ホテルといえば「眠るための場所」というのが常識だが、「眠らない」をコンセプトにしたホテルが登場した。

 全国でチサンホテルなど56軒の宿泊施設を運営するソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ(東京都港区、以下ソラーレ)は2016年3月15日、「ホテル・ザ・エム インソムニア 赤坂(以下、インソムニア 赤坂)」をオープンした。このホテルはソラーレが赤坂で2004年から営業していた「ホテル アバンシェル赤坂」をリブランドしたもので、同社の最上級ホテルブランド「ホテル・ザ・エム」初のホテルとなる。

 「宿泊業は出店場所の需要に大きく依存している。そこで新ブランド『ホテル・ザ・エム』は“その土地に求められること”をテーマに、エリアごとに異なるコンセプトを持つホテルにしたいと考えた。赤坂は日本でも有数の繁華街であり、ビジネスの主要な場。眠らない街に集う人々に向け、睡眠が主な機能ではないホテル、ひと晩の“自由時間”を楽しめるホテルを提案したい」(ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツの井上理社長)。

 メーンターゲットは東京在住者で、大人の時間を楽しみ、自分のライフスタイルを重視したい20~40代前半の男性に想定。そのライフスタイルの延長線上にある「ワーキング」「キッチン」「フィットネス」をテーマにした、24時間利用可能な3つのスペシャルルームがあるのが特徴だ。

 ホテル内には京都発のスペシャルティコーヒー専門店「ウニール(Unir)」が東京初出店。ホテル1階で24時間営業しており、宿泊客はルームキーを提示すればいつでもコーヒーが無料で飲める。フードメニューとしては、同じく京都発のブーランジュリー「ル・プチメック(Le Petit Mec)」のパンを採用。京都本店で仕込んだものを取り寄せ、ホテル内で焼き上げて提供する。

 同ホテルは年間で売り上げ見込みを約8億円、平均稼働率を約90%と見込んでおり、今後も日本各地で同ブランドのホテルを展開予定。2017年に2軒、2018年に2軒の出店を予定しているという。

 はたして“眠らないホテル”とはどんなホテルなのか。オープン前の内覧会に足を運んだ。

「ホテル・ザ・エム インソムニア 赤坂(インソムニア 赤坂)」(東京都港区赤坂2-14-14)。赤坂駅から徒歩2分、溜池山王駅から徒歩6分。11階建てで客室68室、スペシャルルーム3室の計71室。インソムニアというホテル名は「INN(ちいさなホテル)」と「INSOMNIA(眠れない人)」という単語を組み合わせたという
「ホテル・ザ・エム インソムニア 赤坂(インソムニア 赤坂)」(東京都港区赤坂2-14-14)。赤坂駅から徒歩2分、溜池山王駅から徒歩6分。11階建てで客室68室、スペシャルルーム3室の計71室。インソムニアというホテル名は「INN(ちいさなホテル)」と「INSOMNIA(眠れない人)」という単語を組み合わせたという
[画像のクリックで拡大表示]
カフェの奥がレセプションで、突き当たりがラウンジ。シームレスにつながっていて、チェックイン、チェックアウトをカフェで行える
カフェの奥がレセプションで、突き当たりがラウンジ。シームレスにつながっていて、チェックイン、チェックアウトをカフェで行える
[画像のクリックで拡大表示]
1階で24時間営業している「ウニール 赤坂店」はコーヒー豆を産地の農場から直接買い付けている京都発のスペシャルティコーヒー専門店「ウニール」の東京1号店。ルームキー提示で「カプチーノ」(520円)や「カフェラテ」(600円)など6~7種類のコーヒーを24時間無料で飲める(時間帯により対象メニューは異なる)。また同じく京都発のブーランジュリー 「ル・プチメック」の「クロワッサン」(180円)、「パン・オ・ショコラ」(230円)などを店内で焼き上げて提供している
1階で24時間営業している「ウニール 赤坂店」はコーヒー豆を産地の農場から直接買い付けている京都発のスペシャルティコーヒー専門店「ウニール」の東京1号店。ルームキー提示で「カプチーノ」(520円)や「カフェラテ」(600円)など6~7種類のコーヒーを24時間無料で飲める(時間帯により対象メニューは異なる)。また同じく京都発のブーランジュリー 「ル・プチメック」の「クロワッサン」(180円)、「パン・オ・ショコラ」(230円)などを店内で焼き上げて提供している
[画像のクリックで拡大表示]
1階の奥にあるラウンジ
1階の奥にあるラウンジ
[画像のクリックで拡大表示]
東京・赤坂に「眠らないホテル」、レストランの代わりに何がある?(画像)
[画像のクリックで拡大表示]
全宿泊客が24時間利用できるスペシャルルームのひとつ「キッチンドリンカー」はドイツのキッチンメーカー「ブルトハウプ」のシステムキッチンと基本的な調理器具を備えたキッチンスタジオ風の施設。要予約で2時間から利用可能(1時間5000円)、ビジターも利用可能(1時間1万円)。定期的に料理教室を開催することも可能
スペシャルルーム「ワーカホリック」はミーティングルームと大画面ビジョン、英国王室ご用達のスコットランド「リン」社のサラウンドシステムを完備。ネットに接続して海外と真夜中に電話会議をすることもできる。要予約で2時間から利用可能(1時間5000円)、ビジターも利用可能(1時間1万円)
スペシャルルーム「ワーカホリック」はミーティングルームと大画面ビジョン、英国王室ご用達のスコットランド「リン」社のサラウンドシステムを完備。ネットに接続して海外と真夜中に電話会議をすることもできる。要予約で2時間から利用可能(1時間5000円)、ビジターも利用可能(1時間1万円)
[画像のクリックで拡大表示]
スペシャルルーム「マッスルペイン」はイタリア製フィットネスマシンブランド「テクノジム」のマシンやトレーニング器具を備えたエクササイズ施設。負荷トレーニングと有酸素トレーニング機器をバランス良く、スペースに余裕を持って配備している。24時間利用でき、宿泊客のみ利用可(料金は無料)。パーソナルトレーナーの同伴も可能
スペシャルルーム「マッスルペイン」はイタリア製フィットネスマシンブランド「テクノジム」のマシンやトレーニング器具を備えたエクササイズ施設。負荷トレーニングと有酸素トレーニング機器をバランス良く、スペースに余裕を持って配備している。24時間利用でき、宿泊客のみ利用可(料金は無料)。パーソナルトレーナーの同伴も可能
[画像のクリックで拡大表示]

平均48平米の客室が実際以上に広く見える理由は?

 同ホテルがあるのは、TBSや赤坂サカスからほど近いところ。外観は中規模のマンションといった雰囲気だと思ったら、マンションとして建設された建物を入居前にホテルに改装したのが前身のホテルだったという。

 1階は二面がガラス張りで中が見渡せ、エントランスの向かって右側にあるカフェが通りからも目を引く。その奥にレセプションとショップがあり、突き当たりにラウンジがある(といっても大きめのソファがひとつ置かれているだけ)。パブリックスペースはこれが全てで、入口を入った瞬間に全部が見渡せる。“こぢんまりしたホテル”というのが第一印象だ。

 パブリックスペースの狭さと対照的で驚いたのが、客室の広さ。一般に都心のシティホテルだと40平米以上の面積の客室は少ないが、同ホテルは1室平均が45平米。68室のうち10室は55平米で、最も狭い部屋でも34~35平米(14室)だ。日本ホテル協会に入会できるホテルの最低基準(「15平米以上のシングルルームと22平米以上のツインルームの合計が客室総数の50%以上あること」)と比較すると、その広さがわかるだろう。

 48平米以上の部屋がともすればがらんとして見えるのは、家具の配置もひとつの理由。「家ではしたくてもできないこと、例えば人が集まって語り合ったり、飲んで騒いだり、ということができる場所にしたかった。どのようにも使えるようにするため、あえてこまごまとした物を置かないようにした」(同ホテルを設計したグリフォンの齋藤貴史社長)という。

広さがそのまま部屋の名称になっている。客室名「40」(40平米、ツインベッド/1泊ルームチャージは3万3000円~)。ベッドは120cmのセミダブル幅
広さがそのまま部屋の名称になっている。客室名「40」(40平米、ツインベッド/1泊ルームチャージは3万3000円~)。ベッドは120cmのセミダブル幅
[画像のクリックで拡大表示]
客室名「50」(48平米、ダブルベッド/1泊ルームチャージは税込み3万9000円~)。3人利用の場合はエキストラベッドが追加される
客室名「50」(48平米、ダブルベッド/1泊ルームチャージは税込み3万9000円~)。3人利用の場合はエキストラベッドが追加される
[画像のクリックで拡大表示]
客室名「55」(55平米、ツインベッド/1泊ルームチャージは税込み4万2000円~)。ツインタイプのベッドはそれぞれが幅140cmもある
客室名「55」(55平米、ツインベッド/1泊ルームチャージは税込み4万2000円~)。ツインタイプのベッドはそれぞれが幅140cmもある
[画像のクリックで拡大表示]
ベッドスローには1960年代以降の「眠らない街・赤坂」をモチーフにしたプリントが施されている
ベッドスローには1960年代以降の「眠らない街・赤坂」をモチーフにしたプリントが施されている
[画像のクリックで拡大表示]
壁にはドイツの出版社「タッシェン」の写真集をコラージュしたアートが飾られている
壁にはドイツの出版社「タッシェン」の写真集をコラージュしたアートが飾られている
[画像のクリックで拡大表示]
アメニティはロンドン発のオーガニック系ブランド「エッセンシャルエレメンツシリーズ」(Gilchrist & Soames社)を日本のホテルとしては初めて採用
アメニティはロンドン発のオーガニック系ブランド「エッセンシャルエレメンツシリーズ」(Gilchrist & Soames社)を日本のホテルとしては初めて採用
[画像のクリックで拡大表示]

「アーバン・モダン・シンプル」なのに、部屋にはなぜか“生活感”

 同ホテルのもうひとつの特徴は、飲食施設が簡素な1階のカフェのみで、レストランもバーもないこと。「赤坂は一歩外に出ればいいレストランやバーが密集している。周辺の店舗も積極的にご案内し、赤坂というエリアを楽しんでほしい」(グリフォンの齋藤社長)というのがその理由だ。

 レセプションの後ろ側に冷蔵庫があり、ホテル内でアルコールが飲みたくなったときは自分で取り出してスタッフから購入するシステムだ。「部屋に持ち帰って一人で飲むこともできるし、誰かと話をしたいときはラウンジをバー代わりにしてほかのゲストと話をしながら飲むこともできる」(齋藤社長)。

 インテリアデザインのコンセプトは「アーバン・モダン・シンプル」とのことで、たしかに非常にスタイリッシュな印象。だが住居用マンションを改装したため、客室全室が靴を脱いで入る仕様だったり、ミニキッチンと電子レンジ付きだったりと、日常の生活感を感じさせる部分もあり、その対照が面白く感じられた。前身のホテル時代から外国人の長期滞在者が多かったという。ただ調理器具の備品はなく、什器は温冷兼用の耐熱グラスのみ。レセプションで借りることも可能だが、数に限りがあるとのことなので、調理するつもりなら自分で用意したほうがよさそうだ。

 また料金体系がルームチャージ制であることも特色。これは1室をグループで利用する客のための配慮で、例えば48平米で3万9千円の部屋を3人で使用すれば、1人1万3千円となる。最近増えてきているインバウンド向けのホステル型宿泊施設でも、グループ利用ができる個室を設けるところが増えている(関連記事「ホテル不足で日本人も殺到!? 「インバウンド向け宿泊施設」の中身がすごい」)。インソムニア赤坂は日本滞在中の時間をフルに活用したいという海外旅行客にも受けそうだ。

レセプションの後ろ側に冷蔵庫がある。「アルコールのセレクションは万人受けする一般的なものではなく、高級感があり手に入りにくいものを揃えている」(同ホテルを設計したグリフォンの齋藤貴史社長)
レセプションの後ろ側に冷蔵庫がある。「アルコールのセレクションは万人受けする一般的なものではなく、高級感があり手に入りにくいものを揃えている」(同ホテルを設計したグリフォンの齋藤貴史社長)
[画像のクリックで拡大表示]
室内はスタイリッシュな雰囲気だが、廊下は住宅用マンションの雰囲気。ひとつ気になったのは、エレベーターが客室68室に対して1基のみであること。住居用のマンションの改装だから仕方ないのだろうが、内覧会当日もエレベーター待ちの時間が長かった
室内はスタイリッシュな雰囲気だが、廊下は住宅用マンションの雰囲気。ひとつ気になったのは、エレベーターが客室68室に対して1基のみであること。住居用のマンションの改装だから仕方ないのだろうが、内覧会当日もエレベーター待ちの時間が長かった
[画像のクリックで拡大表示]

(文/桑原恵美子)