気温が下がり、パンの需要が高まる10月。パンコーナーではコッペパンとコロネが幅を利かせている。商品をシリーズ化し、並べて陳列することでジャンル全体を強化。商品を「点」ではなく「面」で見せ、消費者に強くアピールする戦略に踏み切っている。

店舗概要
「ファミリーマート サンシャイン南店」
東池袋にある「サンシャイン60」内のファミリーマート本社に近く、大型スーパーや専門学校にも隣接。利用客はビジネスパーソンと学生が多い
東池袋にある「サンシャイン60」内のファミリーマート本社に近く、大型スーパーや専門学校にも隣接。利用客はビジネスパーソンと学生が多い
定点観測日 2018年10月12日(金) *情報は当時のもの

 今回、まず向かったのはパンが並ぶ棚だ。2017年から発売している「ファミマのコッペパン」シリーズが好評で、「コッペパン(ダブルピーナッツ)」(税込み130円)、「コッペパン(つぶあん&マーガリン)」(税込み128円)をはじめ数種類が並ぶ。18年10月からは「ファミマのコロネ」シリーズも発売した。

「ファミマのコロネ」シリーズは配置する棚の面積を広げ、消費者に「選ぶ楽しみ」を訴求する戦略だ
「ファミマのコロネ」シリーズは配置する棚の面積を広げ、消費者に「選ぶ楽しみ」を訴求する戦略だ

 「メロンクリームコロネ」(税込み145円)、「チョコホイップのデニッシュコロネ」(税込み135円)といった進化系コロネが続々と登場。同ジャンルの商品をカテゴリごとに1列に並べる陳列の工夫に加え、進化系コロネのビジュアルがSNSで話題となったこともあり、若年層のファンの獲得にも寄与しているという。

 このように、シリーズ商品を「面」で展開することで、来店者に強くアピールしたことが功を奏しているようだ。

「メロンクリームコロネ」(税込み145円)。「見た目」「食感」「味わい」でメロン感を楽しめるとうたう進化系コロネは、SNS映えする点も人気の理由だ
「メロンクリームコロネ」(税込み145円)。「見た目」「食感」「味わい」でメロン感を楽しめるとうたう進化系コロネは、SNS映えする点も人気の理由だ

香取慎吾氏のCM効果も?「お母さん食堂」が躍進中

 次に向かった惣菜コーナーでは、「お母さん食堂」の惣菜シリーズの売り上げが堅調だ。

共働き世帯が増え、働く女性が仕事帰りにコンビニで惣菜を購入するケースが増加中
共働き世帯が増え、働く女性が仕事帰りにコンビニで惣菜を購入するケースが増加中

 特に「具だくさんビーフカレー」(税込み398円)、「チーズインハンバーグ」(税込み135円)をはじめ、自宅で調理するには時間と手間がかかる商品は夕食のメイン料理としても定番人気を誇る。「銀鮭の塩焼き」(税込み298円)、「さばの塩焼き1切れ」(税込み278円)などの焼き魚も、「調理時の匂いが出ない」「魚用グリルなどを洗う手間が省ける」といった理由から売れ行き好調だ。つまみとしての需要が増えたこともあり、惣菜全体の売り上げが底上げされているという。

「具だくさんビーフカレー」(税込み398円)。大きめの牛バラ肉や野菜入りのカレーで、長時間煮込んだ本格的な味わいが人気
「具だくさんビーフカレー」(税込み398円)。大きめの牛バラ肉や野菜入りのカレーで、長時間煮込んだ本格的な味わいが人気

 「母さん食堂」シリーズのテレビCMでは、イメージキャラクターに香取慎吾を起用。「CMなどに登場する香取さんのファン層に合致した40代を中心とする女性が、惣菜として購入して帰るケースが増えた」(ファミリーマート)という。

風邪シーズン到来を前に喉あめ市場が活況

 風邪シーズンの到来を前に健康関連コーナーでは喉あめが活況だ。ファミマで販売している喉あめは、大きく分けて2種類ある。医薬品に準じて有効成分による効果が認められている指定医薬部外品と、菓子としての喉あめだ。指定医薬部外品の喉あめは「お菓子の喉あめと比べ、効能・効果に期待できる点が消費者の注目を集めた」(ファミリーマート)という。

 なかでも、18年10月発売の「浅田飴 薬用のど飴N(ニッキ)」(税込み324円)は出足が好調。浅田飴とコラボしたファミリーマートのオリジナルとなる同商品は、16年の発売以来、快進撃を続ける指定医薬部外品「浅田飴薬用のど飴C(クール)」(税込み486円)、「浅田飴 薬用のど飴K(カリン)」(税込み486円)の新シリーズとして登場。従来の缶入りタイプと比べ、少容量で低価格なパウチタイプの袋入りの新商品は手軽に試し買いができるだけでなく、持ち運びに便利な点も受けているという。

菓子コーナーの喉あめと双璧を成して売れているのが、指定医薬部外品の喉あめだ
菓子コーナーの喉あめと双璧を成して売れているのが、指定医薬部外品の喉あめだ
「浅田飴 薬用のど飴N(ニッキ)」(税込み324円)。缶入りに比べて小容量かつ低価格なパウチタイプの袋入りが、試し買い需要にも合致
「浅田飴 薬用のど飴N(ニッキ)」(税込み324円)。缶入りに比べて小容量かつ低価格なパウチタイプの袋入りが、試し買い需要にも合致

ワンコイン以下のペットボトルワインが増加の兆し

 ワインコーナーの注目は「ペットボトル入りワイン」だ。ペットボトル容器に入ったワインは、瓶入りに比べて軽量のため持ち帰りやすいというメリットがある。ペットボトル入りに加えて、コンビニでの売れ筋キーワードは「ワンコイン」。ファミマ限定販売の「リスタイル」(税込み398円)、「酸化防止剤無添加赤ワイン」(税込み498円)、「フェスティバル」(税込み398円)は、いずれもフルボトルが500円以下で買えるというコストパフォーマンスの高さから、コンビニワインの“入り口”としての需要が高まっている。

ワインの売り上げは昨年大きく伸長。「ペットボトル入り」「500円以下」の手軽さで新規ユーザー層を狙う
ワインの売り上げは昨年大きく伸長。「ペットボトル入り」「500円以下」の手軽さで新規ユーザー層を狙う
「リスタイル」(税込み429円)。ワインの輸入量1位のチリ産ワインは、コスパの良さからもコンビニワインの“入り口”に
「リスタイル」(税込み429円)。ワインの輸入量1位のチリ産ワインは、コスパの良さからもコンビニワインの“入り口”に

 ワインコーナー全体を通じて最も売れているのはチリワイン。「アルパカ カベルネ・ソーヴィニヨン/メルロー」(税込み627円)と「アルパカ ピノノワール」(税込み627円)が代表格だ。

 関税の低さもチリワイン人気を後押しする。07年に締結された日・チリ間の経済連携協定により、チリワインの関税は19年に0%になるといわれている。ワイン購入者の客単価は非購入者に比べて高くなる傾向があるため、「今後もさらなるワイン市場の拡大に期待したい」(ファミリーマート)という。

(写真/古立康三)