、すべて使い捨て容器
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手を洗う除菌剤もアルコールが含まれているものはご法度なので、ハラル認証マーク付きのものを使用
手を洗う除菌剤もアルコールが含まれているものはご法度なので、ハラル認証マーク付きのものを使用
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フランス人、中国人、グアム出身などの外国人スタッフが常駐し、英語以外にフランス語、中国語、韓国語、ヒンディー語などの多言語で対応可能だという
フランス人、中国人、グアム出身などの外国人スタッフが常駐し、英語以外にフランス語、中国語、韓国語、ヒンディー語などの多言語で対応可能だという
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(文/桑原恵美子)