ケイ・オプティコム(大阪市中央区)は、モバイル通信サービス「mineo」の新料金プランとして、ソフトバンク回線を用いた「Sプラン」の提供を2018年9月4日にスタートする。au、NTTドコモに続いて新たにソフトバンクの回線を加え、大手3キャリア(通信事業者)全てをカバーするmineoの狙いと課題を探ってみよう。

ソフトバンク回線を利用する「Sプラン」を追加

 これまでNTTドコモのネットワーク回線を用いてサービスを提供するところが圧倒的多数を占めていたMVNO(仮想移動体通信事業者)。だが最近は、他社との差異化を進めるためか、複数キャリアの回線に対応し、「マルチキャリア」をうたうところが増えている。

 とはいえ、ドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクの3社のネットワークに対応したMVNOは、九州電力グループのQTnetが提供する「QTモバイル」くらいしかなかった。そこに名乗りを上げたのが、MVNO大手の一角を占める、ケイ・オプティコムの「mineo」である。

 mineoでは既にauの回線、およびドコモの回線を利用するサービスを、それぞれ「Aプラン」「Dプラン」として提供しているが、2018年9月4日にはソフトバンクの回線を利用する「Sプラン」が追加される。これによってmineoは、3キャリア全ての回線が利用できるトリプルキャリアMVNOとなるわけだ。

mineoは2018年7月23日、ソフトバンクの回線を利用する「Sプラン」を9月4日より提供すると発表。写真は同日の「mineo新サービス発表会」より
mineoは2018年7月23日、ソフトバンクの回線を利用する「Sプラン」を9月4日より提供すると発表。写真は同日の「mineo新サービス発表会」より
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Sプランの料金設定はやや高め

 Sプランの内容は、基本的にAプランやDプランと同じ構成で、ひと月当たりの高速データ通信量が500MBから30GBまでの6つのコースが用意されている。他のプランには存在する1GBのコースだけはSプランで提供されないが、これはmineoが1GBコースの提供の終了を予定しているためで、AプランおよびDプランの1GBコースの新規申し込みも9月3日をもって終了するという。

 一方、料金設定はやや異なる。データ通信と音声通話が付いた「デュアルタイプ」の場合、500MBコースで月額1750円(税別、以下同)と、Aプラン(月額1310円)、Dプラン(月額1400円)より高めの料金設定となっているが、これには大きく2つの要因がある。1つはソフトバンクから回線を借り受ける際に支払う接続料が、他の2社より高いこと。もう1つは、iPhone用とAndroid用があるなど、ソフトバンクのSIMカードの形態が複雑であるため運用コストが高くつくことだ。

 また回線に関しても、mineoが借りるのはあくまでソフトバンクの回線のみで、関連会社とはいえWireless City Planningの回線は対象外。そのためソフトバンクが「SoftBank 4G」として提供している下り最大110Mbpsの通信規格、AXGPは利用できないとのことだ。

Sプランの内容。既存のAプランやDプランと比べると料金はやや高めになっている。写真は2018年7月23日の「mineo新サービス発表会」より
Sプランの内容。既存のAプランやDプランと比べると料金はやや高めになっている。写真は2018年7月23日の「mineo新サービス発表会」より
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3キャリア対応の背景にSIMロック解除の問題

 ソフトバンク系のMVNOには、2017年にサービスを開始した日本通信、ソフトバンク傘下となったLINEモバイルなどがあるものの、ソフトバンクの回線が利用できるMVNOはまだ多くない。先述したようにソフトバンクの回線はコストが高く、NTTドコモやauと比べるとMVNOにとってメリットが少ないためだ。

 にもかかわらず、なぜmineoはソフトバンクの回線を借り受けてトリプルキャリアMVNOを目指したのだろうか。ケイ・オプティコム代表取締役社長の荒木誠氏はその理由について、ユーザーアンケートの結果から「SIMロックに対する認知は進んでいるが、その解除を面倒だと思っているユーザーがかなりいるため」と話している。

mineoがトリプルキャリアMVNOを目指したのは、SIMロック解除を煩わしいと感じるユーザーが多くいるためだという。写真は2018年7月23日の「mineo新サービス発表会」より
mineoがトリプルキャリアMVNOを目指したのは、SIMロック解除を煩わしいと感じるユーザーが多くいるためだという。写真は2018年7月23日の「mineo新サービス発表会」より
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 mineoではSIMカードと端末をセットで購入するユーザーが15%程度と比較的低い一方で、iPhoneユーザーの比率が高い。これは、大手キャリアからmineoに乗り換えた後、手持ちの端末にmineoのSIMカードを挿入して利用するユーザーが多いということだ。だが、キャリアで購入した端末でmineoの回線を利用するには、乗り換え前と同じキャリアのプランを選択するか、端末のSIMロックを解除する必要がある。

 SIMロックは、対象となっている端末であれば、キャリアのウェブサイト上で解除できる。しかし、SIMロックの解除が義務化されたのは2015年であり、端末の購入時期や入手方法によってSIMロックを解除できない場合があるのだ。

ソフトバンクユーザーの取り込みが狙い

 MVNO側が各キャリアに対応したSIMカードを用意すれば、SIMロック解除は不要になるとも言えるが、回線を借り受けると設備投資や運用コストが増えるため、MVNOとしては現状を維持したいというのが本音だろう。

 ところがmineoは、2020年度に回線契約数200万件の達成を目標に掲げるなど、契約数の拡大に力を注いでいる。そのためにはSIMロックの問題で取り込めていなかったソフトバンクユーザーの転入を促す必要があると判断し、Sプランの提供に至ったとみていい。

2018年4月に回線契約数100万件を達成したことから、mineoは次の目標を2020年度200万件達成としている。写真は2018年7月23日の「mineo新サービス発表会」より
2018年4月に回線契約数100万件を達成したことから、mineoは次の目標を2020年度200万件達成としている。写真は2018年7月23日の「mineo新サービス発表会」より
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 荒木社長は、NTTドコモの場合と同様の比率でMVNOに乗り換えるユーザーがいると考えた場合、3978万件あるソフトバンクの契約数のうち9.1%に当たる約360万件がMVNOに転入してくる可能性があるとしている。しかもソフトバンクの回線が利用できるMVNOは数が少ないため、そのほとんどをmineoが獲得できるとなれば、回線契約数200万件に向けて大きな弾みがつくのは確実だろう。

ソフトバンクからの乗り換えユーザーはどこへ行く?

 Sプランでソフトバンクユーザーの取り込みを狙うmineoだが、思惑通りにはならないというのが、筆者の正直な見解である。

 確かに現状、SIMロックの解除には問題が残っているものの、時間がたつにつれてウェブサイト上で手軽にロックを解除できる端末が増える。そうなればソフトバンク回線にこだわる必要はなくなり、より安価なMVNOが選ばれる可能性は高い。また「楽天モバイル」や「UQ mobile」のように、SIMカードと端末のセット販売に強みを持つMVNOもある。そうしたMVNOに乗り換える際は端末ごと買い替えてしまうため、そもそもSIMロックを解除する必要がないのだ。

 そしてもう1つ、ソフトバンクが低価格のサブブランド「ワイモバイル」を擁しており、販売面で強固に連携していることも気掛かりだ。他のキャリアと比べると、ソフトバンクからの乗り換えユーザーはMVNOではなくワイモバイルを選択する傾向がある。今後は「LINEモバイル」との連携も強まるはずで、グループ外のMVNOを選択するユーザーはさらに減るだろう。

 とはいえ、mineoのトリプルキャリア戦略は、ユーザーに対して間口を広げるという意味では大きな意義がある。まずはサービス開始後の動向を見守っていきたいところだ。

mineoは、ソフトバンクの回線契約数3978万件のうち、9.1%に当たる約360万件がMVNOに乗り換える可能性があるとみているが……。写真は2018年7月23日の「mineo新サービス発表会」より
mineoは、ソフトバンクの回線契約数3978万件のうち、9.1%に当たる約360万件がMVNOに乗り換える可能性があるとみているが……。写真は2018年7月23日の「mineo新サービス発表会」より
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