2023年のバレンタイン商戦はどの程度盛り上がっているか。カカオ豆などの価格高騰でチョコレートにも値上げの波が押し寄せ、1月時点の「バレンタイン」検索者数は伸び悩んでいる。義理チョコへの風当たりも強くなり、渡す人は年々減少中。一方、主に若者の間で、“推し”にささげる推しチョコは盛り上がりを見せている。
2月14日はバレンタインデー。2023年のバレンタイン商戦はどうなっているだろうか? まず、人々の関心度合いが反映される検索動向から探ってみる。分析には、毎月更新される行動データを用いて、競合サイト分析やトレンド調査ができるヴァリューズ(東京・港)のWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用した。
新型コロナウイルス禍前の19年から23年まで、毎年1月の「バレンタイン」検索者数(推計)を調べると、19年1月は87万2000人、20年1月は前年比5.7%減の82万2000人、21年1月は同20.1%増の98万7000人、22年1月は同7.4%増の106万人、そして23年1月は同24.1%減の80万5000人だった。21年と22年のバレンタインは新型コロナの感染状況が一服していた時期で、「バレンタインくらいは楽しみたい」というリベンジ消費的な動きも見られた。だが23年は、いよいよマスクを外す議論がされているにもかかわらず、バレンタイン商戦はやや盛り上がりを欠いている。
商戦がいまいち活気づかない理由の一端は、やはり昨今の原材料価格高騰に伴う商品の値上げにある。
帝国データバンクが、前年との比較が可能なバレンタイン向けチョコレート135ブランドを調査したところ、80ブランドで値上げを実施しており、1粒当たりの価格は前年比約7%上昇していたという。
チョコの製造に欠かせないカカオ豆の価格が22年12月時点で前年同月比20%上昇(円ベース、以下同)したほか、砂糖が同10%上昇、牛乳が同9%上昇、化粧箱やアルミ箔などの包装資材も5~10%アップしている。こうした事情から、値上げに踏み切ったり、1箱(袋)に入れるチョコの個数を減らしたりするチョコレートブランドが相次いでいる。
チョコ単体の値上げもさることながら、電気料金をはじめとする生活コストが大幅に上がっていることから、嗜好品を選ぶ目も厳しくなり、購入点数を絞る動きが出ている。購入点数の見直しで真っ先に候補に挙がるのが、いわゆる義理チョコだ。
18年2月に高級チョコレートブランドのゴディバが、「日本は、義理チョコをやめよう」と日本経済新聞に全面広告を掲載して以降、職場での義理チョコを廃止する動きが進み、コロナ禍のテレワークが後押しした感がある。調査会社のインテージが毎年1月下旬に実施しているバレンタインデー調査でも、女性の「(チョコを)渡す予定はない」という回答が、20年の28.5%から、21年30.1%、22年39.4%、23年42.7%と、年々増加の一途だ。
バレンタインの多様化で、本命チョコと義理チョコ以外にも、自分用の「ご褒美チョコ(自分チョコ)」、友だち同士で交換しあう「友チョコ」、日ごろお世話になっている人に贈る「世話チョコ」、家族間で交換する「家族チョコ」などさまざまな目的、スタイルがある。近年、この一角に新たに加わったのが「推しチョコ」だ。
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