日本茶といえば急須でいれるかペットボトルを買うかが一般的だが、意表を突く楽しみ方を提案する店が話題となっている。東京・三軒茶屋の駅から歩いて7分、にぎわいとは無関係な住宅街に立地する日本茶カフェ「東京茶寮」だ。

 運営するLUCY ALTER DESIGNは社名からも分かるように、もともとは日本茶業界とは縁もゆかりもないプロダクトデザインの会社。法人向けにバリスタを派遣するサービスも手掛けており、そこでコーヒーと日本茶の共通項に気付いたという。

 「サードウエーブコーヒーのように、日本茶も産地や焙煎の違いで異なる味わいを楽しめるのではと考えたのがきっかけ。ただ、日本茶は急須でいれるかペットボトルで買うかくらいしか飲み方の選択肢がなく、茶道になるとかしこまりすぎ。もっとカジュアルに楽しむ方法をと考え始めたのが2016年2月ごろだった」(LUCY ALTER DESIGNの青柳智士社長)。

 ドリップ以外にも水出し、フレンチプレスなどのいれ方を検討したものの、ドリップに決めて製品が完成したのは7月。茶こしは新潟県燕三条産、ドリッパーには長崎県の波佐見焼や北海道産のタモ材など国産の素材を使った道具はシンプルながら斬新。初めて見た人は「?」と思うに違いない。

 当初は市販を考えていたが、製品に合わせて茶を選んでいるうちに考えが変わったという。「商品だけを売っても、私たちが思い描く日本茶体験にはならない。自分たちで店を作り、体験してもらおうと2016年9月ごろから物件を探し始め、翌1月にオープン。日本茶に興味を持ち出してから約1年です」(青柳社長)。

「東京茶寮」住所:東京都世田谷区上馬1‐34‐15、営業時間:平日13~20時、土日祝11~20時、定休日:月曜日(祝日の場合、翌日休み)
「東京茶寮」住所:東京都世田谷区上馬1‐34‐15、営業時間:平日13~20時、土日祝11~20時、定休日:月曜日(祝日の場合、翌日休み)
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日本茶をハンドドリップで入れる
日本茶をハンドドリップで入れる
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長崎県の波佐見焼や北海道産のタモ材など国産の素材を使ったドリッパーを開発
長崎県の波佐見焼や北海道産のタモ材など国産の素材を使ったドリッパーを開発
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■変更履歴
記事中に誤りがありました。初出時、「北海道網走産のタモ材」としていましたが、正しくは「北海道産のタモ材」です。また、初出時、「煎茶道になると」としていましたが、正しくは「茶道になると」です。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2017/4/12 15:08]

メニューは1つだけ、茶葉はシングルオリジン

 ガラス張りの扉の奥に広がる店舗は細長いコの字形の木のカウンターを囲んでスツールが9脚。中央に立つバリスタが茶をいれてくれる仕組みで、メニューは7種類の中から2種類の日本茶を選び、3種類のスイーツから1種類を選ぶというシンプルなもの。置かれている茶は従来の日本茶には珍しく、ブレンドされていないシングルオリジン(単一品種)だ。

細長いコの字形の木のカウンターを囲んでスツールが9脚。中央に立つバリスタが茶をいれてくれる
細長いコの字形の木のカウンターを囲んでスツールが9脚。中央に立つバリスタが茶をいれてくれる
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7種類の中から2種類の日本茶を選び、2種類のスイーツから1種類を選ぶ
7種類の中から2種類の日本茶を選び、2種類のスイーツから1種類を選ぶ
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「ワインやコーヒーでは産地や生産者による味や香りなどの違いを楽しむようになっていますが、日本茶は代表的な品種『やぶきた』を中心にしたブレンドが主流。ブレンドすることで味や価格などが安定し、均一でマイルドな茶葉が手に入ることになりますが、味に驚きはありません。味覚やニーズが多様化、細分化する中では個性やトレーサビリティにこだわってもよいのではと、ここではシングルオリジンを出しています」(LUCY ALTER DESIGN取締役の谷本幹人氏)。

 7種類の茶葉は産地や品種、蒸しや焙煎の手法などによって、うまみや甘み、苦み、香りがそれぞれに異なる。そこで、選ぶ際には違いがひと目で分かるマトリックスを参考にする。バリスタも詳しく説明してくれるので、そこであれこれ聞いて選ぶのも手だ。

 スイーツとともに2種類を各2煎いただき、最後はどちらか1種に熊本産の「にこまる」という玄米を入れ、玄米茶に。 通常急須でいれると見えない、湯を注がれた茶葉がゆっくり開いて香りを放つ情景が目の前で広がるのはなかなかに楽しい経験で、思わず注視してしまう。茶を置くために用意されたトレイには選んだ茶葉の特徴が書かれたカードが置かれ、記されたQRコードからは茶の作り方や背景などを読み取ることもできる。

 茶は最初に70度、次に80度と温度を変えていれられるのだが、種類の違いに加え、温度によっても差が出るのだろう、味わいが異なっていくのが面白い。日本茶を出すカフェ自体はほかにもあるが、温度で飲み比べできる店は希少だ。

 ちなみに7種類のうち、おすすめはまろやかな甘みが特徴の「はるもえぎ」(鹿児島県産)、ロマンチックな茶名が印象的な「宵の七曜星」(静岡県産)だそう。後者はウーロン茶にも共通する微発酵させた華やかな香りが特徴で、一般的な煎茶のイメージを覆す味わい。茶の種類は今後広げていく予定で、時期によって異なる味を楽しめるようになるという。

 現在は予約制で、50分かけて5杯をいただく。男性の1人客も多く、男女比は半々。外国人客も増えており、今後は茶に関するワークショップなども予定している。料金は1300円(税込み)。日本茶の新たな魅力を発見し、会話と空間を味わいに行く場所と考えると、手ごろといえる。

 今後は多店舗展開だけでなく、茶葉・抽出器具類の販売、企業・自治体とのコラボレーションなど、さまざまなビジネスを視野に入れているという。

“サードウエーブ日本茶”が生まれたワケ(画像)
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(文/中川寛子=東京情報堂)

■変更履歴
記事中に誤りがありました。初出時、「2種類のスイーツから」としていましたが、正しくは「3種類のスイーツから」です。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2017/4/12 15:08]
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