2019年にキャリアとして携帯電話事業への参入を打ち出した楽天が、「楽天モバイル」の夏商戦に向けた戦略説明会を開催した。ファーウェイ製の新端末の投入や、主力の料金プラン「スーパーホーダイ」のリニューアルによって契約の獲得を推し進めるが、その一方では悩ましい状況も生まれている。

ファーウェイとの良好な関係をアピール

 楽天は、1.7GHz帯の周波数帯の割り当てを受けたことにより、2019年にキャリア(通信事業者)として携帯電話事業に参入することを正式に表明した。だが、楽天の足元の主力事業は、「楽天モバイル」のMVNO(仮想移動体通信事業者)事業である。

 楽天モバイルは現在、コンシューマー向けのMVNOとして首位の座を獲得しており、将来のキャリア参入に向け、さらなる契約獲得を推し進めている。その一環として楽天モバイルは6月14日、夏商戦に向けた戦略説明会を開催し、新たな施策を打ち出した。

 楽天モバイルのスマートフォン新商品として発表されたのは、ファーウェイの「HUAWEI P20」と「HUAWEI P20 lite」の2機種。これらは6月11日にファーウェイからSIMフリーモデルの提供が発表されたもので、それらを楽天モバイルが扱うわけだ。

楽天が2018年夏の新機種として発表したのは、「HUAWEI P20」と「HUAWEI P20 lite」(写真)の2機種。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
楽天が2018年夏の新機種として発表したのは、「HUAWEI P20」と「HUAWEI P20 lite」(写真)の2機種。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
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 楽天モバイルはこれまで、ファーウェイの「honor 6 plus」や「HUAWEI honor 8」を独占販売した実績がある一方、楽天の総合ショッピングモール「楽天市場」上にファーウェイがオンラインストアを開設するなど、両社は良好な関係を築いてきた。

 ファーウェイは現在、大手3キャリアに端末を提供するなど、より販売台数が多い市場に販売の軸を移しつつあるが、楽天モバイルは個人向けMVNOの最大手だけに、関係は維持していきたいところ。また楽天としても、2019年にはキャリアとして携帯電話事業に参入する予定であり、幅広い端末ラインアップを持つファーウェイは重要なパートナーになり得る。そうした事情もあって、今回の説明会で改めて両社の良好な関係をアピールするに至ったのだろう。

説明会ではファーウェイのデバイス 日本・韓国リージョン プレジデントである呉波氏(右)が登壇し、両社の良好な関係を印象付けていた。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
説明会ではファーウェイのデバイス 日本・韓国リージョン プレジデントである呉波氏(右)が登壇し、両社の良好な関係を印象付けていた。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
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 そしてもう1つ、サービス面での新たな施策として打ち出されたのが、楽天モバイルの主力料金プラン「スーパーホーダイ」のリニューアルだ。「スーパーホーダイ」とは、定額の音声通話とデータ通信がセットになったプランで、12カ月、24カ月、36カ月の最低利用期間を選んで契約することで、契約期間の長さに応じた特典が受けられるほか、毎月の通信容量を使い切った場合も1Mbpsの通信速度が保証されるといった特徴がある。

 今回のリニューアルで発表されたポイントは大きく3つ。1つは契約期間の長さによって決まる特典の変更だ。従来は端末代金のキャッシュバックだったが、通信料の値引きへと変更された。24カ月の契約であれば月額500円、36カ月の契約であれば月額1000円の値引きがそれぞれ2年間適用される。ちなみに今回のリニューアルに伴い、従来は契約期間ごとに異なっていた解除料も、一律9800円へと変更された。

楽天会員が3年契約を選ぶと「楽天会員割」と「長期割」を合わせて月額1500円の値引きが受けられる。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
楽天会員が3年契約を選ぶと「楽天会員割」と「長期割」を合わせて月額1500円の値引きが受けられる。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
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 2つ目の変更点は大容量プランの新設だ。従来の「スーパーホーダイ」は、通信容量14GBの「プランL」(月額5980円)が最大だったが、新たに24GBの「プランLL」(月額6980円)が新設された。もちろん、こちらも各種割引の対象となる。

 そして3つ目は定額通話の時間延長。「スーパーホーダイ」の通話定額はこれまで5分以内の通話が対象だったが、今回のリニューアルによって10分まで延長された。先述の2つの施策は新規契約者のみが対象だが、こちらは既存の「スーパーホーダイ」契約者にも適用されるとのことだ。

サービス面での新たな施策は「スーパーホーダイ」のリニューアル。ポイントは割引のシステム変更と大容量プランの増設、通話定額の時間延長の3つだ。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
サービス面での新たな施策は「スーパーホーダイ」のリニューアル。ポイントは割引のシステム変更と大容量プランの増設、通話定額の時間延長の3つだ。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
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携帯電話事業参入後、楽天モバイルはどうなる?

 今回の説明会では、楽天モバイル事業の執行役員である大尾嘉宏人氏が、ワイモバイル、UQ mobileと楽天モバイルの料金を比較し、リニューアルした「スーパーホーダイ」の優位性を訴えていた。この様子からは、楽天モバイルがサブブランドを強く意識している現状が垣間見える。

パネルを使ってリニューアルした「スーパーホーダイ」の優位性を訴求する大尾嘉氏。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
パネルを使ってリニューアルした「スーパーホーダイ」の優位性を訴求する大尾嘉氏。写真は6月14日の楽天モバイル夏商戦戦略説明会より
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 楽天モバイルは、新端末と「スーパーホーダイ」のリニューアルによって、2019年の携帯電話事業参入までに300万件を超える契約を獲得する考えのようだ。だがここで気になるのが、楽天は約1年後にキャリアとしてサービスを開始する予定であり、かつサービス開始後は新サービスに楽天モバイルの顧客を取り込もうともくろんでいることだ。

 先の料金プランを見れば、楽天モバイルが36カ月の長期契約を結んでくれる顧客の獲得を推し進めようとしていることは明白。しかし、その顧客はMVNOとしての楽天モバイルに魅力を感じている人たちだ。近いうちに新サービスへの移行が求められるであろう楽天モバイルと長期の契約を結ぶのは、いくら「お得になる」と言われても二の足を踏んでしまうのではないだろうか。

 大尾嘉氏は「キャリアとして良質なネットワークを作っていく」とした上で「楽天モバイルの顧客に移行してもらえたらいいとは思っているが、今の顧客が不利になることはしない」と言う。3年後も継続してNTTドコモのネットワークを借り受け、現在のサービスが利用できることを担保すると明言した。

 キャリアとしての道を歩み始めたことで楽天は、MVNO事業の立ち位置を微妙なものにしてしまったのは事実だろう。携帯電話事業が安定するまでの間、ユーザー、端末メーカー、そしてネットワークを提供しているドコモとの関係をどう保っていくのか。楽天は難しいかじ取りを迫られることとなりそうだ。

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