人気が年々高まり、クルマメーカーの間で新モデル投入で激戦が続く多目的スポーツ車(SUV)。そんな中、ホンダが新型「ZR-V」を2023年4月に市場投入し、勝負をかける。実は同社は22年にミッドサイズの「CR-V」を終売するなど、ミッドサイズSUVでは苦戦してきた。過去の失敗を踏まえた工夫を随所に施した新車種は果たして、消費者の心をつかむのか。雪上での先行試乗から成否を問う。

ミッドサイズ多目的スポーツ車(SUV)の本命として、ホンダが満を持して投入する「ZR-V」。23年4月にいよいよ発売される
ミッドサイズ多目的スポーツ車(SUV)の本命として、ホンダが満を持して投入する「ZR-V」。23年4月にいよいよ発売される

 ホンダが2023年4月21日、ミッドサイズ多目的スポーツ車(SUV)の新型モデル「ZR-V」を発売する。これまで同社は、コンパクトサイズの「ヴェゼル」とミッドサイズの「CR-V」の2本立てでSUV事業を推進してきた。ところが22年、CR-Vの国内販売を終了。その実質的な後継車として、国内SUV事業を今後けん引するフラッグシップとして満を持して市場投入する意欲作がZR-Vだ。

ディスコンになったCR-Vの実質後継、どこが新しいのか

雪上でZR-Vの3タイプを乗り比べ。すると意外な事実が見えてきた
雪上でZR-Vの3タイプを乗り比べ。すると意外な事実が見えてきた

 先代CR-Vは、歴代モデルの中で最大となる大型ボディが生むゆとりの車内空間や、歴代初となるハイブリッドモデルや7人乗り仕様(ガソリン車のみ)を打ち出した。今や世界戦略車となっただけに、新機能の採用や装備の充実化を図り、ライバルとなる国内ミッドサイズのSUVに挑んだ。ただ、敬遠する消費者が少なくなかった。日本車としては大きすぎる全幅(1.855m)や、装備強化による価格帯の上昇が否定的にとらえられたからだ。残念ながら不発に終わった。

 人気のSUV市場は、各社から大小の様々な新型が矢継ぎ早に投入され、バリエーションの拡大が図られている。コンパクトSUVのカテゴリーではヴェゼルで存在感を示すホンダとしても、よりファミリー層を取り込める一クラス上のミッドサイズSUVで起死回生を狙う必要があった。それが今回発売するZR-Vなのだ。

 発売前のZR-Vを今回、先行試乗する機会を筆者は得た。しかも一般車道のみならず、性能の大小が如実に現れる雪上だ。終日乗りこなした結果をまずお伝えすると、SUV市場のパイを一定量切り崩し、競合からシェアを奪う可能性が十分あるというのが率直な印象だ。どういうことか、詳しく紹介しよう。

 まずスペックから見ていく。ボディサイズは、全長4.570×全幅1.840×全高1.620mと、CR-Vに比べて一回り小さい。ただ室内空間に影響するホイールベースは2.655mを確保したおかげで、十分なスペースを確保している。

ZR-Vでは、ガソリン車とハイブリッドの「e:HEV」車をラインアップし、さらに前輪駆動車(FF)か四輪駆動車(4WD)かも好みに合わせて選べる。写真はe:HEVのエンジンルーム
ZR-Vでは、ガソリン車とハイブリッドの「e:HEV」車をラインアップし、さらに前輪駆動車(FF)か四輪駆動車(4WD)かも好みに合わせて選べる。写真はe:HEVのエンジンルーム

 デザインも、従来のホンダのSUVとは一線を画す。CR-Vのような王道的なSUVデザインを採用せず、競合にはない特徴的な打ち出しになっている。フロントマスクは、まるで肉食恐竜を彷彿とさせるシャープで力強い印象だ。リヤスタイルは、下部にボリュームを持たせた台形スタイルとし、安定感や上級感を演出している。あえてフロントとリヤの印象に変化を持たせたることで、スポーティな走りと、SUVに求められる堅牢さや室内の広さを両立した点は、単にSUV性能を追求しない、ホンダらしい独自性を感じる。。

この記事は会員限定(無料)です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
8
この記事をいいね!する