指定のSNSを利用したときの通信量が消費されない「カウントフリー」を打ち出し、鳴り物入りで登場したMVNO「LINEモバイル」。ところが、そのLINEモバイルとソフトバンクとの資本・業務提携が発表された。なぜLINEモバイルは大手キャリアの子会社となる道を選択したのだろうか。同社のこれまでの動向から改めて振り返ってみたい。

ソフトバンクが株式の51%を取得

 2017年から2018年にかけてMVNO(仮想移動体通信事業者)に関する大きな動きが相次いでいるが、中でも注目されているのが、メッセンジャーアプリ大手LINEの子会社であるLINEモバイル(東京・渋谷)の動向だ。

 LINEモバイルは2016年9月にMVNOとしてサービスを開始しており、他のMVNOと同様、NTTドコモのネットワークを借り受けて独自の通信サービスを提供してきた。そのLINEモバイルが、ソフトバンクの傘下に入るというのである。具体的には、両社が資本・業務提携し、ソフトバンクがLINEモバイルの株式51%を取得。この提携は3月20日に契約が締結され、増資実行日は4月2日を予定しているとのこと。以降LINEモバイルは、LINEの子会社ではなくなり、ソフトバンク傘下の企業となるわけだ。

ソフトバンクはLINEモバイル株の過半数を取得することを発表。これによってLINEモバイルはLINEの子会社ではなくなる。写真は2月7日のソフトバンク決算説明会より
ソフトバンクはLINEモバイル株の過半数を取得することを発表。これによってLINEモバイルはLINEの子会社ではなくなる。写真は2月7日のソフトバンク決算説明会より
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 LINEモバイルはMVNOとしてはかなりの後発ということもあり、それほど高いシェアを獲得しているわけではない。それ故、KDDIがMVNOとしても大手のインターネットサービスプロバイダー、ビッグローブ(東京・品川)を買収したときと比べればインパクトは小さいようにも見える。

 だがLINEモバイルには、日本で高い知名度を持つメッセンジャーアプリ「LINE」のブランドを活用できる強みがある。携帯事業会社として単独で上場するために契約数を増やしたいソフトバンクにとって、そのメリットは大きいだろう。LINEモバイルが今後、LINEのブランド力とソフトバンクの資金力を生かして契約数の拡大を図るのは間違いない。

高い知名度とカウントフリーで注目されたが……

 LINEモバイルがサービスを開始してから2年に満たないにもかかわらず、なぜLINEはMVNO事業を手放すことにしたのだろうか。

 LINEがMVNOへの参入を発表したのは2016年3月のこと。その時点では既にいくつものMVNOが市場に参入していたが、LINEが手掛けるMVNO事業は、そのポテンシャルの高さで注目されていた。

 まずLINEは、若者に人気の高いメッセンジャーアプリを持っている。資金力に乏しく、強いブランドを持たない企業が多いMVNOの中にあって、LINEが持つブランド力は非常に大きい。また、「LINE」をはじめとする特定のネットサービスを利用した場合に通信量が消費されない「カウントフリー」も話題になった。さらに2017年3月からは、インターネット販売のみに絞っていた販路を拡大すべく、家電量販店に専用のコーナーを設けるなどして実店舗販売を強化。加えて有名女優を起用したテレビCMを展開するなど、契約獲得に向けた体制の確立も着実に進めていた。

LINEは参入を表明した当初より、「LINE」アプリなどを利用した場合はデータ通信量が消費されない「カウントフリー」を打ち出していた。写真は2016年3月24日のLINE CONFERENCE TOKYO 2016より
LINEは参入を表明した当初より、「LINE」アプリなどを利用した場合はデータ通信量が消費されない「カウントフリー」を打ち出していた。写真は2016年3月24日のLINE CONFERENCE TOKYO 2016より
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LINEは2017年から女優ののんさん(右)を起用し、積極的なプロモーションを展開してきた。左はLINEモバイルの嘉戸彩乃社長。写真は2017年3月14日のLINEモバイル記者発表会より
LINEは2017年から女優ののんさん(右)を起用し、積極的なプロモーションを展開してきた。左はLINEモバイルの嘉戸彩乃社長。写真は2017年3月14日のLINEモバイル記者発表会より
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MVNO事業からの早期撤退はLINEらしい判断

 高いポテンシャルを持つLINEモバイルだったが、後発だけに顧客獲得は難しかったようだ。同社は契約者数を公表していないが、楽天の「楽天モバイル」やケイ・オプティコム(大阪市中央区)の「mineo」など、100万人前後の契約者を獲得しているMVNOには及ばないことが各種調査から見えてくる。

 また、2017年9月にソフトバンクの「ギガモンスター」が20GBの大容量通信を従来より大幅に安く提供したことで、大手キャリア同士による大容量サービス合戦が急加速。“使い放題”に近いサービスの登場によって、LINEモバイルの特徴の1つである「カウントフリー」の優位性が失われてしまった。

 現在のMVNO市場では、競争の激化を受けて破綻・撤退するMVNOも出始めている。LINEとしては、競争が激しくなる一方の市場で勝ち残るのは難しいとみて、今回の判断に至ったと考えられる。

 LINEはもともと経営判断の速い企業であり、電子商取引アプリの「LINE MALL」やフードデリバリーの「LINE WOW」に代表されるように、自社展開していたサービスで大きな成果が出ないものは早々に終了し、他社との協業など、別の道を模索してきた。それだけに、サービス開始から2年足らずでMVNO事業から手を引いたのも、LINEらしい対応といえそうだ。

現在はソフトバンクが、毎月50GBの通信量を提供する「ウルトラギガモンスター」を開始するなど、大手キャリアの大容量化が進んだことで「カウントフリー」のメリットは薄れた。写真は1月15日のソフトバンク新サービスに関する記者発表会より
現在はソフトバンクが、毎月50GBの通信量を提供する「ウルトラギガモンスター」を開始するなど、大手キャリアの大容量化が進んだことで「カウントフリー」のメリットは薄れた。写真は1月15日のソフトバンク新サービスに関する記者発表会より
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