中川政七商店(奈良市)は2023年2月15~17日に合同展示会「大日本市」を開催した。10回目の今回は新型コロナ禍を受け、地方からの来場者は以前の水準には戻っていないものの、3日間で前回の1956人を上回る2337人が訪れた。過去最多となった78の参加ブランドから、「循環型ものづくり」「トレーサビリティー(生産履歴の追跡)」「手仕事承継」といった、近年注目が集まる社会課題解決を実践した3つのブランドを紹介する。

2023年2月、東京・渋谷にあるイベントスペース「EBiS303」で3日間開催した中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。過去最多となる78ブランドが参加し、来場者数は2337人を記録した
2023年2月、東京・渋谷にあるイベントスペース「EBiS303」で3日間開催した中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。過去最多となる78ブランドが参加し、来場者数は2337人を記録した

 10回目となった大日本市の出展者の傾向について、中川政七商店の広報・PRプランナーの佐藤菜摘氏は「サステナブル(持続可能)なものづくりや女性が活躍するものづくりなど、新しい風を吹かせるつくり手が数多くそろった」と話す。毎回、日本の工芸、ものづくりに根ざしたブランドが集結する大日本市だが、今回は時代を象徴するような社会課題の解決や個人の強い思いが感じられるブランドが多く見られたという。

入り口付近の壁面には、「ものづくり」や「つくり手」といったキーワードを強調し、「新しいものづくりが集まる場所」と掲げた
入り口付近の壁面には、「ものづくり」や「つくり手」といったキーワードを強調し、「新しいものづくりが集まる場所」と掲げた
人気を競う「投票コーナー」。商品部門、ブランド部門ともに環境大善(北海道北見市)の消臭剤「きえ~る」が1位を獲得
人気を競う「投票コーナー」。商品部門、ブランド部門ともに環境大善(北海道北見市)の消臭剤「きえ~る」が1位を獲得

22年3月に「B Corp」取得

 例えば2009年設立のファーメンステーション(東京・墨田)は、岩手県奥州市にある再生した休耕田で栽培した、無農薬や無化学肥料のオーガニック米を独自技術で発酵、蒸留してエタノールを製造している。このエタノールを使ったハンドスプレーや、エタノールの抽出過程でできる米もろみ粕を配合したせっけんなどを開発・販売する。米もろみ粕は飼料として、地域の養鶏農家や牛農家が利用することもできる。ゴミとして捨てられるものや使われていない未利用資源をアップサイクルする、循環型のものづくりを実践しているブランドだ。

オーガニック米からできたエタノールを使ったハンドスプレーや、エタノールの抽出過程でできる米もろみ粕を配合したせっけんなどを製造・販売する(写真提供/ファーメンステーション)
オーガニック米からできたエタノールを使ったハンドスプレーや、エタノールの抽出過程でできる米もろみ粕を配合したせっけんなどを製造・販売する(写真提供/ファーメンステーション)

この記事は会員限定(無料)です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
4
この記事をいいね!する