東横線の渋谷~代官山間の地下化から約5年。地上駅や線路の跡地を利用した「渋谷ストリーム」が、2018年9月13日、渋谷駅南側に誕生(関連記事「『渋谷ストリーム』開業 “閑散エリア”に新たなランドマーク」)。さらに、渋谷と代官山エリアをつなぐ目的として、複合施設「渋谷ブリッジ」も同日オープンした。

「渋谷ブリッジ」(東京都渋谷区東1-29-1)。A棟(写真)は地上3階建てで用途は保育所、B棟は地上7階建てで用途はホテル、事務所、店舗。JR渋谷駅、恵比寿駅、東横線代官山駅より各徒歩10分 
「渋谷ブリッジ」(東京都渋谷区東1-29-1)。A棟(写真)は地上3階建てで用途は保育所、B棟は地上7階建てで用途はホテル、事務所、店舗。JR渋谷駅、恵比寿駅、東横線代官山駅より各徒歩10分 
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 渋谷ブリッジは、線路跡地の細長い土地を利用して作られたA棟とB棟からなる複合施設。A棟には渋谷区の保育所型認定こども園が2018年10月に開園予定。B棟はさまざまな人々の交流を目的とした施設で、1~7階には鎌倉発祥のレストラン「GARDEN HOUSE」などを運営する「THINK GREEN PRODUCE(シンク グリーン プロデュース、以下、TGP)」が手掛ける初のホテル「MUSTARD HOTEL(マスタードホテル)」が入る。ほかにもホテル併設のカフェ・バー&パティスリー、ホットサンドとティーラテなどを提供するカフェ、レンタルオフィスもある。

 同施設を運営する東京急行電鉄の髙橋和夫社長は、「渋谷の周辺には原宿、表参道、青山、代官山など個性的な魅力を発信するエリアが多い」と話す。同社は2012年に『渋谷ヒカリエ』 (関連記事「渋谷ヒカリエ」解剖! “大人の女のリアル”を知る)を開業。キャットストリートへの玄関口となった『渋谷キャスト』 (関連記事「新施設『渋谷キャスト』は個性派おしゃれグルメに注目」)は、原宿から渋谷を向かう流れを作った。渋谷ストリームと渋谷ブリッジの開業で、今度は渋谷から代官山へ向かう人の流れを作り出す考えだ。高橋社長はさらに、「さまざまな施設を集めてそれぞれの魅力を高めあうことで、『エンターテインメントシティー渋谷』に彩りを添えるムーブメントを作り出していきたい」と語った。

渋谷ブリッジ位置図。渋谷駅と代官山駅、恵比寿駅のほぼ中間に位置する(提供:渋谷ブリッジ)
渋谷ブリッジ位置図。渋谷駅と代官山駅、恵比寿駅のほぼ中間に位置する(提供:渋谷ブリッジ)
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■変更履歴
最終段落の高橋社長のコメントを一部修正しました。

徒歩10分とは言うものの……

 渋谷ブリッジがあるのは、渋谷駅と代官山駅、恵比寿駅のほぼ中間。明治通り沿いの「並木橋交差点」の近くだ。南側エリアの再開発とともに、渋谷区と東京急行電鉄が連携して渋谷川沿いに代官山方面までつながる約600mの遊歩道を新設。渋谷駅16b出口を出てすぐの渋谷ストリーム前の稲荷橋広場からスタートし、渋谷川を左手に見ながら代官山方面に10分ほど歩けば到着する。ちょうど明治通りに平行する形だ。

渋谷ストリーム前の稲荷橋広場前の遊歩道からスタート。渋谷ストリームの飲食店を右手に、渋谷川を左手に見ながら代官山方向に進む
渋谷ストリーム前の稲荷橋広場前の遊歩道からスタート。渋谷ストリームの飲食店を右手に、渋谷川を左手に見ながら代官山方向に進む
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 実際に遊歩道を歩いてみた。整備されていて、広くて歩きやすい道だが、対岸に見える景色は明治通りの飲食店やオフィスの裏側。エアコンの室外機や洗濯したタオルなどがぶら下げられていて生活感あふれる雑多な印象がなんとも渋谷らしい。遊歩道にはところどころにベンチも置かれているので、渋谷ストリームで買った弁当を食べるのにも便利そうだ。

 だが、実は渋谷駅前から渋谷ブリッジまで遊歩道沿いに一直線に行けるわけではない。遊歩道は明治通りにつながる一般道によって分断されているので、何カ所か明治通りに出て信号を渡る必要があった。「これなら最初から明治通りを歩いたほうがいいのでは?」という疑問も浮かぶ。まだ工事中の箇所もあったので、今後どの程度遊歩道が整備されるのか気になるところだ。

遊歩道は整備されていて歩きやすく、ところどころに休憩用のベンチも置かれている
遊歩道は整備されていて歩きやすく、ところどころに休憩用のベンチも置かれている
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対岸は飲食店やオフィスが入っている雑居ビルの裏側で雑多な印象
対岸は飲食店やオフィスが入っている雑居ビルの裏側で雑多な印象
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 やがて遊歩道も終わり、トンネルをくぐってしばらく歩くと渋谷ブリッジが見えた。時間にすれば10分ほどだが、後半はあまり建物がないため、かなり長く感じた。

明治通りに出てから信号を渡り、代官山へ向かう八幡通りの下にあるトンネルをくぐる
明治通りに出てから信号を渡り、代官山へ向かう八幡通りの下にあるトンネルをくぐる
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歩道をしばらく歩くと渋谷ブリッジが見えてくる。街灯はあるがかなりさびしい印象
歩道をしばらく歩くと渋谷ブリッジが見えてくる。街灯はあるがかなりさびしい印象
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「バス発着所」「清掃工場」のイメージが変わる?

 B棟の目玉となりそうなのは、やはりマスタードホテルだろう。鎌倉や代官山に次々とカフェをオープンして人気を集めてきたTGPが初めて手がけたホテルだ。ホテル1階に併設されているオールデイカフェ&レストラン「Megan-bar & patisserie(ミーガン バー&パティスリー)」に並ぶケーキや焼き菓子は、ベーカリーとしても定評のあるTGPならではのクオリティーを感じさせた。バータイムに提供するカクテルには味噌やだしを使ったユニークなものもあり、さまざまな使い方ができそうだ。

渋谷ブリッジB棟
渋谷ブリッジB棟
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「“街の隠し味のような存在”を目指している」(同社広報)という「MUSTARD HOTEL(マスタード ホテル)」
「“街の隠し味のような存在”を目指している」(同社広報)という「MUSTARD HOTEL(マスタード ホテル)」
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オールデーカフェ&レストラン「Megan-bar & patisserie(ミーガン バー&パティスリー)」(8~23時半ラストオーダー)はウッド、タイル、マーブル柄をあしらったシンプルな空間
オールデーカフェ&レストラン「Megan-bar & patisserie(ミーガン バー&パティスリー)」(8~23時半ラストオーダー)はウッド、タイル、マーブル柄をあしらったシンプルな空間
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Megan-bar & patisserieのクラシックで遊びの効いたパティスリーは税込み600円~、テイクアウト用のドーナツは200円~
Megan-bar & patisserieのクラシックで遊びの効いたパティスリーは税込み600円~、テイクアウト用のドーナツは200円~
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バータイムには日本茶や味噌、だしなどを使用したユニークなカクテルも提供。左は味噌を隠し味にした「味噌チョコレートマティーニ」、右はだしを使った「うまみマリー」(どちらも税込み1600円)
バータイムには日本茶や味噌、だしなどを使用したユニークなカクテルも提供。左は味噌を隠し味にした「味噌チョコレートマティーニ」、右はだしを使った「うまみマリー」(どちらも税込み1600円)
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 マスタードホテルのエントランスからさらに代官山寄りのエリアにあるカフェ「NO RAIL,NO RULE(ノーレイル ノールール)」は、夜はスナック「NO RULES」として日替わりのママが店に立つとのこと。2階には博報堂ケトルをはじめとするクリエーティブ関連5社が集まったストリートオフィス「TRAIN TRAIN TRAIN(トレイン トレイン トレイン)」がある。「街(ストリート)やさまざまなクリエーターとつながり、共創していく実験的オフィス」(博報堂ケトル広報)で、今後イベントなども開催するという。2018年内にはB棟にTGPが「本格カレーと季節の小料理の店」(TGP広報)を出店予定。さらにレンタルスペースも開業予定だ。

ホットサンドとこだわりの新ブランド茶葉「EN TEA」を使用したティーラテや水出し緑茶を提供するカフェ「NO RAIL,NO RULE(ノーレイル ノールール)」
ホットサンドとこだわりの新ブランド茶葉「EN TEA」を使用したティーラテや水出し緑茶を提供するカフェ「NO RAIL,NO RULE(ノーレイル ノールール)」
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NO RAIL,NO RULEの「ポテトサラダと大根のきんぴら、煮卵、チーズのホットサンド」(税込み780円)、花豆のラム酒風味スイーツ(200円)、お茶メニューは400~580円
NO RAIL,NO RULEの「ポテトサラダと大根のきんぴら、煮卵、チーズのホットサンド」(税込み780円)、花豆のラム酒風味スイーツ(200円)、お茶メニューは400~580円
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「TRAIN TRAIN TRAIN」があるカフェ2階のレンタルオフィスエリア
「TRAIN TRAIN TRAIN」があるカフェ2階のレンタルオフィスエリア
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NO RAIL,NO RULEは今後、外部クリエイターにもコーヒーのフリードリンク、食事の割引などを提供するコワーキング会員サービスを行う予定
NO RAIL,NO RULEは今後、外部クリエイターにもコーヒーのフリードリンク、食事の割引などを提供するコワーキング会員サービスを行う予定
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 施設がある渋谷区東という場所は、渋谷駅からわずか10分ほどの距離ながら、これまで清掃工場やバスの発着所などがあるだけの人通りの少ないエリアだった。実際に歩いてみて渋谷駅からの距離が若干長いように感じたものの、代官山駅や恵比寿駅から渋谷駅に向かうのであればちょうどいい中間地点だ。これまでは電車に乗っていた人も、渋谷ブリッジへの立ち寄りを目当てに歩いてみようと考えるかもしれない。渋谷ブリッジの開業によって、エリア全体が大きく変わっていく可能性がある。

(文/桑原恵美子)