近年、新たな切り口のヒット商品が次々に生まれている土産菓子。その主戦場ともいえる東京駅のエキナカに、行列のできるスイーツ店を次々に展開しているBAKEが初進出する。2017年4月27日にオープンしたバターサンド専門店「プレスバターサンド」がそれだ。

 「流通菓子と同じような品質で、価格は2~3倍という土産菓子が少なくない。そこに進化の余地があると感じて挑戦した。今後は土産菓子事業を柱の一つに育てていく。百貨店への出店も視野に入れている」(BAKEの長沼真太郎社長)

 プレスバターサンドで販売するのは、店舗に併設する工房で作ってすぐに提供する「焼きたてバターサンド」と、北海道工場から直送する日持ちのやや長い土産菓子「バターサンド」の2種類。北海道産のフレッシュバターそのものの味わいを楽しめるように開発された菓子で、とろりとしたバタークリームとバターキャラメルを、サクサク感が特徴のクッキーで挟んでいる。このクッキーを作るためにオリジナルのプレス機を使い、和菓子の製法にルーツを持つ「はさみ焼き」を採用しているという。

 BAKEといえば、行列店として有名な焼きたてチーズタルト専門店「ベイク チーズタルト」などを運営している会社。同ブランドの店舗は2013年の1号店オープン以降わずか4年で国内に14店舗、海外に19店舗をオープン。年間で約3500万個を販売しているが、今や海外店の売り上げのほうが高いという。そのほかにも、シュークリーム専門店「クロッカンシュー ザクザク」を国内4店舗と海外1店舗、焼きたてアップルパイ専門店「リンゴ」を2店舗運営している(関連記事「シュークリームの新トレンドは「皮」? 行列店続々、クリームなしも!」)。

 お菓子を進化させることをミッションとして掲げる同社が初挑戦する、“革命的な土産菓子”とはいったいどんなものなのか。オープン当日にチェックした。

バターサンド専門店「プレスバターサンド」。JR東京駅丸の内南口構内の改札近く。営業時間は8~22時。北海道工場で作った賞味期限の長い箱菓子「バターサンド」を販売すると同時に、併設の工房で焼き上げた「焼きたてバターサンド」も提供する※焼きたてバターサンドの販売は9時以降
バターサンド専門店「プレスバターサンド」。JR東京駅丸の内南口構内の改札近く。営業時間は8~22時。北海道工場で作った賞味期限の長い箱菓子「バターサンド」を販売すると同時に、併設の工房で焼き上げた「焼きたてバターサンド」も提供する※焼きたてバターサンドの販売は9時以降
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ガラス張りの工房の中でクッキーをプレスする様子やバタークリームを詰める様子も外から見られる
ガラス張りの工房の中でクッキーをプレスする様子やバタークリームを詰める様子も外から見られる
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併設の工房で焼き上げる「焼きたてバターサンド」は賞味期限4日間で、1個 150円(税込み、以下同)。1人4個まで購入可能、1日の販売数に限りがある。北海道の工場から直送される「バターサンド」は賞味期限が店頭渡し時から10日間で6個入り900円、10個入り1500円
併設の工房で焼き上げる「焼きたてバターサンド」は賞味期限4日間で、1個 150円(税込み、以下同)。1人4個まで購入可能、1日の販売数に限りがある。北海道の工場から直送される「バターサンド」は賞味期限が店頭渡し時から10日間で6個入り900円、10個入り1500円
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さっくりしたクッキーで、北海道産フレッシュバターを使用した濃厚なバタークリームと口どけなめらかなバターキャラメルの2層を挟んでいる。クッキーはボックス型なので、軟らかいバタークリームがはみ出さないのも特色。表面に入った柄は力学的に割れやすいように設計されている
さっくりしたクッキーで、北海道産フレッシュバターを使用した濃厚なバタークリームと口どけなめらかなバターキャラメルの2層を挟んでいる。クッキーはボックス型なので、軟らかいバタークリームがはみ出さないのも特色。表面に入った柄は力学的に割れやすいように設計されている
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軽く力を入れただけでさっくりと割れ、中からバターキャラメルとバタークリームがあふれ出す。今までの土産菓子にはない半生感
軽く力を入れただけでさっくりと割れ、中からバターキャラメルとバタークリームがあふれ出す。今までの土産菓子にはない半生感
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初めての“もろさ”。クッキー生地の食感がすごい!

 プレスバターサンドは一辺が4.5cmほどの正方形で、厚さは約2cm。ちょうどもなかくらいのサイズと厚みだ。ほとんど力を入れなくてもさっくりきれいに割れる。クッキーがもろいこともあるが、表面の柄も力学的に割れやすいように設計されているという。割れると同時に中から半生状態のクリームとキャラメルソースがこぼれ出した。このみずみずしいビジュアルだけでも、土産菓子としては衝撃的だ。

 ひとくち食べてさらに驚いたのが、クッキー部分の軽さと香ばしさ。歯を当てた瞬間にほろほろとくずれ、中からとろとろのクリームとキャラメルソースがあふれ出す。クッキー部分のバターの香り、クリームとキャラメルソースのなめらかさ、たしかに今までの土産菓子になかったフレッシュ感で、インパクトが大きい。長沼社長によるとこのサクサク感は独自開発のプレス機によるもので、オーブンを使うより高温・短時間で加熱ができるためだという。

 そもそもサクサク感を感じるためには、固さともろさが必要。焼き菓子の固さはデンプン同士が油で接着することで生まれる。同社のバターサンドのクッキーは高温ではさみ焼きすることによって生地全体に瞬間的に油が行き渡り、カリッとした固さになる。一方、もろさは小麦粉などに含まれるタンパク質が変形して作られるグルテンネットワークと深い関係がある。グルテンネットワークがしっかり形成されると粘りが強くなりねっちりした食感になり、その逆だともろくなる。同商品は高温で短時間はさみ焼きにすることによってグルテンネットワークが作られにくくなるのだという。つまりはプレス機によるはさみ焼き効果なわけだが、いったいどこからこの製法を思いついたのか。

プレス前の生地
プレス前の生地
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200℃以上の高温に熱したプレス機で挟み込んで3分ほど加熱すれば、完成。オープンで焼く通常のクッキーに比べると加熱時間は一瞬だ
200℃以上の高温に熱したプレス機で挟み込んで3分ほど加熱すれば、完成。オープンで焼く通常のクッキーに比べると加熱時間は一瞬だ
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片側に北海道産のフレッシュバターを使用したバターキャラメル、片側に濃厚なバタークリームをのせ、サンドすれば完成
片側に北海道産のフレッシュバターを使用したバターキャラメル、片側に濃厚なバタークリームをのせ、サンドすれば完成
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社長の“レーズン嫌い”から生まれた新スイーツ

 「BAKEでは商品開発をする際、“8割主義”といって、10人中8割の人が大好きというカテゴリーを狙っている。チーズケーキ、アップルパイがまさにそうで、狙い通り成功を収めてきた。土産菓子でも8割の人が大好きで、北海道にある前身の菓子店時代からの得意分野・クッキーを生かせる形態を模索した」(長沼社長)。

 その選択肢のひとつとして浮上したのが、レーズンバターサンド。だが長沼社長はレーズンがそれほど好きではないこと、レーズンが苦手な人が意外に多いこと、レーズンのぶんクリームの量を増やしたいと考えたことから、レーズン抜きのバターサンドを考えたという。「レーズンが嫌いという人はいても、『レーズン抜きが嫌い』という人はいないから」(長沼社長)というのも理由のひとつだった。

 だがそこで問題が浮上した。実はレーズンバターサンドのレーズンには、挟まれたクリームが流れ出さないよう、中で支える役目もある。そのため、レーズンをなくすと、はさんだときに半生状態のクリームが流れ出してしまう。それを防ぐには板型ではなく、もなかのようなボックス型にするしかない。そのボックス型を成型するために専用のプレス機を開発したところ、上記のような作用で今までになくサクサク感の強いクッキーができたというわけだ。

 消費期限は10日間と従来の土産菓子よりもはるかに短いが、このクリームの軟らかさ、クッキーのサクサク感を保ったまま10日間も日持ちすることにむしろ驚いた。軟らかい=水分が多いということで、それだけクッキーのサクサク感は失われやすいはずだからだ。製法は企業秘密だが、ショートニングの量を最小限にしてこの食感をキープするのに最も苦心したそうだ。ちなみに手渡しの4日後と1週間後に食べてみたが、違いは分からなかった。

 近年、半生感を感じさせる土産菓子は東京駅土産のトレンドの一つだが(関連記事「グリコがエキナカ土産に参入! “半生感”で勝負」)、焼きたてがウリのプレスバターサンドがヒットするのは間違いなさそうだ。

店舗やパッケージ、ロゴなどのデザインコンセプトは、頑固なものづくりをする職人をイメージ。こだわりと手仕事の痕跡が感じられるデザインを目指したという
店舗やパッケージ、ロゴなどのデザインコンセプトは、頑固なものづくりをする職人をイメージ。こだわりと手仕事の痕跡が感じられるデザインを目指したという
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通常、菓子メーカーのクッキーはトンネル型のオーブンで自動的に大量に焼かれる。しかし今回導入したプレス機の枠の数は6×5=30。つまり1回のプレスで30枚、2枚1組なので15個しかできない
通常、菓子メーカーのクッキーはトンネル型のオーブンで自動的に大量に焼かれる。しかし今回導入したプレス機の枠の数は6×5=30。つまり1回のプレスで30枚、2枚1組なので15個しかできない
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BAKEの長沼真太郎社長。「日本の菓子店の経営者は95%以上が職人で、保守的。それが良い面もあるが、もったいない面も多い。もっといろいろな切り口で消費者を感動させたい」という
BAKEの長沼真太郎社長。「日本の菓子店の経営者は95%以上が職人で、保守的。それが良い面もあるが、もったいない面も多い。もっといろいろな切り口で消費者を感動させたい」という
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手渡し4日後に割ってみたところ。クリームがほんの少しだけ固くなっているように見えたが、食感の変化は感じなかった
手渡し4日後に割ってみたところ。クリームがほんの少しだけ固くなっているように見えたが、食感の変化は感じなかった
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(文/桑原恵美子)