あめメーカー最大手のカンロは2023年5月16日、高校生3人と共同企画した新商品「透明なハートで生きたい」を発売した。これは、Z世代の“あめ離れ”を受けて開発したもの。想定する顧客層と同年代である高校生の声を生かすことで、Z世代(1990年半ばから2010年代前半生まれ)との新たな接点を創出するのが狙いだ。若年層のあめ離れという危機感と向き合うカンロ。同社の打ち手に迫る。
市場縮小を懸念。Z世代に「あめの原体験」を届ける
新商品は、近年顕著になっている「若年層のあめ離れ」に対する課題意識から生まれたものだ。以下は、カンロが記者発表会時に公開したグラフである。
あめやグミ、キャラメルなどを含む「キャンディ市場」は、外国人観光客によるインバウンド需要が後押しし、2020年初めまでは右肩上がりで推移していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、すべてのカテゴリーで売り上げが減少。21年に底を打ったものの、22年にはグミ市場の伸長がけん引し、キャンディ市場全体は増加に転じた。ただ、グラフから分かるようにあめ市場は微増にとどまり、新型コロナウイルス禍前の水準には戻っていない。
失ったインバウンド需要に加え、売り上げ低迷の要因となっているのが、若年層によるあめ離れだ。下図のように、特に10代の購入規模は全年代の中で最下位となるなど、課題が顕在化している。
背景には、遠足時にあめの持参が禁止されるケースや駄菓子店の減少、家の置き菓子として選ばれにくくなっているなど、幼少期にあめと触れる機会が減っていることがあるとカンロは指摘する。
カンロは国内のあめ市場983億円(22年時点)のうち20.4%を占め、企業別シェアでは1位となっている。ただ先に挙げたグラフにある通り、グミ市場の成長とあめ市場を比較すると、その差は歴然。「このまま若年層のあめ離れが進めば、市場全体が縮小するのではないか」と危機感を募らせる。
そうした状況を打破するためにも、Z世代に「あめの原体験」を届ける必要があると考え、「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」を発足。今回の新商品発売につながった。
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