2023年3月6日、キリンホールディングス(HD)が開発した「プラズマ乳酸菌」を採用した飲料4商品を、ライバルの日本コカ・コーラが発売する。異例の同業同士のタッグは、なぜこのタイミングで生まれたのか。キーワードは「免疫ケア」だ。免疫ケアを巡っては、アサヒグループホールディングスも虎視眈々(たんたん)と市場開拓の可能性を探る。果たして、飲料市場の新トレンドになるのか。

日本コカ・コーラが、ライバル企業の独自素材を配合した新飲料を世に送り出すという大胆な選択に打って出る。2023年3月6日にエリア限定で発売するペットボトル飲料「コカ・コーラ社 プラズマ乳酸菌 免疫ケアシリーズ」がそれだ。いずれもキリンホールディングス(HD)が開発した「プラズマ乳酸菌」を採用したのが特徴で、主力の「アクエリアス」「い・ろ・は・す」「ジョージア」「ミニッツメイド」ブランドを冠した4タイプを一気に売り出す。激烈なシェア争いを繰り広げてきた飲料業界で、競合同士がタッグを組むのは異例だ。
3年連続で伸長中、免疫ケア効果をうたうプラズマ乳酸菌入り飲料

背景にあるのが、コロナ禍によって飲料市場が大きく落ち込んだことが挙げられる。国内飲料市場規模は20年度に前年比93.4%(4兆7650億円、矢野経済研究所調べ)となり、飲料自動販売機の設置も前年割れが続き、21年12月には清涼飲料向けが200万台を割った(前年比99%の199万台、日本自動販売システム機械工業会調べ)。直近で回復の兆しは出てきているものの、2ケタ成長になるほどの回復軌道には戻っていない。
こうした中、数少ない成長を遂げているのが「キリン iMUSE」シリーズに代表されるプラズマ乳酸菌を配合した飲料だ。プラズマ乳酸菌は、免疫の司令塔である「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)」を直接活性化することが世界で初めて報告された乳酸菌で、継続して飲むことで健康な人が体の免疫機能を維持しやすくなるというのが売り。20年8月、免疫に関する機能性表示食品として消費者庁に初めて受理され、キリンHDが傘下のキリンビバレッジを通じて次々と商品化した。
するとコロナ禍で健康に対する意識が高まった消費者の心を吸引。同社のプラズマ乳酸菌を配合した飲料は22年に前年比26%増(販売数量)となり、3年連続で好調な売れ行きを維持する。
この数少ない有望株に、目を付けたのが日本コカ・コーラだった。「健康な人の免疫維持をサポートするという独自性の高い原料と、自社の飲料の処方開発ノウハウを組み合わせて、おいしい新しいプラズマ乳酸菌配合飲料を開発。それを、消費者が慣れ親しんだ信頼性のあるブランドで商品化すれば、1〜2回試して飽きてしまう一過性のブームでなく、免疫ケアという習慣を世の中に定着させられるはずだと考えた」(同社マーケティング本部ニュートリション・カテゴリー事業本部長の向江一将氏)。

折しも政府はマスクの着用について3月13日以降は個人の判断に委ねる方針を決定し、飲料需要の回復がまさに見込まれるタイミング。日本で初めて記憶力と血圧にダブルで働く機能性表示食品緑茶「からだおだやか茶W」を開発するなど技術でも強みがある同社だったが、今回はキリンHDから技術を“買う”のが最善策だと判断した格好だ。
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