2023年2月23~26日の4日間にわたり開催された、国内最大級の写真映像関連イベント「CP+(シーピープラス)2023」。人気の中心はミラーレス一眼の展示だが、AI(人工知能)を活用した撮影体験、撮影した写真の楽しみ方、インスタントカメラのシステムを使った集客方法など、各メーカーが様々なカメラの活用法を提案していた。
「CP+」は、写真や映像関連のメーカーが一堂に会する、国内最大級の写真映像関連イベントだ。パシフィコ横浜(横浜市)での会場イベントと公式Webサイトで配信されるオンラインイベントのハイブリッド形式で開催された。会場イベントは4年ぶりということもあり、会場内はどこも盛況だった。
CP+2023のテーマは「見つけた、新しいわたし」で、キービジュアルはカメラを持った若い女性だ。機材の展示だけでなく、撮影した写真の楽しみ方や、これまでのカメラとはひと味違う撮影体験の紹介などもあちこちで見られた。
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ニコンはメインのブースやステージのほかに、登壇するフォトグラファーやクリエイターと観客の距離が近い、リビングルーム風のステージを用意していた。
メインのブースには、ニコンZマウントのミラーレスカメラと交換レンズなどがずらりと並び、実機を触って試せる体験コーナーには人だかりができていた。
力を入れていたのが動画撮影だ。メインのブースには動画撮影向けの周辺機器やアクセサリーが展示され、撮影体験コーナーにはモデルだけでなくダンサーも登場し、静止画撮影と動画撮影の両方を体験できるようになっていた。また、ニコンのミラーレスカメラで撮影した動画や写真を大型モニターで鑑賞して、画質を実感できるコーナーも用意していた。
注目を集めていたのは、APS-Cサイズのセンサーを搭載した、ニコンZマウントのミラーレス一眼「Z fc ブラック」、Vlog(Video Blog)などの動画撮影に向いた小型軽量ミラーレス一眼「Z 30」、フラグシップモデルとなるフルサイズセンサー搭載ミラーレス一眼「Z 9」だ。動画撮影を紹介するコーナーでは、Z 9を中心に本格的な制作環境を体験できる展示が行われていた。
メインのブースは黒を基調にした内装で、スタッフも黒い衣装に身を包んでいた。それに対し、もう一つのコンパクトなブースは白を基調にした明るい内装で、スタッフも白いパーカーを着用していてカジュアルな雰囲気だった。雰囲気ががらりと変わり、一見すると同じメーカーのブースとは思えないほど。
こちらの展示内容は、ミラーレスカメラの人気機種「Z fc」が中心だった。ニコンでは、以前提供していた、Z fcの外皮をカラフルな色のものに貼り替える「プレミアムエクステリア張替サービス」がかなり人気を集めたという。同サービスは23年1月に一旦終了したが、23年3月3日に再開されることになり、その紹介やサンプルが展示されていた。
名前を呼ぶと振り向いて目線を向けてくれるロボット「LOVOT(らぼっと)」をZ fcやZ 30で撮影するコーナー、Webマガジン「NICO STOP」を紹介するコーナーなども設けられていて、こちらは若年層や女性の来場者が多く見られた。
写真の活用を提案する富士フイルム
富士フイルムは、APS-Cサイズセンサー搭載のミラーレスカメラ「Xシリーズ」の「X-T5」「X-H2」「X-H2S」の3機種と交換レンズを中心に、撮影後の写真活用の提案や「チェキ」のビジネス向けアプリの展示、動画撮影のデモなどを行っていた。
参考出展の「DIGITAL PRESS ARTBOOK」は、撮影した写真やイラストを使った作品集を作れるオンデマンドサービスだ。フォトブックに近いが、判型やレイアウト、フォント選択の自由度が高く、よりアーティスティックな表現ができる。富士フイルムが持つ業務用プリンターのソリューションを、コンシューマー向けに活用する狙いもあるという。そのほか、写真を壁に飾る「WALL DECOR」では和紙を使ったサンプル展示したり、写真をプリントしたTシャツなどの「フォトグッズ」を紹介したりと、撮影後の楽しみ方の提案に多くのスペースを割いていた。
富士フイルムといえばインスタントカメラ「instax<チェキ>」シリーズも人気が高い。ブースではチェキの実機展示や楽しさのアピールといったコンシューマー向け展示のほか、スマホで撮影した写真をチェキプリントするスマホ用プリンターを使った、ビジネス向けアプリ「INSTAX Biz」を展示していた。
INSTAX Bizはスマホやタブレットに対応したイベント開催者向けのアプリだ。イベント限定テンプレートなど撮影用テンプレートを作ってINSTAX Bizに転送しておき、イベント会場ではそれを使って来場者を撮影して、その場でプリントして手渡すといった使い方ができる。
写真にはWebサイトに誘導する2次元コード(QRコード)を追加できるのがポイント。例えばこのQRコードからアンケートに誘導すれば、回答率向上などにつなげることができる。その場でイベント限定の写真をもらえる楽しさをアピールできれば、イベント開催者にとっては集客の一助になるだろう。プリンターは小型軽量かつ充電式で、スマホとはBluetoothで接続するためネットワーク設備は不要など、簡単に導入できる。
富士フイルムとしては、チェキブランドへのタッチポイントを増やすとともに、プリンターや印刷用フィルムの販売につなげたい考えだ。スポーツの試合会場やテーマパーク、ホテル・レストランでのパーティー、店舗、観光地などでの活用を提案したいという。
アウトドアがターゲットのOMデジタルソリューションズ
オリンパスの映像事業部門を引き継いだOMデジタルソリューションズは、マイクロフォーサーズのミラーレス一眼「OM-1」「OM-5」や交換レンズを展示し、「コンピュテーショナルフォトグラフィ」機能による撮影体験を大きく打ち出していた。
センサーサイズが小さいマイクロフォーサーズは、ボディーやレンズをコンパクトにできるのが強み。そのため登山やキャンプなどアウトドアに持ち出して使いたい人に向いており、OMデジタルソリューションズではそこをメインターゲットとしている。
カメラ本体の注目機種は「OM-1」だ。特徴の1つはディープラーニングによるAI被写体認識AF(自動焦点)で、フォーミュラーカー・バイク、飛行機・ヘリコプター、鉄道、鳥、犬、猫を認識してピントを合わせてくれる。例えば高速で走る列車や、走る犬などを楽に撮影できる。交換レンズは発売されたばかりの「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」が人気を集めていた。近接撮影や風景撮影に向いた望遠マクロレンズで注目度が高く、すでに予約がいっぱいで購入するまで数カ月待ちの状態という。
コンピュテーショナルフォトグラフィは、複数枚撮影した写真を使って様々な写真表現を作り出す機能だ。その1つである「ライブND」はスローシャッター効果を作り出すもので、例えば水の流れを浮遊感のある表現で撮影できる。「ライブコンポジット」は、明るさに変化が生じた部分を追加合成していくことで、例えば移動する星の軌跡の撮影などができる。「深度合成」は、高解像度とパンフォーカスを組み合わせて、手前から奥までピントの合った被写界深度の深い撮影などができる。こうした機能により、アウトドアで自然風景や野鳥、虫、河川や海、天体などの撮影をより楽しむことができる。会場では撮影体験ができるコーナーを設置していた。
4年ぶりの会場イベントが開催されたCP+2023は、市場が拡大しているミラーレス一眼を中心に盛り上がりが感じられた。動画撮影用機材の展示や動画撮影を体験している人も多く見られ、動画撮影ニーズの高まりも感じられた。スマホの台頭により縮小が続いていたカメラ市場だが、ミラーレス一眼と動画撮影のニーズにより売り上げは増加に転じている。新型コロナウイルス禍が収束に向い、旅行などで外出する人が増えれば、さらに市場の拡大が見込めそうだ。次回のCP+の盛り上がりにも期待したい。
(写真/湯浅英夫)