エネルギー産業はMaaSでどう変わるのか(後編)

エネルギー産業は次世代モビリティ革命でどう変わっていくのか。後編では、分散型電源や非接触充電など、MaaSを社会実装していくために必要なポイントについて、中国など海外動向を含めて解説します。
日高 洋祐
MaaS Tech Japan 代表取締役

【エネルギー産業はMaaSでどう変わるのか(後編):講演全文】

吉田:そのなかで充電器ってどれくらいあるのというと、今、71カ国で2万2千ぐらいついていまして、今一番ついているのは欧州、その次が日本、そして意外なことです、アメリカよりもアジアのほうがということになっています。普及の形態で言いますと、黄色い線のアジアが急激に伸びていることがわかりますし、アメリカは先ほど言いましたけど、テスラとか、フォルクスワーゲンが個社で引っ張っているもんですから、かなり計画的に継続的に進んでいます。

 日本はある程度、面的な普及が進んだので止まっていて、欧州が劇的な伸びを果たしているというところです。どんなところにっていうのをつけました。これで専用の充電所とか、モール、それからスーパーの駐車場、ディーラーさん、ガソリンスタンド、色んなところの写真がありますけど、この右上のこの写真、これが中国なんですけど、もう遠くて向こうがかすんじゃっているんですけど、50台ぐらいの充電器がありまして、これは全部、急速充電器で、そこに車が満杯になって列を作って充電を待っているという状況です。

 かなり中国の本気度がわかる写真になっています。他方、この緑と赤の字で書いているところなんですが、赤は充電をビジネスとして成り立たせているところ。充電するために来ていただいて1回なにがしかのお金を取っていると。ところが緑のところというのは、それで、儲けるというよりはお客さまへのサービス、付加価値として充電器を置いている。その代わり、その滞在時間のうちにうちのお店でお金を使ってくださいねとか、ライバル会社の代わりにうちに来てくださいねというところです。

 残念ながら、日本ではまだ緑の字のところの設置数が非常に多くて、充電がビジネスになってないという状況がございます。他方、ちょっと未来の話をさせていただきます。これはCHAdeMO協議会の勝手な予想なんですけども、これからどうなっていくかというのを大きく5つに分けました。

 まず、充電はこれから最小化されますと。最小化ってどういうことかというと、だんだん充電が気がつかなくなってくると。例えば非接触充電でいつの間にか充電していたりとか、充電時間が極めて短くなったりとか、後は走行中に充電するとか、そういったところになってきて充電が目立たなくなること。そして他方、大きさがこれからEVも様々になってきます。バスから小さいバイクまで。そうすると多様な電力授受が出てきます。

 先ほど竹内様からもお話がありましたけども、車が電源化されて、車の電池を電源として使いましょうという動き、それからMaaSの一番近いところはここかもしれませんが、車は共有されていきます。シェアカーという概念が出てきますので、例えばシェアカーのときに、60kWhの電池を積んだ長距離を走れるEVが東京から川崎に行くのに必要かというと、そうではないわけですね。

 その代わりに20kWhの小さい電池、だけど料金は安いよと、こういう車を最初から借りればいいわけで、用途に応じた車というのが必要になってきます。車を共有すると普遍性というか、車の共通性というのはどんどん増してくると思っています。

 今まで車というのは非常にプライベート性の強い、自由に乗れて、自分の主張、自己主張、個の追求というところで多々あったんですけども、その車ですら、最近は社会と連携しないとやっていけないという時代になってきています。

 モノからコトへということで次のページになりますが、今までは車を所有して自由に移動したいっていうのが、車の一番のモチベータでした。ですから、当然、高性能で魅力的な格好いいデザインの車、そしてそれを自宅とか身近なところに置いといて、いつか、なんかのためにということで、相当、余裕を持った仕様にしていました。ある意味、無駄だったというところがあります。

 ところが、これが移動したいときに適切なサービスとして提供してほしいと、アフターサービスという概念になりますと、そんな高性能でなくてもぎりぎりでいいです。ぴったりの仕様でいいし、出発点とか目的地もさまざまな可能性があります。今、車の維持費ってとても高くて、例えば月1,000km、これはもうかなり長距離の通勤に使われる方の平均ですけども、その方でkmを運転するのに100円ぐらいかかります。

 月300km、これは近所の買い物、送り迎えですとだいたいkm300円。ほとんど乗らないけど、土日だけとかいうような月100kmとかの場合だと、kmで900円になっちゃいます。タクシーがご存じのとおり、東京ですとkm400円ですし、電車と連動したりすると、km50円ぐらいまで最終的には落ちるんですけども、こういったところからすると、やはり車の高コスト性っていうのが、これからサービスとして見たときに、本当に成り立つのかっていうところに、我々としては疑問を持たなければいけないというふうに思っています。

 車両の電池増大っていうことで、これはCHAdeMO協議会で対応してくださっている車を昔から並べたんですけど、最初の株式会社SUBARUさんの軽自動車9kWhから始まって、日産自動車株式会社のほうでつくらせていただいている62kWhのリーフ。この辺までずーっとやってきました。当然ですけども、高出力充電っていうのが必要になりますし、大きな電池ですので。

 それからそれを電源利用したいという2つの概念が出てきます。高出力充電を含めた、今後CHAdeMO協議会で考えてる充電規格っていうのは3つございまして、大きいところ、真ん中、小さいところというところで分けています。先ほどのコンソーシアムというところで申しましたが、われわれのメンバー、実は自動車メーカーのみならず、株式会社クボタさんといって建機の方であったりとか、トラック、ヘリコプター、セスナ、船、要は動くものが電気になっているというのは現実に起きていまして、ダイソン株式会社さんなんかも入っているのであれも動くところをつくられているんですけども、そういったところはだいたい大型、それからアジアのTUKTUK、力車みたいな三輪、四輪のところからEバイクといったところの小型、そして、現行の乗用車といったように、充電の形態を様々にしながらも、1つの電気の端末として、このようなバラエティを持っているというのが現状でございます。

 将来的に非接触充電っていうのがあって、これ、縦軸は公共性、横軸が出力っていうことになりますが、たぶん自宅で携帯電話、スマートフォンと同じように駐車していたら、そのうち朝になったら充電されていると。これは非常にEVの大きなメリットですね。もうガソリンスタンドに行かなくていいというところ。それからだんだん発展してきますと、立体駐車場に止めていると、ワイヤレスっていうのは立体駐車場と非常に親和性がいいので、そういったところでの充電ができたり、駐車場でできたり、藤沢市なんかでもプロジェクトが動いていますけども、交差点で信号待ちをしているあいだに充電したり、タクシースタンドで客待ちのあいだに充電したりと。非接触充電が入ると見えなくなるという、充電を感じなくなるというのはどんどん発展してくるんじゃないかなと思っています。

 エネルギーデバイスとしての車というのをちょっとご紹介させていただくと、低負荷時に充電して、高負荷時に放電することで多少役に立てるところがありまして、1つはこのような出力、家、ビル、それからグリッドに対しての放電っていうのはできます。どういう活用をしているかというと、例えばなんですけど、電柱を立てる代わりに過疎地に電気を運ぶであったり、工事現場で行灯をつけたり、レジャーでバーベキューセットを電気で動かすといったようなところ、家では個人需要としてのピークカットとか、太陽光発電との連携、それからこれから進んでくると、カーシェア、電池シェアということで、シェアカーが使われてないときにその電池を提供して、周波数調整に協力するとか、宅配バンがものを配っているあいだに、その電気を、余ったものを売るとか、そういったことも考えられるんじゃないかと。

 あってほしくないんですけども、非常時、ライフラインの復旧っていうのは非常に電気は早いですから、そういったときに電気を供給できるということもあります。実例として、これは日産自動車の実例なんですが、東大日本大震災のときにライフライン、電気がものすごく早く戻ったんで、東日本の被災地に対してリーフを貸し出しまして、移動手段として使っていただいたんですが、熊本のときには移動手段と加えて電力出力としても使っていただいたという実績がございます。

 そんなところを踏まえて、業種別で災害時のEV利用ということで、今、電鉄会社の方々とか、シニアホーム、それから病院、自治体といったところでこのような活用、あまり非常時なのでPRがしづらい部分であるんですけども、こういうことも考えているというのは現状でございます。

(9:01)

日高:ちょっとMaaSとかモビリティに戻りまして、MaaSが実装されたときにユーザーにとってのサービスもありますけれども、1つ自動車が交通公共化というか、インフラっぽくなってくる。

 個人が所有しないで、ある業者さんが利用したりとか、もしくは自治体が持つみたいになるのと、EVが高度化したり、普及したりする。さっきMaaSコントローラーみたいなのがあったときに、ちょっと竹内様と吉田様のお話で見ていくと、新エネルギーマネジメント、エネルギーの業界の変化でいうと、さっきの再生エネルギーの話ですとか、分散型の電源とか、充電施設っていうのがあると、やっぱりちょっと1つは、都市のあり方というか、ガソリンスタンドがあるか、ないかとか、どういうふうに電気自動車が充電されるのかっていうところで、コントローラーもありますし、都市の計画、どこに何を置くかっていうところとか、道路に何があるのかっていうのも変わってくるんだろうなっていうので、非常につながりが見えたところかなと思います。

竹内:先ほど申しあげたとおり、これから再生可能エネルギーがたくさん入っていくと、実はその再生可能エネルギーの一番のメリット、皆さまもご存じのとおり、燃料は要らないので、いっぺん設備をつくれば発電し続けてくれると。要は限界コストゼロでどんどんエネルギーというものが生み出されるので、エネルギーが潤沢に有り余るような世界になってくる。

 そうすると、これを、逆に言うと、うまく使いこなすことの価値のほうがどんどん高くなって、エネルギーというもの、その電気の1kWhもの自体がだんだんその価格という点では、少なくとも価値がなくなってくるというようなことなので、それこそ携帯電話で最初はデータを見るのを恐る恐る、あっ、これを見るとどれぐらいかかるだろうっていうふうに気にしながら見ていたものを、今、われわれもその電気をつけるともったいないという教育をされてきたものが、その再生可能エネルギーが潤沢に入ることによってkWhはほとんど無価値になっていく。

 なので、定額使い放題っていうような世界になるということももちろん可能ですと。それをうまく使いこなすためにこれをうまく貯めてくれたり、必要なときに出してくれたり、吸ってくれたりするということと、パッケージにして何かメニューをつくるというようなことも考えられるんではないかなというようなこと。その辺はまだまだ正直これからの検討の話ではありますし、規制も緩和しなきゃいけなかったり、いろいろありますけども、可能性としては十分にあり得る話だろうなと思っています。

日高:電力っていうのがつくったときに使わないといけないから、その再生エネルギーだと急に増えてしまったりすると、結局、捨てなきゃいけないので。であれば、もう価格を下げてっていうので、再生エネルギーがどんどん普及すると、余剰したというか、使われなさそうなところであれば、安くすることもできるかもしれない。

竹内:そうですね。もう電気の本当に、これは電力側にいる人間からすると、もうこれは基本中の基本なんですけど、同時同量という言葉あって、使われる瞬間に、使われる量とまったく同じ量を作らないといけない。これは、要は大容量では貯められないので、ずっとそれをやり続けてきたわけなんですね。ただ、これがバッテリーっていうものが社会に実装されていくと、その同時同量というわれわれの今までエネルギーを電気を制約してきたその法則を、ある程度崩していくことができるということで期待されたというところ。

日高:国のなかでもいろんな計画はあると思うんですけども、ちょっと具体的なプレーヤーとして、こういうのが進むためにはなんかこういうが重要だとか、こういうことが課題だとか何かお考えがあれば、ちょっと最後に一言ずつお願いできればと思います。

吉田:今まさに日高さんがおっしゃったように、中国はすごく速いですね。安新区っていう、聞かれたこともある方もいらっしゃると思うんですけど、すごい設計をしていまして。ゼロからつくるんですけど、200万人都市、政令指定都市ですよね、日本でいうと。そういう都市をつくろうとしていて、車は全部地下を走りなさいと。EVだから、排ガス走んないから、もう地下のチューブみたいなところを走るわけですね。たぶん将来的には自動で走らせようって、自分の家の駐車場まで自動で戻ってくる。人車分離されていますから事故はゼロ。EVも走っているし、その地下の駐車場に止まると、そこで自動的に充電したい蓄電池から充電されたりっていうのをやると。

 これがもうまだ何十万人、まだっていうのもおかしいですけど、何十万人しか住んでいないんですけど、それが機能し始めているんですね、このやはり意思決定の速さ、そしてその実行力っていうのは非常にうらやましいと。今、おっしゃられたように、じゃあ課題はなんだっていうと、例えば今、まさに竹内さんもおっしゃられたように、蓄電池が実装されたら、その蓄電池はどこからきますかと。われわれはやはりEVを関連していますから、EV由来の蓄電池、2回使っていただくとライフサイクルアセスメント的にもCO2、脱炭素化に近づきますねとか、そういうところをやりたいんですけども、やろうとすると、総論賛成で各論反対の意見が多々出てくると。

 なので、やはり中国を全部真似するというわけじゃないんですけど、いいところは取りたいと思っていまして、1つは明確な方向性の共有、そして、それに対していろんな意見があるのは当然尊重するんですけども、いろんなビジネスモデルは可能なんですけども、邪魔だけはしないと。邪魔することはしないで、みんなでプラスにポジティブな方向で競争するということが非常に重要なファクターになるのではないかなというふうに思います。

竹内:先ほどもお話をしたとおり、色んな多様なプレーヤーが参画をしてくれる、吉田さんは今、せめて邪魔をしないでって言い方をされましたけれども、おっしゃるとおりで。せめて邪魔をしない。でも、それだけではなくて、やっぱりきちんとしたコミットメントをしていく必要があると。

 例えばですけれども、政府側から考えても、例えばその環境価値を認めるのであれば、どういうふうに評価をして環境価値をつけるのかというようなこと。環境価値をつけるということは、ほかの化石燃料を使っている場合には、そのコストを上げるということなので、それによることの経済影響等も考えながら、きちんとそのEV、あるいはMaaSを使った社会の環境価値をどう評価していくか。

 あるいはちょっと2つ下に書いてありますけども、協調領域ですね、その技術開発的なところを、政府がサポートする。あるいは特区制度の活用、今も中国の事例でも出ましたけれども、まずはやっぱり色々技術の実装するに当たっては、色々やっぱりやってみないと不具合って出てくる場合がある。やってみないといけない。

 なので、日本の政府がやろうとしていたこのスーパーシティの構想ですね。そういったところも私は非常に期待をしながら見ていたところなんですけど、ちょっと今回の国会ではなかなか法制化が、議論が詰まりきらなかったようですけれども、こういったところを活用していく。あるいは、その地方自治体といったようなところも参画をする必要がある。これもある意味、都市の問題というふうにも考えられるので、そういったところで連携していく必要がある。

 自動車会社もそうですし、エネルギー事業者も充電システムを提供していく。あるいは、そのエネルギーシステムへの分散型資源の取り込みとか、色んなところでやるべきことをやっていく必要がある。どう同期を取っていくか、やっぱりビジョンを共有する同期を取りながらやっていくというところが、一番の課題かなというふうに思っております。

日高:ありがとうございました。やっぱりお二方共通して、明確なビジョンをちゃんとつくりながら、やっぱりいろんなステークホルダーが強調して進めていくっていうところで、それは実現できるんじゃないかということ、ありがとうございます。以上となります。お二方、どうもありがとうございました。

*このテキストは講演での発言を、文字起こししたものです。理解する参考情報としてご覧ください。

第1回
エネルギー産業はMaaSでどう変わるのか(前編)

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このセミナーの目次

Beyond MaaS エネルギー産業の未来
全2回
「脱炭素化」の流れの中で、長期的に再生可能エネルギーへのシフトが進むエネルギー産業。MaaSの世界とエネルギー業界の課題が重なり合う未来には、どんな新しいサービスが創造されるのか。その技術的課題とは何か。MaaS Tech Japan代表取締役の日高洋祐氏をモデレーターに迎え、国際環境経済研究所理事の竹内純子氏、CHAdeMO(チャデモ)協議会事務局長の吉田誠氏が解説します。
エネルギー産業はMaaSでどう変わるのか(前編)
  • 第1回
  • 2019.07.02
エネルギー産業はMaaSでどう変わるのか(前編)
エネルギー産業はMaaSでどう変わるのか(後編)
  • 第2回
  • 2019.07.05
エネルギー産業はMaaSでどう変わるのか(後編)

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