2016年3月9日、名古屋駅前に「大名古屋ビルヂング」がグランドオープンした。
ビル名は、1962年から2012年までランドマークとして親しまれた旧・大名古屋ビルヂングの名称を継承。旧ビルでは一般利用が地下飲食街と夏季の屋上ビアガーデンに限られていたが、新しいビルは74店舗と14テナントで構成される大型商業施設に生まれ変わった。
キーテナントは「イセタンハウス」
商業ゾーンのキーテナントは、三越伊勢丹の新たなセレクトショップ「イセタンハウス」。約900坪と商業ゾーンのおよそ4分の1を占め、地下1階~地上2階の3フロアにモードファッション、カジュアル、スポーツ、コスメのショップを集める。三越伊勢丹の新オリジナル雑貨ブランド「ニッポッピン」、リップバーやカウンセリング機能を融合させたコスメカウンター「コスメティックス」など新機軸も打ち出している。伊勢丹としては中規模店で、今後の中核都市での出店戦略のモデルケースにも位置付けられるという。
地元住民でもなかなか行けない人気飲食店が大集合
全74店舗中、東海地方(愛知・岐阜・三重)初は41店舗。新業態14店舗、商業施設初出店25店舗と地元の利用者にとってはフレッシュなラインアップ。さらに、東海地方を拠点とするショップの多くが、チェーンではない地元でも知る人ぞ知る人気店だ。
飲食店街「大名古屋ダイニング」では、名古屋で最も予約が取りにくいイタリアンレストランといわれる「トラットリア フラテッリ ガッルーラ」、本場・ナポリの選手権でチャンピオンに輝く世界一のピッツァ職人が腕をふるう行列店「ソロピッツァ ナポレターナ」、近郊の知立市で絶大な人気を誇る焼肉店「肉や大善」、商業施設初出店の人気焼き鳥店「レアル grande」など、名古屋の人でも“知ってはいるがなかなか行けない”飲食店がリストアップされている。
「5年かけて名古屋の繁盛店をリサーチし、地元でも付加価値の高い飲食店を集めた。向かい側に竣工するJPタワーは東京の人気店をそろえてくることが予想され、差異化を図る狙いもあった。だが、それ以上に長く地元で愛されてきた大名古屋ビルヂングにふさわしいテナント構成を念頭にリーシングを進めた。テナント側も“大名古屋ビルヂングなら”と出店を決断してくれたところが少なくなかった」(飲食店のリーシング担当者)という。
歴史ある地元ショップと最先端ショップが融合
物販店も同様で、地元発は新業態や希少性の高い店舗が多い。岐阜で人気の和菓子店「ツバメヤ」は初の支店。靴製造販売の老舗「マドラス」は自社ブランドとオーダーメイドのオンリーショップ、国内でも五指に入るアンティークジュエリーショップ「アーツ&アンティークス ミアルカ」は唯一の店舗があった市内の商業施設から移転オープンした。
さらに、メガネチェーン・和光の新ブランド「Eye Feel」、名古屋土産をそろえた書店&雑貨「リブレット ナゴヤ」、ギフトをテーマに地元作家の作品もチョイスするセレクトショップ「PRIZE」などが、並み居る東京発ブランド群の中で個性を放っている。
物販店のリーシング担当者は「歴史と実力のある地元のショップと、全国区の最先端とのテナントミックスによるシナジー効果を狙った。客層は周辺のオフィスワーカーから名古屋を訪れる観光客まで幅広く想定し、期待に応えられるテナントをそろえた」と語る。
2016年から2017年にかけ、名古屋駅周辺ではJRゲートタワー、新ビル・JPタワーの商業施設「KITTE 名古屋」、新・第二豊田ビル、グローバルゲートなど、高層ビル群のオープンラッシュが続く。2027年のリニア開通も控え、再開発はさらに加速することが予想される。
2005年の愛知万博に前後しての“名駅摩天楼化”は、当時絶頂だった名古屋経済の象徴とされ、「名古屋が元気」とメディアで盛んに取り上げられた。街のシンボルとしてよみがえった大名古屋ビルヂングは、再び名古屋が脚光を浴びるきっかけとなるのだろうか。
(文/大竹敏之)