2018年2月21日、ちゃんぽんや皿うどんを提供する「リンガーハット」の新ブランド「EVERY BOWL(エブリボウル)」が東京・広尾にオープンした。客がカウンターでヌードル(麺)やソース、付け合せのデリを選び、1つのボウルに盛り付けてもらうスタイルで、リンガーハットでおなじみのちゃんぽんや皿うどんはおいていない。全てのメニューがテイクアウト可能で、テイクアウト限定の日替わりメニューも用意している。

 同社の川内辰雄ブランドマネージャーは、「地域限定という特色を、メニューではなく店舗で出したかった」と新ブランド立ち上げの理由を語る。外部のアドバイザーを起用し、構想に約2年をかけたという。

「EVERY BOWL(エブリボウル)広尾店」(渋谷区広尾5-5-1)。広尾駅から徒歩1分。営業時間は11~22時
「EVERY BOWL(エブリボウル)広尾店」(渋谷区広尾5-5-1)。広尾駅から徒歩1分。営業時間は11~22時
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   近年、サラダ専門店やデリ専門店が増えているが、エブリボウルもその流れを受けて開発したのだろうか。川内ブランドマネージャーは「リンガーハットで提供している汁なしメニューの『まぜめん』をスタイリッシュにアレンジした」と説明する。ちゃんぽんではなくまぜめんを選んだのは、テイクアウト比率を上げるためだ。汁ものはテイクアウトしにくいため、既存のリンガーハットのテイクアウト利用率は約10%。エブリボウルでは約30%まで引き上げたいという。

4種類の麺、6種類のメインソース、約8種類の日替わりデリから各1種類を選び、オーガニックのベビーリーフサラダを添えるのが基本メニュー。メニューはフードプランナーの大皿彩子氏がプロデュースしているという
4種類の麺、6種類のメインソース、約8種類の日替わりデリから各1種類を選び、オーガニックのベビーリーフサラダを添えるのが基本メニュー。メニューはフードプランナーの大皿彩子氏がプロデュースしているという
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テイクアウトは風呂敷包みで提供
テイクアウトは風呂敷包みで提供
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カラフルで食欲はそそるが、量は少なめ

   4種類のオリジナル麺、6種類のメインソース、季節の野菜でつくる約8種類のデリから、各1種類ずつを自由に選べるシステム。店内に入ってすぐの場所にカウンターがあり、カラフルなデリがずらりと並んでいる。さっそくカウンターに並び、オーダーを開始。麺は「五穀(大麦、玄米、赤米、小豆、小麦)」、「五穀リガトーニ」、「国産小麦」、「グルテンフリー」の中から五穀を選んだ。麺とメインソースを指示し、調理を待つ間にデリを選ぶ。デリはかぼちゃやトマト、ニンジンなど色鮮やかな野菜を使ったメニューが多い。トマトとイチゴ、パプリカをあえた「赤いマリネ」という、いかにも女性好みのメニューもある。デリと麺、ソースをボウルに入れ、最後にベビーリーフのサラダを添えて完成。提供にかかったのはおよそ5分ほどだったが、メニューを選ぶのに悩んだらもう少し時間がかかるだろう。

麺は「五穀」、メインソースは「海老のスイートチリソース サワークリーム添え」、デリは「リンゴとチーズのふんわりキッシュ」「赤いマリネ」を選んだ例(980円の基本メニューに180円でデリを追加)。動物性食材を使用しないヴィーガン対応のメニューもある
麺は「五穀」、メインソースは「海老のスイートチリソース サワークリーム添え」、デリは「リンゴとチーズのふんわりキッシュ」「赤いマリネ」を選んだ例(980円の基本メニューに180円でデリを追加)。動物性食材を使用しないヴィーガン対応のメニューもある
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   五穀の麺はかなり太く、固めに茹でた全粒粉の極太パスタのような歯ごたえ。かむのに疲れるほどの弾力だが、穀物特有の香りと甘味を強く感じる。味見をした五穀のリガトーニは、柔らかく食べやすかった。「サーモン&リコッタのレモンクリーム」などの洋風ソースから「タイ風グリーンカレー&パクチー」などエスニック風味ものまでそろえており、ほかのメニューもいろいろ試してみたくなった。

   気になるのは、麺の量だ。「麺は全体の1/4程度。サラダやデリ、ソースと比べても多くならないようにした」と川内ブランドマネージャーは話す。だが、ちゃんぽんと違って汁がなく、麺のボリュームが少ないので男性には少し物足りないかもしれない。

定番メニューを作らないことで野菜の高騰に対応

   リンガーハットは過去にも女性をターゲットにした新業態を立ち上げた経緯がある。2011年にオープンした「リンガール東京」だ(関連記事「“男子禁制”の リンガーハット!? 新業態『リンガール東京』」)。メインメニューは「ちゃんぽん」ならぬ「ちゃんPon」と「皿うどん」ならぬ「Saraうどん」で、価格帯も通常のリンガーハットより高く、約1.5倍だった。現在は全店撤退しているが、その理由を「おしゃれにしても、結局『ちゃんぽんはちゃんぽん』だった」と川内ブランドマネージャーは振り返る。リンガールの1号店はリンガーハット既存店を業態転換したので「同じメニューでバージョンアップしただけでは、既存店と比べて割高に感じる人が多かったようだ」(川内ブランドマネージャー)。そこでエブリボウルは、ネーミングもメニューも“リンガーハット色”を封印。看板や内装にもリンガーハットを感じさせるものは採用せず、新規ブランドであることを強調している。

リンガーハット 川内辰雄ブランドマネージャー
リンガーハット 川内辰雄ブランドマネージャー
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   エブリボウルは2020年までに20店舗まで増やす予定だというが、「100店舗、200店舗といった多店舗経営化するつもりはない」と、川内ブランドマネージャーは話す。その理由は2つ。まず、消費者の嗜好が多様化しているなかで、1ブランドで100店舗以上展開するのが難しい時代になっているということ。そして、もう1つは、ここ数年の野菜の高騰の影響だ。

 リンガーハットは2009年から原料を全て国産野菜に切り替えているので、天候不良などで野菜の仕入れ値が上がるとダイレクトに影響を受けるという。特に、リンガーハットの代表的なメニューである長崎ちゃんぽんには大量のキャベツを使用しているため「契約農家だけではまかなえず、高値で取引している市場からも仕入れた結果、1カ月で約3000万円ほど原価が高くなった月もあった」(川内ブランドマネージャー)。それに対し、定番のメニューを作らず、季節の食材を中心にメニューを展開するエブリボウルは、そのときに価格が高い野菜をあえて使う必要がなく、店舗数も抑えているので野菜の高騰の影響をさほど受けずに済む可能性があるというわけだ。

 「エブリボウルを創業ブランドの『とんかつ濵かつ』、主力ブランドのリンガーハットに次ぐ第3の柱にしたい」と川内ブランドマネージャーは意気込みを語る。

(文/桑原恵美子)