大分県日田市に拠点を構え、地域活性や商業、工業など様々な分野で事業戦略提案、その実現を手掛けるブンボ社長の江副氏。「TRENDY EXPO」の登壇を前に、地方の産業振興にとって必要なことは何か聞いた。

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江副直樹(えぞえ・なおき)氏
ブンボ社長。1956年1月1日佐賀生まれ。西南学院大学法学部中退後、米穀店店員、工場作業員、釣り雑誌編集者、コピーライター等を経て、商品開発と広報計画を柱とする事業プロデュースの会社、ブンボ設立。農業、商業、工業、観光、地域活性など、多分野の多様なクライアントに対する、コンセプト重視の事業戦略提案とその実現が主な仕事。大阪芸術大学客員教授。福岡デザイン専門学校非常勤講師。大分県日田市在住。

――コピーライターから、地方企業の商品展開プロデュース活動へ。そのきっかけは何でしょうか。

江副直樹氏(以下、江副:) コピーライターは、商品が出来上がってからの仕事です。「この商品があるから、売れるようなコピーを考えて」というような注文が来ます。この仕事をしていて、「どんなコピーをつけても売れそうにないもの」というのがあって、それを解決するにはどうすればいいのだろうと考えたときに、商品開発の段階から関われば、売れるものが作れるし、いいコピーもつけられるという結論になりました。それが、「ものづくり」に関わるきっかけです。

 ものづくりに関わり、商品が売れるようにするためには、3つの要素が大切だと考えています。まず、商品そのものものが重要です。そして、特徴を知ってもらうための情報提供、情報提供された人が購入したくなるようなデザインもしっかり考える必要があります。この方法を当てはめると、地方の企業が作る商品の販売促進や、その地域のものづくり産業の活性化にもつながるようになったのです。

地域でなく、まずは人から

――地方産品を「売れるようにする」秘訣は何でしょう。

江副: 地方創生といって、地域の製品を売れるようにしよう、そして雇用を生み出そう、そういう活動は各地でたくさん展開されています。ここで一番気を付けたいのは、一度にすべてを解決しようとしないことです。地域全体を活性化し、商品を売れるようにするとなると、多くの企業が関わることになります。なにかプランを考えて実行しようとしても、全員に理解してもらい、動いてもらわなくてはなりません。そのために時間がかかってしまう。これが、地域活性化が失敗する最大の要因だと思っています。

 私の場合、「売れそうな商品」を見つけ出すことから始めています。商品自体には特徴があるのだけれど、それを売る仕組みができていない、デザインなど買ってもらうための準備ができていない。こういう商品を持っている企業を見つけ、その経営者とじっくり話し合うのです。

――どのようなことを話し合うのでしょう

江副: 売れる商品を生み出すには、先ほど挙げたように「商品」「情報」「空間デザイン」という3つの要素を考える必要があります。商品がどのような特徴があるのかを調べ、理解します。その結果、何を特徴として売り出せばいいか、つまり情報発信のネタは何なのかを考え、それを世の中に広めて、買ってもらうようにするにはどういうシナリオ、空間のデザインを作ればいいか作戦を立てるというわけです。私は、出会った地方企業の経営者とまず、商品がどのような特徴を持っていて、どう情報発信すればいいのか考えることから始めています。

 例えば、大分県竹田市の「竹田食育ツーリズム」という活動のなかで関わった「双美おばあちゃんの味噌玉」という商品があります。味噌が玉状に練りこんであり、お湯に入れるだけで味噌汁になるという、いわゆるインスタント味噌汁です。私が最初に見かけたときには、これを12個セット、乾燥ネギを一袋付けて500円で売っていましたが、売れ行きはいまひとつで、利益も出ていませんでした。

 手作りの味噌玉は、手軽に飲める家庭の味として売れる可能性を持っています。土産物としても、手ごろな価格ですし。ただ、なぜ12個もあるのか、付属の乾燥ネギは12個目を食べるときにも使えるのかなど、疑問点がたくさんありました。それらの点について、経営者と話をしたのです。

 その結果、手軽な土産物としては、半分の量、つまり6個が適切で、どの味噌玉を食べるときにもネギ入りになるよう、味噌玉自体にネギを練りこむ製品開発をしました。そして、価格は据え置き。6個セットで500円でも「買いたい」と思わせるように、デザイナーと相談してパッケージを新しくしました。

 地方創生の大きなテーマの一つに雇用創出があります。雇用を生み出すには、地域の産業が活性化しなくてはなりません。味噌玉のような特徴のある商品を磨くことで、「商売繁盛」している地元の産業を増やせば、雇用も生まれてきます。この方法は、今では「竹田方式」と呼ばれ、全国に広がっています。

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「双美おばあちゃんの味噌玉」

情報発信はブログから始める

――次は、情報発信ですね。

江副: はい。地方の小さな企業に、大々的に広告展開するような予算はありません。まずは、自社のホームページを作って、といいたいところですが、それも結構難しい。ホームページを作っても運営できない、そこで物を売れるようにするには仕組みが必要、というような課題が多いからです。そこで、まずは経営者が自分のブログを立ち上げる、ここから始めるようにしています。ブログであれば、情報の更新が手軽にできますし、経営者個人のものとして、今後の商品展開に可能性がある人と個人的につながることもできます。

 情報発信では、「見つけてもらう」ということも大事にしています。大規模な広告展開をしなくても、製品がしっかりしていて、「売れる」ためのデザインが出来上がっていれば、経営者個人のブログ程度のものであっても、その製品を見つけてくれる人が出てきます。百貨店やセレクトショップのバイヤーさんは、「特徴があって、利益が出せる商品」をいつも追いかけています。こういった人たちの目に留まるようになれば、少しずつ販路を拡大できるようになります。

 こういった活動の成功例として挙げられるのが、福岡県みやま市にある花火メーカー、筒井時正玩具花火製造所です。老舗の花火メーカーが作る国産の線香花火を、「特別な線香花火」に仕立て、高級感のある「買いたくなるパッケージ」に入れて、情報発信しました。海外製の廉価製品と比べると、花火の時間も長く、高級感があります。ただ、それでも「線香花火」に過ぎないので、高級な木製の箱に入れ、点火用の国産高級ろうそくをセットにして「売れるデザイン」を作りました。その結果、国産線香花火というだけではないブランド価値が出てきて、1万円という価格設定でもセレクトショップや百貨店からの引き合いが増えたのです。

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線香花火と和ろうそく、ろうそく立てをセットにした「花々」(1万円)

欲望を刺激、「点」だった活動が「面」に広がる

――1つの企業で、売れる製品を作ることに成功しました。これが地域の産業振興にどうつながるのでしょう。

江副: 地域の企業経営者の集まりで、商品を見直し、経営者が情報発信してみよう、売り方、パッケージのデザインなど、売れるようにする工夫を考えよう、少しコストをかけて前に進もう、という話をするのですが、最初の反応はとても冷ややかです。「そんなこと無理」「結局カネがかかるのか」など。しかし、何度か説明していくうちに、興味を持つ経営者が出てくるのです。先ほどの味噌玉のように。

 興味を持った経営者を、徹底的にサポートします。味噌玉の経営者は、パソコンの使い方すら知らないところから、ブログを自力で更新できるところまで上達しました。商品の見直しや、「売れそう」なパッケージデザインができてきて、そして結果として売れるようになる。こうなると、ほかの経営者も「売れるなら、やってみようか」という気持ちになるのです。経営者の欲望を刺激した、ということです。

 この連鎖が始まると、地域が徐々に活性化してきます。自社商品を売って利益を上げたいという気持ちは、どの経営者も持っていますから。こうやって、先頭を走る経営者を見つけ、その企業の商品を「売れる」ようにすることで、あとから続く企業を見つける。最初は1社という点でしかなかった活動が、地域の企業を巻き込む、つまり面での展開に成長するのです。最初から面を狙うのでは、こういう動きは作れません。

地元の人に見えてなかったものを見出す

――こういった活動は、地元の企業だけではできないことでしょうか

江副: できるかもしれません。ただ、私のような「外部の視点」が役に立つのも確かです。各地で地域産業の振興を進めようという人と話をすると、必ず、「ここには、何もなくて困っています」という意味のことをおっしゃいます。先ほどご紹介した味噌玉や線香花火の企業がある地域でも同じでした。しかし、みなさんと話をして、製品を拝見して、どうしてこの製品ができているのか、いままでどうやって売ってきたのかなどを議論すると、「売れる可能性がある」という製品に出会います。地元のみなさんは、「売れるわけがない」という気持ちでいますが、私のような外部の者の目には「特徴がある製品」に映るものがあるのです。

(構成/持田智也)