NTTドコモは1月17日、スマートフォンを活用した新しい決済サービス「d払い」を4月より提供開始すると発表した。非クレジットカード利用者の決済需要を取り込むとともにキャッシュレス化を推進する狙いがあるようだが、どこまで普及するのだろうか。

スマートフォンとバーコードを利用する電子決済

 通信事業の伸び悩みから、コンテンツ配信や金融・決済サービスといったスマートライフ事業に力を入れ始めたNTTドコモ。中でもクレジットカードの「dカード」に代表される金融・決済サービスは、ドコモの収益を支える柱の1つとなっている。

 1月17日、同社はその金融・決済サービスの新サービスとして「d払い」を発表した。ドコモショップの店頭では、以前から先述の「dカード」のほか、FeliCa(非接触方式ICカード)の「iD」による決済を提供しているが、d払いはそれらとは異なる新しい決済手段となっている。

 d払いは、スマートフォンとバーコードを用いた決済手段だ。利用する際は専用のアプリでバーコードを表示し、それを店頭で読み取ることで決済する仕組みとなっている。表示されるコードはバーコードと2次元コードの2種類があり、読み取る端末によっていずれか一方が用いられるとのこと。

「d払い」では、専用アプリを使ってスマートフォンに表示したバーコードを店頭で読み取ることで決済する。写真は1月17日のNTTドコモ”新決済サービス”記者説明会より
「d払い」では、専用アプリを使ってスマートフォンに表示したバーコードを店頭で読み取ることで決済する。写真は1月17日のNTTドコモ”新決済サービス”記者説明会より
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 d払いの特徴は、店頭で読み取った金額が毎月の携帯電話料金と合算される、つまりキャリア決済が使えることだ。利用できるのはドコモユーザーに限られるが、クレジットカードを持たない人にとってはありがたいサービスといえるだろう。なお、クレジットカードを登録すれば、ドコモユーザー以外でもd払いを利用できる。

 またドコモは、オンラインサービス用のキャリア決済として提供してきた「dケータイ払いプラス」もd払いに組み込み、オンラインでもオフラインでも利用できる決済サービスとしてアピールしていくようだ。

 新サービスのd払いは、ポイントサービスの「dポイント」にも対応している。dポイント加盟店でアプリ上にdポイントのバーコードを表示するとポイントが付与されるほか、d払い対応店舗での支払いにはdポイントが利用できる。ポイントの付与と決済が別の操作になるのはやや不便ながら、dポイントの活用の幅が広がるのは消費者にとってはメリットだろう。

バーコード決済がキャッシュレス化を推進する!?

 スマートフォンでバーコードを読み取るだけで済むバーコード決済のメリットは、店舗、消費者ともに導入ハードルが低いことにある。中国ではチェーン店から露店まで、ほとんどの店舗が「支付宝(アリペイ)」「微信支付(ウィーチャットペイ)」といったアプリを利用したバーコード決済に対応しており、それらのアプリは日常生活に欠かせない存在となりつつあるのだ。筆者も中国でバーコード決済を試してみたことがあるが、キャッシュレスで手軽に買い物ができるのは非常に便利だと感じた。

「d払い」の導入を予定しているローソンでのデモ。バーコードを読み取るだけなので導入や利用が手軽だ。写真は1月17日のNTTドコモ”新決済サービス”記者説明会より
「d払い」の導入を予定しているローソンでのデモ。バーコードを読み取るだけなので導入や利用が手軽だ。写真は1月17日のNTTドコモ”新決済サービス”記者説明会より
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 その中国では近年、バーコード決済の普及に伴って、キャッシュレス化が急速に進行している。キャッシュレス化が進むと、決済時間の短縮や店舗の売り上げ計算の短縮が図れることに加え、決済履歴をマーケティングなどに利用できるようになるといわれており、日本でも国を挙げてキャッシュレス決済を推進している。

 ところが日本は他国と比べて現金の信頼性が高く、逆にクレジットカードの利用に抵抗がある人も少なからずいるため、キャッシュレス化がなかなか進まないという状況にある。そこで、中国で爆発的に普及したバーコード決済が、日本でもキャッシュレス化推進の切り札になり得るとして注目されているわけだ。ネットサービス大手の楽天やLINEなどは、既に2次元コードを用いた決済サービスを提供している。

日本ではキャッシュレス決済の普及が進まないことから、中国で爆発的に普及したバーコード決済が注目されている。写真は1月17日のNTTドコモ”新決済サービス”記者説明会より
日本ではキャッシュレス決済の普及が進まないことから、中国で爆発的に普及したバーコード決済が注目されている。写真は1月17日のNTTドコモ”新決済サービス”記者説明会より
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 NTTドコモがd払いの提供を始めたのは、そうした流れに乗ったといえる。ちなみに支付宝や微信支付には、ユーザー間で送金し合う仕組みがあり、それを店舗での決済に応用したことが、利用を拡大する一因となった。d払いは現状、個人間送金には対応していないが、導入自体は検討されているようだ。

d払い導入のハードルは決済手数料

 d払いが、キャリア決済を中心に据えている点からは、クレジットカードを使っていない人たちに、より利用しやすい決済手段を提供することで決済事業を強化したいというNTTドコモの思惑が見えてくる。とはいえ、そのサービス内容を見ると、導入する店舗側と利用する消費者側それぞれに課題があり、中国のように爆発的に普及するとは考えにくいというのが正直なところだ。

 店舗側の課題は決済手数料だ。d払いはクレジットカードと同様、たとえ少額の決済でもあっても一定の手数料が課される。ドコモはあくまで決済手数料をビジネスの中心に据えるとしているのだ。しかし、実は支付宝や微信支付は、一定額を超える決済には手数料がかかるものの、少額決済の手数料は基本的に無料。決済手数料がかからないことこそが、中小の店舗にまでバーコード決済を普及させた大きな要因なのだ。

 d払いの導入を予定している企業の1つ、コンビニエンスストア大手ローソンの執行役員 マーケティング本部長である野辺一也氏は、「現金決済ではレジ通過に時間がかかるために行列ができる。その行列を見て購入を諦める人が出れば機会損失につながる。また紙幣を硬貨に両替する作業はオーナーの負担になるし、防犯上リスクもあるなどデメリットが多い」と話し、決済手数料がかかってもなお、キャッシュレス化を進めるメリットは大きいとしている。

 一方、売り上げを最大化したい個人経営の小規模店舗などは、決済手数料を嫌ってクレジットカードや電子マネーの導入を控える傾向がある。専用のPOSレジに代わってタブレットを導入するなど、「d払い」に対応するハード面の環境整備は進められているようだが、ドコモには決済手数料を上回るメリットを生み出せるというd払いの実績づくりが強く求められることになるだろう。

中小規模の店舗でも導入しやすいよう、タブレットで「d払い」に対応する仕組みの構築には力を入れているが、少額決済でも手数料を取ることが導入のハードルとなる可能性は高い。写真は1月17日のNTTドコモ”新決済サービス”記者説明会より
中小規模の店舗でも導入しやすいよう、タブレットで「d払い」に対応する仕組みの構築には力を入れているが、少額決済でも手数料を取ることが導入のハードルとなる可能性は高い。写真は1月17日のNTTドコモ”新決済サービス”記者説明会より
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 消費者側の課題とは、そもそも提供されている決済手段が多すぎることだ。先に触れた通り、ドコモだけでも大きく分けてFeliCa、クレジットカード、そしてバーコードと3つの決済手段が存在している。他社のサービスも含めるとさらに決済手段が増えるわけで、消費者側がそれらすべてを把握し、使い分けるのは至難の業だろう。選択肢が多いことはメリットである半面、複雑な印象を与え、消費者が「面倒だから現金でいいや」と判断してしまう可能性もある。

 この点について、ドコモのスマートライフビジネス本部 執行役員 プラットフォーム推進部長である前田義晃氏は「(消費者が)混乱しないよう、顧客とコミュニケーションを図る必要がある。顧客の多様性をうまく吸収できるラインアップをそろえていきたい」と答えている。「d払い」は主としてクレジットカードを利用していないユーザーを対象にした決済サービスという位置付けだが、そうしたメッセージをうまく消費者に伝えられなければ、いたずらに混乱を招くことになりかねない。それだけに、新サービスの訴求についても慎重さが求められることになりそうだ。