この記事は「日経トレンディ」2016年8月号(2016年7月4日発売)から転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります。

 車窓の景色を楽しみながら、特別な料理が食べられるレストラン列車。利用者の減少に苦しむローカル線に人を呼び込もうと、瞬く間に全国各地に広がっている。さらにその流れは大都市圏にも波及。4月に池袋駅、西武新宿駅から秩父方面に走り始めた「西武 旅するレストラン52席の至福」(西武鉄道)に続き、JR東日本がこの夏、首都圏での運行に踏み切る。神奈川県の小田原駅と静岡県の伊豆急下田駅とを結ぶ「伊豆クレイル」だ。

 まず、小田原駅発11時40分の往路区間では、車内でランチメニューを提供。伊豆産の食材を使ったボックスランチに、伊豆クラフトビール、コーヒーなどが付く。途中、海沿いの景色が良い区間で徐行するなどしながら、伊豆急下田駅まで約2時間30分かけてゆっくりと走る。

 折り返しは伊豆急下田駅発15時9分。こちらの復路区間はティータイムメニューとなり、軽食とスイーツがメイン。ウェルカムドリンクとしてスパークリングワインが提供される。小田原駅の到着は17時12分で、日帰り利用も可能だ。

JR東日本「伊豆クレイル」
運行区間/小田原駅-伊豆急下田駅
乗車時間/2時間26分(小田原駅発)、2時間3分(伊豆急下田駅発)
運行日/土・日曜、祝日
料金/(大人1人。税込み)/9000~1万400円(現地発着片道プラン)、1万5600~1万6600円(東京駅発着往復プラン)、3万700~6万3800円(東京駅発着宿泊付きプラン)

首都圏を走るレストラン列車にJR東日本が参戦(画像)
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1号車
1号車
目の前に相模灘が広がる海側のカウンター席。座面の幅はJR東日本の最上級クラス「グランクラス」よりも2cm広いという
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3号車
3号車
3~4人用のコンパートメント席も全室海側に面している
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小田原駅発のランチメニューは神奈川県平塚市のフランス料理店「アッシュ×エム」が調理。ビール付き
小田原駅発のランチメニューは神奈川県平塚市のフランス料理店「アッシュ×エム」が調理。ビール付き
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伊豆急下田駅発のティータイムメニューは静岡県河津町の「伊豆今井浜東急ホテル」が調理。ワイン付き
伊豆急下田駅発のティータイムメニューは静岡県河津町の「伊豆今井浜東急ホテル」が調理。ワイン付き
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料理は、有名フレンチシェフ・秋元さくら氏(左)が監修。事前に調理したものが積み込まれるため、出来たてが食べられるわけではない
料理は、有名フレンチシェフ・秋元さくら氏(左)が監修。事前に調理したものが積み込まれるため、出来たてが食べられるわけではない
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食事はレストラン列車としては標準的

 ツアー商品は、伊豆クレイルの片道利用だけの現地発着プランで9000円(税込み。以下同)から、東京駅発着で片道は「伊豆クレイル」、片道は特急列車を利用する日帰りプランで1万5600円から。片道1万~1万5000円の「52席の至福」と同程度の価格帯だ。

 首都圏で激突する2つのレストラン列車だが、一長一短がある。車窓は、東伊豆の海岸線を走る「伊豆クレイル」のほうが上。観光地としての知名度や充実度も、伊豆のほうが秩父よりも高い。一方、料理は、車内のオープンキッチンで盛り付けが行われる「52席の至福」のほうが本格的だ。「伊豆クレイル」は、フレンチレストランやホテルで調理してボックスに詰めたものとなる。食事はレストラン列車としては標準的だが、車窓に魅力を感じるなら選んでもいい。

記者の目
新規性 ⇒ 首都圏では数少ないレストラン列車。海を眺めながら食事ができる

実用性 ⇒ 小田原駅発着なので、箱根などの観光と組み合わせた利用も可能

価 格 ⇒ 同区間の特急列車より5000円高。料理の内容からはやや割高感あり

担当者の
東日本旅客鉄道(JR東日本) 横浜支社 営業部長 竹澤康行 氏
東日本旅客鉄道(JR東日本) 横浜支社 営業部長 竹澤康行 氏
 「伊豆クレイル」は、JR東日本としては初めて首都圏で運行する、食をテーマとしたリゾート列車だ。ピンクゴールドを基調とした外観や和モダンの内装は、著名デザイナーは起用せず、社内スタッフがデザインした。海側を向いた2人掛けのカウンター席は2人旅、コンパートメント席はグループ旅行に対応したもの。料理は東京・目黒のフランス料理店「モルソー」の秋元さくら氏に監修を依頼するなど、女性を意識して企画した。この列車で20~40代の女性を伊豆に呼び込みたい。

(文/日経トレンディ編集部、写真/古立康三)

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