この記事は「日経トレンディ」2017年3月号(2017年2月3日発売)から転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります。

 スチーム技術でパンを劇的においしく焼くトースターを開発したバルミューダが、次に手がけた調理家電が炊飯器の「バルミューダ・ザ・ゴハン」だ。「開発に1年半を要した。これまでの製品のなかで最長」と、同社社長の寺尾玄氏は言う。

バルミューダ「BALMUDA The Gohan」
実勢価格/4万1500円(税別)
サイズ・重さ/幅27.5×高さ19.4×奥行き25.1cm・約4kg
炊飯容量/白米0.5~3合
炊飯時間/白米53~68分
カラー/ブラック、ホワイト
付属品/水計量カップ、米計量カップ
電源/AC100V ・50/60Hz
消費電力/670W

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2つの釡と、外釡に入れる水用と米用の計量カップが付属する
2つの釡と、外釡に入れる水用と米用の計量カップが付属する
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社長の寺尾玄氏。「目指すのはおかずと相性が良く、食事としての感動体験ができる米」と語る
社長の寺尾玄氏。「目指すのはおかずと相性が良く、食事としての感動体験ができる米」と語る
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あえて「米を対流させない方式」を採用

 最も時間をかけたのは、従来の炊飯器と全く違う機構を思い付くまでの過程だった。他のIH炊飯器は、土鍋や羽釡の炊飯に近づけるために、熱伝導性のいい分厚い金属釡や圧力技術を駆使し、いかに力強く加熱して米を激しく対流させるかを競う。バルミューダはこの発想を逆転させ、アルミ、ステンレスの2つの薄い釡を使い、米を対流させない方式を採用した。外側の釡に200mlの水を入れ、内側の釡に米と水を入れる。外釡を加熱して発生する蒸気のみで内釡を加熱する仕組みだ。温度上昇が緩やかで、100℃以上に上がらないため米が潰れにくく、ハリのある炊き上がりになるという。炊飯時間は60分程度と、他の炊飯器よりやや長くかかる。

釡の断面。内釡と外釡の間に空間があり、そこに充満する蒸気で加熱
釡の断面。内釡と外釡の間に空間があり、そこに充満する蒸気で加熱
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 炊飯容量も3合までで、一般的な炊飯器よりも少ない。「現時点では3合以上炊くことはうまくいかなかったため」と寺尾氏は説明する。保温や電源ケーブル巻き取りなどの機能を付けずに、高さ20cm以下というコンパクトさを優先。デザイン性が高く、軽いので食卓に持っていきやすい。

 試食したところ、しっかりとした硬めの食感で、他の高級炊飯器に比べると炊き上がりのみずみずしさに欠けるように感じた。だが冷めた状態で食べたときに、印象は一変した。おにぎりにしても米が潰れず、適度な弾力がある。米粒のほぐれがいいので、卵かけご飯にしたときには卵とご飯の一体感を味わうことができた。

 弁当を作る、もしくは和食よりカレーやチャーハンが食卓によく上る少人数の家庭には向いているかもしれない。

白米、早炊き、玄米、炊き込みご飯、おかゆの5つのモードと予約機能がある。保温機能はなし
白米、早炊き、玄米、炊き込みご飯、おかゆの5つのモードと予約機能がある。保温機能はなし
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米粒のほぐれがいいことがわかる
米粒のほぐれがいいことがわかる
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記者の目
新規性 ⇒ 2つの釡を使い、蒸気で加熱する発想で新食感が可能になった

実用性 ⇒ コンパクトでデザインがいいが、3合炊き。大家族には不向き

価 格 ⇒ 4万円台という価格は、高級器の約半額。トライしやすい

担当者の
バルミューダ 唐澤明人氏
バルミューダ 唐澤明人氏
 「土鍋で炊くよりおいしいご飯を」という社長の方針を模索し、最初は冷凍ご飯の研究に着手するなど遠回りした。釡を2層にして蒸気で加熱するという機構を考え出すまでに、最も時間とエネルギーを使った。この機構は新しいものではない。東芝が1955年に発売した炊飯器は2層の釡と蒸気をタイマーに使っていたことや、台湾の炊飯器にもある方式だということを後から知った。最初にこれを知っていたらおいしく炊けないと思い込み、採用していなかったと思う。

(文/日経トレンディ編集部、写真/稲垣純也)