店舗で作るほうがセントラルキッチンより低コスト?

 肉を売りにするカレーの店を考案したきっかけは、フィリピンへの出店計画だったという。現地の企業から声が掛かり、「面白そうだから」と初の海外出店の準備を始めたが、「東南アジアでは野菜のみの料理では満足してもらえない。肉もたっぷりと入れなければならなかった」と、campを運営するバックパッカーズ(東京都千代田区)の佐藤卓社長は話す。そこで、ボリュームのある肉を前面に出したBBQカレーを看板メニューにすることになった。

 さらにこの店が他のカレーチェーンと決定的に違うのは、セントラルキッチンで調理したカレーソースは使わず、タマネギを炒めるところから店内で調理していること。実はこれもフィリピン出店がきっかけだという。というのも、フィリピンは日本の鶏肉、豚肉の輸入が難しく、肉のエキスが含まれるカレーソースも対象となるのだ。

 そこで、コストを上げずに店舗でゼロからカレーソースを作る手段を試行錯誤した。まずカレーソースは1種類に厳選し、タマネギなどカレーソースを作るための香味野菜を自動で炒め続ける機械などを導入。さらに野菜を細かく刻むことで、素揚げしたり炒めたりする作業を複数人分一気にできるようになった(既存店では注文を受けてから1人分ずつ野菜を調理して出している)。野菜が細かく刻まれていた理由はここにあったのだ。その結果、店舗で作るほうがセントラルキッチンで作ったカレーソースを使うよりもコストを少なくできることが分かったという。

タマネギなどカレーソースを作るための香味野菜を自動で炒め続ける機械を導入
タマネギなどカレーソースを作るための香味野菜を自動で炒め続ける機械を導入
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トッピングの野菜を素揚げしたり炒めたりする作業は複数人分まとめて行う
トッピングの野菜を素揚げしたり炒めたりする作業は複数人分まとめて行う
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 「セントラルキッチンで作ったカレーソースは、運搬するために加圧や加熱などの工程が必要。運搬費も含めると、店舗で手作りするほうが半分程度のコストで作ることができた。さらに、スパイスやソースに使う野菜もすべてフレッシュなものを使え、“クラフトカレー”として差異化できる」と力を込める。

 実はバックパッカーズは2017年夏、「かつや」などを運営するアークランドサービスホールディングス(東京都千代田区)の傘下になった。東京・代々木の路面店としてスタートしたcampは、2010年からJR東日本グループの日本レストランエンタプライズと業務提携してJRの駅近辺やエキナカを中心に店舗を増やしてきた。大手外食企業の傘下となり、さらにセントラルキッチンを使った多店舗化にまい進すると思いきや、まさかのクラフトカレーチェーン計画だ。

 これからは直営メインに、年内に9店舗、5年以内に100店舗を展開する計画だという。これまでのカレーチェーンの常識を超えた新たな挑戦で、「カレーハウスCoCo壱番屋」を頂点とする市場のシェアをひっくり返すことができるか。

(文/北川聖恵=日経トレンディネット)