欲望を刺激、「点」だった活動が「面」に広がる

――1つの企業で、売れる製品を作ることに成功しました。これが地域の産業振興にどうつながるのでしょう。

江副: 地域の企業経営者の集まりで、商品を見直し、経営者が情報発信してみよう、売り方、パッケージのデザインなど、売れるようにする工夫を考えよう、少しコストをかけて前に進もう、という話をするのですが、最初の反応はとても冷ややかです。「そんなこと無理」「結局カネがかかるのか」など。しかし、何度か説明していくうちに、興味を持つ経営者が出てくるのです。先ほどの味噌玉のように。

 興味を持った経営者を、徹底的にサポートします。味噌玉の経営者は、パソコンの使い方すら知らないところから、ブログを自力で更新できるところまで上達しました。商品の見直しや、「売れそう」なパッケージデザインができてきて、そして結果として売れるようになる。こうなると、ほかの経営者も「売れるなら、やってみようか」という気持ちになるのです。経営者の欲望を刺激した、ということです。

 この連鎖が始まると、地域が徐々に活性化してきます。自社商品を売って利益を上げたいという気持ちは、どの経営者も持っていますから。こうやって、先頭を走る経営者を見つけ、その企業の商品を「売れる」ようにすることで、あとから続く企業を見つける。最初は1社という点でしかなかった活動が、地域の企業を巻き込む、つまり面での展開に成長するのです。最初から面を狙うのでは、こういう動きは作れません。

地元の人に見えてなかったものを見出す

――こういった活動は、地元の企業だけではできないことでしょうか

江副: できるかもしれません。ただ、私のような「外部の視点」が役に立つのも確かです。各地で地域産業の振興を進めようという人と話をすると、必ず、「ここには、何もなくて困っています」という意味のことをおっしゃいます。先ほどご紹介した味噌玉や線香花火の企業がある地域でも同じでした。しかし、みなさんと話をして、製品を拝見して、どうしてこの製品ができているのか、いままでどうやって売ってきたのかなどを議論すると、「売れる可能性がある」という製品に出会います。地元のみなさんは、「売れるわけがない」という気持ちでいますが、私のような外部の者の目には「特徴がある製品」に映るものがあるのです。

(構成/持田智也)