スシローでは使えない食材を提供したい

 堀江氏によると、同店を出店した目的は大きく3つ。「郊外型の店舗モデルのスシローとは異なる、都市部型の店舗で新しい試みをするため」「回転寿司以外の新しい事業モデルを構築するため」「価格や供給量、下処理の手間の問題でスシローでは出せなかった食材の、新たな価値を探るため」。おいしいことがわかっていても、価格や供給量、調理システムが合わずスシローでは使えない素材も多く、そうした素材を提供する店を作りたかったそうだ。例えば、同店いち押しの「貝盛り お造り(溶岩焼き台付き)」は火を通しても食べられるよう、熱した溶岩石が付いてくる。貝の下処理を店でしなければならないため、スシローでは不可能だったメニューだという。

 そしてスシローや前業態のツマミグイと大きく異なるのが、寿司ロボットは使わず、すべて職人が握っているということ。仕入れた魚も店舗でさばき、ネタを仕込んでいる。こうした運営形態を採用したのは、魚をさばいた経験も寿司を握った経験もないスタッフを一から育成し、多店舗展開をしていくノウハウを蓄積するためだという。

 ターゲットは「手軽な回転寿司が登場する以前から寿司店に通っていて、現在も回転寿司には行かない、上質感を求める層」。スシローが開拓できていなかった層であり、そこを取り込むことで、スシローとは競合しない業態を探ったという。

 スシローの平均客単価は1000円程度だが、同店ではランチでその1.2~1.3倍、ディナーでは3~4倍程度を狙う。これはツマミグイとほぼ同程度とのこと。だが手がかかる職人の技が駆使されている料理は居酒屋よりワンランク上、1人8000~1万円近い店で食べている感覚。変化球が多すぎて価格に見合っている料理なのかどうかがわかりにくかったツマミグイよりコスパの良さを感じた。

火を通しても食べられるよう、熱した溶岩石が付いてくる「貝盛り お造り(溶岩焼き台付き)」(1280円)。軽く焼くとうまみが凝縮され、貝の個性がより強く感じられた。※写真は4000円のコースの中の小ポーション
火を通しても食べられるよう、熱した溶岩石が付いてくる「貝盛り お造り(溶岩焼き台付き)」(1280円)。軽く焼くとうまみが凝縮され、貝の個性がより強く感じられた。※写真は4000円のコースの中の小ポーション
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あきんどスシローの商品企画部長とスシロークリエイティブダイニング取締役を兼任している堀江陽氏はスシローで15年間以上仕入れを担当してきた経験をもとに「七海の幸 鮨陽」を企画したという
あきんどスシローの商品企画部長とスシロークリエイティブダイニング取締役を兼任している堀江陽氏はスシローで15年間以上仕入れを担当してきた経験をもとに「七海の幸 鮨陽」を企画したという
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全くの未経験から4カ月で魚をさばいたり寿司を握れるようになったというスタッフ
全くの未経験から4カ月で魚をさばいたり寿司を握れるようになったというスタッフ
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(文/桑原恵美子)