プロ活動の一環として、ライブ配信サービス「Twitch(ツイッチ)」内のチャンネル「DaigoTheBeasTV」で配信をしているプロゲーマーの梅原大吾氏。前編では、仙台市から青森県弘前市まで約300キロメートルを歩いて話題を集めた「梅原散歩」をはじめ、ユニークな企画に取り組む理由を聞いた。後編ではプロ活動における動画配信の役割や、2023年6月に発売される「ストリートファイター6」への期待、今後の目標に話を広げる。
▼前編はこちら 300キロの“散歩”配信でプロゲーマー・梅原大吾が感じたことプロゲーマー
配信が格闘ゲーマーとしてのストーリーにつながる
――梅原さんがプロになった頃にはなかったコミュニケーションツールが今はたくさんあると思います。それは配信もそうですしSNSもそうです。そうしたツールは、梅原さんが“本業”とおっしゃるプロゲーマーとしての活動の中でどういう機能を果たしていますか。
梅原 始めた当初は、自分が楽しいと思えるようなことや自分の考えを発信できるのはやはり面白いなというのが単純な感想でした。だけど今は、いろいろな企画をやるにしても、結果的にそれが格闘ゲーム界の盛り上がりにつながるようにというのは忘れてはいけないと意識しています。配信に熱を入れすぎると、たまに「もうこれだけやる選択肢もあるのかな」と気持ちが引っ張られそうになることもあるんですよ。企画を考えていろいろやるのが本当に楽しいから。
でも配信一本でやっていくというのは、やっぱり僕にはあり得ないなと。格闘ゲームあってこその自分だし、配信を通じて自分のことを知ってもらうことが、格闘ゲーマーとしてのストーリーにもつながっていくと思うんですよ。僕以外のプロプレーヤーも普段から配信をすることで、ただ“ゲームがうまい人”ではなく、例えば料理が得意なんだとか、音楽が好きなんだとか、そういう個性が見えてくる。そうすると、そういう個性を持った人たちがぶつかり合う試合自体にも面白みを感じやすくなりますよね。
――試合を見るにしても、試合以外の様子や人柄を知ることで面白さが増す面は確実にあると思います。
梅原 普段見ない表情がよく見えると、試合を見るときの見方も変わるというか。そういうことで、楽しみって複合化するし、広がるなと思ったんですよ。応援するときにも気持ちの入り方が変わるだろうし。配信には確かにそういう効果があると思いますね。
――いずれにしろ、企画を考えるのがお好きなんですね。
梅原 好きですね。実はすごく飽き性なんですよ。だから企画は考えるけど、基本的に2回はやらない。1回こっきりでどうなるか分からないというのがとにかく好き。全くやったことがない企画だと予想外のことが起こるじゃないですか。それがすごく面白い。
今回の散歩でも、リタイアしちゃった人もいれば、どこで誰がどのぐらい足が痛くなるのか、雨がどうだ、風がどうだ、気温がどうだ、視聴者が応援してくれてとか、全部予想ができないことなので、それはやっぱり楽しかった。わくわくしましたよね。
ゲームがうまいだけの配信では飽きる
――企画が好きというのは昔からですか? それとも動画配信を始めて気づいたんですか?
梅原 自分が逆の立場で考えたときに、ゲームが好きだったら当然うまい人のプレーは見ていて面白いわけですよ。でもそれは最初だけ。次第に慣れるというか、目が肥えてくる。だから「この人はうまいけど、でも見飽きたな」と思ったら、見なくなっちゃうんですよ。ただでさえ格闘ゲームは、人口が他のゲームジャンルに比べて少ないから、それではまずい。
実際、最初に配信したときは、「ついに梅原が配信を始める」ってことで3万3000人ぐらい見てくれたんですよ。でも、そのうちに人数が半分になって、また半分になってと減っていってしまう。そりゃそうだよなと思うんですよ。代わり映えしない、何が起きるんだろうって思えない配信は、見る人が減っていきますよね。
――配信はその時々で視聴数が多い回もあれば少ない回もあって、それに一喜一憂する人もいると思いますが、梅原さんはそれも含めて楽しまれています?
梅原 持論ですが、視聴数を一時的に稼ぐのはそんなに難しいことではないと思うんですよ。例えば人気のゲームを選んでやるとかね。今ならストリートファイター6の配信をすれば、確実に数は稼げます。でもそれでたくさん見られたからといって、喜びは特にない。自分の配信だから見てくれた部分ももちろんあるだろうけど、やっぱりどこまでいってもゲームタイトルの力によるもので、それでは配信業としての本質的な成長はないと思うんですよね。
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