必要なのは顧客と正面から向き合う姿勢

 5Gによる通信は、社会インフラ全体に大きな影響を与えるともいわれている。それだけに、新時代に向けた新たなビジネス領域を積極的に開拓することは重要だ。また、就任会見で革新性を打ち出した高橋氏の方針とも合致している。社長就任のあいさつとしては順当な内容と言えるだろう。

 だが、ここ数年来の高橋氏、ひいてはKDDIの動向を見るに、顧客目線でのサービス提供という部分には多くの課題があるようにも筆者は感じる。特に気掛かりなのが、顧客目線を重視すると言いながらも、高橋氏の言葉からはプロダクトアウトの傾向が見て取れることである。

 例えば、現在KDDIが力を入れている「Wowma!」に関して、高橋氏は「単にモノを安く売るEコマース(電子商取引)にしてはいけない。顧客がワクワクしてもらう体験価値をつくり上げる入口にしていく」と話している。だが、米アマゾンや楽天などが支持を得たのは、消費者が求める「便利でお得」という電子商取引の基本を徹底してきたが故だ。顧客目線に立つと言うなら、ユーザーが求める本質をいかに追求するかが第一ではないだろうか。

KDDIは電子商取引の「Wowma!」を、顧客がワクワクする体験価値を提供する入口にするとしているが、電子商取引に安さと利便性を求めるユーザーとのずれを感じる。写真は4月5日のKDDI記者会見より
KDDIは電子商取引の「Wowma!」を、顧客がワクワクする体験価値を提供する入口にするとしているが、電子商取引に安さと利便性を求めるユーザーとのずれを感じる。写真は4月5日のKDDI記者会見より
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 その印象をさらに強くしたのが、最近ネット上などで問題視されたテザリングの有料化について、高橋氏が言及しなかったことだ。

 本連載でも前回、auのテザリングオプション有料化に関する騒動について触れたが(関連記事:キャリアの「テザリング有料化」が批判される理由」)、他にもKDDIは3月に、戸建て向け固定ブロードバンドの「auひかり ホーム」の工事費分割や解約時の撤去工事費の負担規定を改訂。従来は任意だった解約時の設備撤去が必須となり、その撤去費用も従来の倍以上に引き上げられるなど、消費者にとって不利益となる項目が盛り込まれたことが強い批判を浴びていた。

 顧客への説明不足や不十分な対応が続くようであれば、KDDIに批判的なユーザーが増え、ユーザーの信頼を大きく損なうことになりかねない。「顧客目線に立つ」と語る前に、ユーザーと正面から向き合う姿勢が、高橋体制のKDDIには強く求められている。