世界戦略を描ける人材が育っている

――シリーズを長く続けていくうえで、心がけていることはありますか?

VR版「攻殻機動隊」でビジネスモデルだけでなく人材も育てたい~プロクダション I.G 石川光久氏(画像)
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石川: (DVDやBDの販売などで収入を増やすといった)ビジネス面も大事ですが、まずは“作品ありき”という考えを徹底することです。プロダクション I.G(以下、I.G)は作品を制作する現場ですから、まず作品を世に出すための戦力を整えること、自信をもって作品を送り出せる根拠になるような、監督を含め充実したスタッフをそろえることが大切ですね。

 お金が集まったからいい作品が作れるというものではありません。現場を大事にする、人を大事にするという姿勢があって初めていい作品が作れると思いますし、それができるのがI.Gの良さのひとつだと思っています。ビジネス面の視点でいうと(予算とクオリティのバランスなどが)大変になることもありますが、現場と人は重視している部分です。

―― ビジネス面では、アニメの収益の柱が、DVDやBDのセルからネットの動画配信などに変化してきているように思います。

石川: 変化は感じます。DVDやBDは作品を何回も見たい人に適したメディアで、買う人の所有欲を満たすアイテムでもあります。ですが、売り上げは年々厳しくなっていて、その代わりにネット配信が伸びているのは事実です。高画質を売りにしている動画配信なのにスマホの小さい画面で見るのはいかがなものかと思ったりもしますが、スマホで見たいという要望は強く感じますし、そこにチャンスもあると思います。

―― 次回はスマホのアプリでVRに挑戦ということになりますが。

 スマホの小さい画面で視聴するとなると、画面全体から受ける美しさの印象はより大事になるでしょう。ゲームの世界はアニメ業界よりずっと資金力があり、その圧倒的クオリティのオープニングアニメなんかを見せられてしまうと、それにどう戦っていけばいいのか悩みます。

 しかし、アニメならではの物語や表現の中には、そうしたものとは違う訴求力、特に日本以上に海外で通用する力があると感じています。そして、そこに向かって今度はビジネス面も強化しないといけません。前述した通り、作品ありき・作り手ありきがI.Gの良さですが、作品を外に向かって仕掛けてプロデュースしていける人材も中から育ってこなければいけません。

 そうした人材がいないと作品を次の段階へ持ち上げていくことができません。国内戦略だけでなく、世界戦略を持ち、外貨を稼げる仕組みを作れる人間が社内から出てくる必要があります。アニメーションスタジオとしてただ作品を作るだけでは限界があり、だんだん疲弊していきます。

 今回、VRアプリの「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」を作るチャレンジができたのは、そういった仕掛けやプロデュースができる人材が出てきたからです。I.Gとして新しい段階に入ってきたかなと思います。

「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」<br>(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会<br>公式サイト:<a href="http://sign.site/koukaku_vr/"target=_blank">http://sign.site/koukaku_vr/</a>
「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」
(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
公式サイト:http://sign.site/koukaku_vr/
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