既存のゲームの大半はVRに適していない?

――PlayStation VRの開発経緯を教えてください。

吉田氏:ゲームはプレーヤーの没入感を重視して作られてきたコンテンツなので、その究極形は、プレーヤーをゲームの中に入れてしまうことではないかと常々思っていました。そして、それを実現できるのはVRではないかという考えも、以前から持っていました。

 そんな折、2010年に「PlayStation 3」用のモーションコントローラー「PlayStation Move」(PS Move)を発売したのですが、一部の開発スタッフが、映像用のHMDにPS Moveをくっつけて、頭の動きに応じて映像が変化する、簡易VRシステムを作って楽しんでいたのです。しかもそうした動きが、日本だけでなく海外の複数のスタジオからも同時多発的に発生しました。そこで2011年に社内でVRシステムを開発するR&Dのチームを作り、「PlayStation 4」(PS4)と同時進行で開発することにしました。

 ですから、実はPS4の関連機器には、PlayStation VRでの利用を意識した仕組みを最初から仕込んでいたりします。PS4のワイヤレスコントローラー「DUALSHOCK 4」にLEDを付けていたり、「PlayStation Camera」にカメラセンサーを2つ付けていたりするのは、実はPlayStation VRでそれらを使い、位置をトラッキングすることを想定していたからなのです。

PlayStation VRは2016年の発売。9月に開催された東京ゲームショウでも公開され、長蛇の列ができた
PlayStation VRは2016年の発売。9月に開催された東京ゲームショウでも公開され、長蛇の列ができた
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――開発を始めてから「PlayStation VR」を発表するまでの間に、先行して「Oculus Rift」が発表されました。焦りなどはなかったのでしょうか?

吉田氏:実は、Oculus社が設立される前からメンバーたちを知っており、意見交換もしていました。「HTC Vive」なども含め、確かに競争している部分もあるのですが、今はどちらかというと、よいVRの体験を届けるため、刺激し合いながら切磋琢磨している状況だと思っています。

 最近、インディーズのデベロッパーを中心に多くのVR用ゲームが作られるようになってきましたが、そうした盛り上がりが起きているのも、複数のプラットフォームに向けたVRシステムが存在し、提供の幅が広がっている安心感があるからこそではないでしょうか。

――そうした中で、コンソールゲーム機で展開するPlayStation VRの強みはどういった所にあると考えていますか?

吉田氏:ハードルの低さです。パソコンでVRを快適に楽しむには、高額なゲーミングPCを1からそろえる必要があります。ですがPS4は既に多くのユーザーが持っているので、VRを体験するのにPlayStation VRを買い足すだけで済みます。それだけにPlayStation VRは、既にPS4を使っているゲームが好きな人たちが、当初はけん引する形になるのではないかと考えています。

SCE吉田氏が見る、「PlayStation VR」でゲームの先に見据えるVRの未来(画像)
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――VRに適したゲームはどのようなものだと感じていますか。

吉田氏:既存のゲームで適しているのはレースゲームくらいですね。FPS(一人称視点シューティングゲーム)なども、キャラクターの動きが激しいため、あまり向いていません。体の動きとのギャップが発生して、気持ち悪くなりやすいのです。現在あるほとんどのゲームは、VRに適していないのではないでしょうか。

 既存のゲームの要素やキャラクターなどは使えるかもしれませんが、VR向けのものを新たに考えた方がよいと感じています。その世界に入った感覚でどういった遊び方を提供するのかなど、VRでの提供を前提にゲームデザインを考える必要があります。

――VRでゲームをプレーするためのインターフェースについてはどのように考えていますか?

吉田氏:アプリ次第ではないでしょうか。VRヘッドセットを装着すれば頭の動きのトラッキングが正確にできます。頭だけで操作するのが最も自然かもしれません。もちろん手を使ったインタラクティブな操作ならばPS Moveのようなものがありますし、それを活用したゲームも増えていくでしょう。

 「DUALSHOCK 4」も位置や傾きを検出できますから、VRの世界とつながりを持った活用ができるかと思います。ユーザーが持っているのはあくまでコントローラーです。ただVRの世界では、別のものに置き換えて表現することで、より臨場感を出すことができるかもしれません。その点をより追求する形で、ゲームごとに専用のコントローラーが付属することも、将来的にはあり得るのではないでしょうか。