「攻殻機動隊」は時代とシンクロする?

――VR版の制作には苦労していますか?

石川: 実はうまいアニメーターは平面で立体を描けるんです。アニメーションは漫画と違って動かさないといけません。特に最近は、キャラクターを空間で動かせるように、平面上で立体や空間をとらえる技術が大事です。そのまま3Dに置き換えても大丈夫なような顔のパーツ、向き、輪郭、形などを平面で描ける人が望ましいんです。そういう力のあるアニメーターが自社内に育ってきました。

 今、世界のアニメーションの潮流は2Dよりも3Dのほうが圧倒的に多いんです。そこに対して、2Dで描き出す力があれば3Dが持つ力とも付き合えるのではと考え、この流れでVR版の製作を決定しました。技術的な交流は極めて大事です。これこそが「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」の狙いです。

――東京ゲームショウでもVRは話題でした。

石川: このVR版は、ある映画祭で攻殻機動隊のVR版の企画を温めている人と偶然に出会ったのがきっかけです。その後、I.Gのプロデューサーと彼らを引き合わせて企画がスタートしましたが、それが今年の春でして、その時点で東京ゲームショウ2015への出展までに半年もありませんでした。これは制作期間としては非常に短い。しかし、クオリティはかなり高いレベルに仕上がったと思っています。TRENDY EXPO TOKYOではさらに進んだティザーを披露できるようにがんばっています。

 世の中には、タイミングさえ合えば売れるからクオリティは低くてもいいという人もいます。ビジネスと現場が離れている会社はそうなりやすい。しかし、I.Gはそうではありません。クオリティの高さに対する信頼が財産ですから、そこは絶対に裏切ることはできません。

 それがあって、ギリギリのところで、最短時間で、みんなを驚かせるクオリティで、今年のゲームショウにティザー映像を間に合わせることができました。関わったクリエーターの方々には本当に苦労をかけましたが、これが来年公開だとタイミングとして遅いだろうと思うんです。VRアプリをリリースするのも年末か来年早いうちにしたいと思っています。

 今、“VR元年”なんて言われていますが、最初の「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」が公開された1995年はWindows 95が出た年で、“インターネット元年”や“ネットワーク元年”なんて言われていたんですね。「攻殻機動隊」って、そういうタイミングや時代の流れに不思議と合うんです。なぜかシンクロするんですよ。

VR版「攻殻機動隊」でビジネスモデルだけでなく人材も育てたい~プロクダション I.G 石川光久氏(画像)
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