車窓の景色を楽しみながら、特別な料理が食べられるレストラン列車。利用者の減少に苦しむローカル線に人を呼び込もうと、瞬く間に全国各地に広がっている。さらにその流れは大都市圏にも波及。4月に池袋駅、西武新宿駅から秩父方面に走り始めた「西武 旅するレストラン52席の至福」(西武鉄道)に続き、JR東日本がこの夏、首都圏での運行に踏み切る。神奈川県の小田原駅と静岡県の伊豆急下田駅とを結ぶ「伊豆クレイル」だ。
まず、小田原駅発11時40分の往路区間では、車内でランチメニューを提供。伊豆産の食材を使ったボックスランチに、伊豆クラフトビール、コーヒーなどが付く。途中、海沿いの景色が良い区間で徐行するなどしながら、伊豆急下田駅まで約2時間30分かけてゆっくりと走る。
折り返しは伊豆急下田駅発15時9分。こちらの復路区間はティータイムメニューとなり、軽食とスイーツがメイン。ウェルカムドリンクとしてスパークリングワインが提供される。小田原駅の到着は17時12分で、日帰り利用も可能だ。
●乗車時間/2時間26分(小田原駅発)、2時間3分(伊豆急下田駅発)
●運行日/土・日曜、祝日
●料金/(大人1人。税込み)/9000~1万400円(現地発着片道プラン)、1万5600~1万6600円(東京駅発着往復プラン)、3万700~6万3800円(東京駅発着宿泊付きプラン)
食事はレストラン列車としては標準的
ツアー商品は、伊豆クレイルの片道利用だけの現地発着プランで9000円(税込み。以下同)から、東京駅発着で片道は「伊豆クレイル」、片道は特急列車を利用する日帰りプランで1万5600円から。片道1万~1万5000円の「52席の至福」と同程度の価格帯だ。
首都圏で激突する2つのレストラン列車だが、一長一短がある。車窓は、東伊豆の海岸線を走る「伊豆クレイル」のほうが上。観光地としての知名度や充実度も、伊豆のほうが秩父よりも高い。一方、料理は、車内のオープンキッチンで盛り付けが行われる「52席の至福」のほうが本格的だ。「伊豆クレイル」は、フレンチレストランやホテルで調理してボックスに詰めたものとなる。食事はレストラン列車としては標準的だが、車窓に魅力を感じるなら選んでもいい。
実用性 ⇒ 小田原駅発着なので、箱根などの観光と組み合わせた利用も可能
価 格 ⇒ 同区間の特急列車より5000円高。料理の内容からはやや割高感あり

(文/日経トレンディ編集部、写真/古立康三)