日経トレンディが主催する“消費者目線で選ぶ新米味覚審査会”が「米のヒット甲子園2015」。その審査会が11月9日にパレスホテル東京で開かれた。2014年度の特A米10銘柄を専門家7人が食べ比べ、「2015年、今一番食べてほしいお米」を選出。見事、北海道の「ふっくりんこ」が受賞した。審査員が熱い議論を交わした白熱の審査会の様子をレポートする。

今年で2回目となる米のヒット甲子園

今年も白熱した議論が交わされた「米のヒット甲子園」。審査員は真剣にお米を食べ比べた
今年も白熱した議論が交わされた「米のヒット甲子園」。審査員は真剣にお米を食べ比べた
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 お米の炊き加減は、好みが分かれるところ。硬さでいえば、1粒1粒、粒をしっかり感じられる「しっかり派」、粒感より一体感を好む「柔らか派」がおり、味わいにも「もっちり派」と「あっさり派」がいる。自分の好みを知っている人は、炊き方だけでなく銘柄や産地にもこだわり、食卓でその味を堪能していることだろう。とはいえ、お米に造詣がない方が、自分の好みのお米と出合うことはなかなか難しいものだ。

 新米の季節を迎え、自分好みのお米を探している方に参考にしてほしいのが「米のヒット甲子園」である。米のヒット甲子園は、味覚をランキングするのではなく、それぞれのお米の個性を知ってもらい、個性に合ったお米の食べ方を提案し、消費拡大を推進する狙いで始まった審査会。お米の素晴らしさを広めるのはもちろん、付加価値のあるお米作りに励む生産者を応援することも目的とし、2014年に第1回目を開催した。

 2回目となる米のヒット甲子園2015は、2014年度に「特A」を獲得した44銘柄の中から、主旨に賛同し出品に協力いただいた10銘柄を審査対象とした。ちなみに特Aとは、日本穀物検定協会が主な産地品種銘柄に対して実施する「米の食味ランキング」での最高位のこと。毎年2月に発表されている。

発表! 米のヒット甲子園が選んだ「今一番食べてほしいお米」~白熱の審査会をレポート(画像)
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品種の違う10銘柄がエントリー

 2015年11月9日に開催された米のヒット甲子園2015 味覚官能審査にエントリーしたのは、以下の10銘柄。うまく品種が分かれた格好だ。

北海道……ななつぼし
北海道……ふっくりんこ
北海道……ゆめぴりか
青 森……青天の霹靂
秋 田……あきたこまち
栃 木……なすひかり
岐 阜……コシヒカリ
鳥 取……きぬむすめ
島 根……つや姫
香 川……おいでまい

 昨年「米のヒット甲子園2014」から2年連続出場となったのは「あきたこまち」「きぬむすめ」「ななつぼし」「ゆめぴりか」の4銘柄。「ななつぼし」は昨年のヒット甲子園の受賞米である。「つや姫」「コシヒカリ」も昨年出場していたが、今年はそれぞれ産地が異なる。初エントリーは「おいでまい」「ふっくりんこ」「なすひかり」「青天の霹靂」の4品種。初参戦組では青森初の特A米として話題の「青天の霹靂」に注目したい。

【審査概要】
 審査は同時に10銘柄を食べ比べるのではなく、3グループに分け3~4銘柄ずつ行った。第1グループは「あきたこまち」「きぬむすめ」「ななつぼし」、第2グループは「おいでまい」「ふっくりんこ」「コシヒカリ」、第3グループは「ゆめぴりか」「なすひかり」「つや姫」「青天の霹靂」。2015年度産の新潟県産「コシヒカリ」を基準米とし、品種名を伏せた状態で7人の審査委員に「硬さ」と「粘り」を評価してもらった。

 審査時間は1グループあたり10分間。基準米を「5」とし、10段階で硬さを横軸、粘り(もっちり/あっさり)を縦軸にとり、「硬くてあっさり」は親子丼に合うお米、「硬くてもっちり」はカレーに合うお米、「柔らかくてあっさり」はおにぎりに合うお米、「柔らかくてもっちり」はメンチカツに合うとして、4つに分類した。

 お米によって水分量が違い、炊くときの水加減、火加減によって炊きあがりが異なる。産地から玄米を取り寄せ、公平を期すため精米、洗米、炊飯を同条件で行った。

 洗米は、研ぐ人によるばらつきを抑えるため、洗米機を使用した。あらかじめ決めた速度で同回数ハンドルを回し、3回洗米、4回すすぎを行った。洗米時に使用する水の量と種類(浄水/水道水)まで統一した。
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洗米は洗米機を使用。水の量も正確に計った
 炊くときの水加減は、品種により洗米時の吸水量が違うことを考慮し、事前テストにより加水量を660gに設定。洗米前に重量を計り、洗米後にはプラス660gになるよう加水し、条件をそろえた。

 炊飯に使用したのは、象印マホービンの最新圧力IH炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜」。グループごとに洗米、炊飯のタイミングを合わせ、「白米」「ふつう」モードで約60分かけて炊きあげ、炊飯が終わったらしゃもじを立て4等分に切り、鍋肌に沿ってほぐしてからおひつに移した。布巾をかけ20分放熱してから審査した。
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「白米」「ふつう」モードで約60分かけて炊きあげた。炊飯には象印マホービンの最新圧力IH炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜」を使用した

10銘柄は「どれも美味しい」と高評価

 今回の審査委員は下記の7人。いずれもお米に造詣の深い方ばかりだ。

川崎恭雄氏(審査委員長:神戸の米穀店「五ツ星お米マイスター いづよね」代表取締役)
阿藤快氏(タレント)
笹岡隆次氏(「恵比寿 笹岡」主人)
内山英仁氏(「銀座 うち山」主人)
松田美智子氏(料理研究家)
フォーリンデブ はっしー氏(グルメブロガー)
渡辺和博(日経BPヒット総合研究所上席研究員)

 審査が始まると、会場は一気に緊迫した空気に包まれた。審査委員の誰ひとり言葉を発せず、真剣な面持ちで香りを嗅ぎ、何度も味を確かめていた。

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炊き上がったお米は、グループごとに皿に盛られ、審査員に供された
川崎恭雄氏
川崎恭雄氏
阿藤快氏
阿藤快氏
笹岡隆次氏
笹岡隆次氏
内山英仁氏
内山英仁氏
松田美智子氏
松田美智子氏
フォーリンデブ はっしー氏
フォーリンデブ はっしー氏
渡辺和博
渡辺和博

 第3グループまで審査が終了し、審査結果を集計している間、審査委員からは「どれも美味しかった」「差がわかりづらかった」「食べている間にも味が変わった」「何と一緒に食べるかで選ぶお米が変わる」といった声が上がり、審査の難しさを感じさせた。

 各審査委員の付けた点の平均値を取り、「硬さ」を横軸、「粘り」を縦軸に4分類した(審査概要を参照)。「硬さ」、「粘り」ともに基準米を5として評価すると「硬さ」は3~7、「粘り」は3~6の間に集中した。

 それでは、各銘柄ごとの主なコメントを紹介しよう。

ななつぼし(北海道)
「柔らかく、甘みが強い」(松田氏)、「基準米が好き。ななつぼしは、硬さともっちり感が基準米に近かった」(内山氏)
ふっくりんこ(北海道)
「コシヒカリと好対称をなす、まとまった一体感、しっとり感がある」(内山氏)、「お店で出すならあきたこまちかゆめぴりか。個人的に一番食べたいのはふっくりんこ」(笹岡氏)
ゆめぴりか(北海道)
「むっちりした食感と甘みがある。おかずなしで塩むすびで食べたい」(はっしー氏)、「もっちり感があり、きっちり噛めるバランスの良さ」(松田氏)
青天の霹靂(青森)
「バランスが良い分、味がないようにも感じた」(松田氏)、「粒が長く、しっかりした感じ」(笹岡氏)
あきたこまち(秋田)
「細かいことは抜きにして、食べて一番おいしいと思ったのがこれ」(阿藤氏)、「同じ品種でも産地によって味が違う。今回のあきたこまちはとびきり美味しい」(川崎氏)
なすひかり(栃木)
「香りも味もボリュームがある」(笹岡氏)、「好きなタイプだったので完食した」(川崎氏)
コシヒカリ(岐阜)
「炊きたても冷めても美味しく、ポテンシャルが高い」(はっしー氏)、「1粒1粒味わうならコシヒカリ」(内山氏)
きぬむすめ(鳥取)
「見た目が良く、食べたときのもっちり感も美味しい」(笹岡氏)、「ぬめっとしたもっちり感。その割にはしっとりしており、おもしろい」(川崎氏)
つや姫(島根)
「基準米に近い、しっかりもっちりした感じ」(川崎氏)、「ちょっとあっさりしていると感じた」(笹岡氏)
おいでまい(香川)
「10品種の中ではキャラクターは薄い。味も薄めか」(笹岡氏)、「しっかりもっちりしているが、印象はやや薄め」(川崎氏)

10強の中から1品種選ぶ難しさ

 甲乙つけるのではなく、基準米と比べて食味を評価してもらったが、同じ銘柄であっても審査員によって評価が正反対に分かれるものもあった。ご飯単体で食べるのか、何のおかずに合わせるのか、炊きたてなのかお弁当にするのか、条件によって選ぶお米は異なるため、審査員各々に1位と2位のお米を挙げてもらい、品種を絞り込むことになった。

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川崎恭雄氏
1位「あきたこまち」、2位「ふっくりんこ」「つや姫」
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「あきたこまち」は香りが一番良かった。甘みもあり、しっかりもっちり。次に香りが好きなのは「ふっくりんこ」。基準米に近い感じがした「つや姫」も好み。
阿藤快氏
1位「あきたこまち」、2位「ゆめぴりか」
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「あきたこまち」はふっくらしてつやがあり、味もなかなかのもの。完食してしまった。「あきたこまち」に近かったのが「ゆめぴりか」。柔らかくつやがあり、噛むとなんともいえない甘みが出た。
笹岡隆次氏
1位「ふっくりんこ」、2位「あきたこまち」「なすひかり」
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「ふっくりんこ」の香りが好き。甘みと後味に残る旨味もいい。朝食に食べたいご飯。「あきたこもち」も甘い香りがした。硬さともっちり感のバランスが良い。「なすひかり」は香りにも味にもボリュームがあった。
内山英仁氏
1位「ふっくりんこ」、2位「ゆめぴりか」
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何と一緒に食べるかで選ぶお米は変わる。ご飯を単体で食べるとしたら、「ふっくりんこ」のまとまった一体感、しっとり感はなかなかのもの。「ゆめぴりか」は咀嚼回数が少なくても舌になじむところが気に入った。
松田美智子氏
1位「ふっくりんこ」、2位「あきたこまち」「ゆめぴりか」
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硬めで弾力のあるお米が好き。私の場合、おかずと一緒に食べるという前提があるので、甘さは求めていない。「ふっくりんこ」は適度な硬さと弾力があり、おかずの邪魔をしない味。「あきたこまち」も自分の好みに近い、噛めるお米だった。「ゆめぴりか」はもっちり感がありつつ、きっちり噛めるバランスの良さを評価した。
はっしー氏
1位「ゆめぴりか」、2位「コシヒカリ」
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どちらを1位にするか悩んだ。今回の「コシヒカリ」は、もちもちした粘りがあった。冷めると粘りが抑えられ、甘みが増した。「ゆめぴりか」の方が、後からぐっとくる甘みが強いので1位にした。粘りが強すぎず、キレもあり、ちょうどいいむっちり感。
渡辺和博
1位「コシヒカリ」2位「ゆめぴりか」
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それぞれ違った美味しさがあった。一番好きなのは「コシヒカリ」。次点は「ゆめぴりか」。

三つ巴の2回戦を制した「ふっくりんこ」

 審査委員に1位と2位を聞いた結果、名前が多く挙がったのが「あきたこまち」「ふっくりんこ」「ゆめぴりか」だった。もう一度この3銘柄を食べ比べ、「米のヒット甲子園2015~食べてほしいお米」を決めることになった。

 最初の審査時より冷めた状態での2回戦は、炊きたてとは違った味わいがあり、お弁当にしたときにどうかという視点も加わった。

「あきたこまち」「ふっくりんこ」「ゆめぴりか」の3銘柄による最終審査が急きょ行われた
「あきたこまち」「ふっくりんこ」「ゆめぴりか」の3銘柄による最終審査が急きょ行われた
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 さまざまな意見が出たが、話し合いの末、最終的に全会一致で「ふっくりんこ」が「2015年、今一番食べてほしいお米」に選出された。その理由は、香りの良さで、特に炊きたての香りと冷めてからの香り、2つの香りを楽しめるところが高い評価を得た。加えて、冷めても柔らかいところ。ただ柔らかいのではなく、適度なもっちり感もあり、噛める柔らかさであることも高評価だった。

 「ふっくりんこ」の産地は、昨年優勝した「ななつぼし」と同じ北海道。「米のヒット甲子園2015」は、北海道の二連覇で幕を閉じた。

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(文/辛智恵、写真/中村宏)

米のヒット甲子園の審査員を務めていただきました阿藤快氏が亡くなりました。大きな声で「どのお米もおいしい!」と笑顔で試食していた姿が忘れられません。審査会の議論が煮詰まると、真っ先に意見を述べて、場を盛り上げてくれた阿藤氏の心遣いにも本当に感謝しています。ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。