胃腸薬や目薬の老舗メーカー、ロート製薬が2023年1月15日、大阪・梅田の商業施設・NU茶屋町プラスに旗艦店「ロートレシピ 梅田NU茶屋町プラス店」(以下、ロートレシピ 茶屋町店)を開業した。創業以来、健康を科学してきた同社らしく、生きるうえで一番大事な食事のあり方に着目。「おなかの底から元気になれる」をコンセプトに、食の新ブランド「ロートレシピ」として、おいしく、健康的でサステナブルな食の体験を提供する。WIRED CAFEなどを展開するカフェ・カンパニー(東京・渋谷)と協業し、コミュニティーづくりに取り組む。

大阪・梅田の商業施設「NU茶屋町プラス」に開業した「ロートレシピ」の旗艦店。飲食スペースと物販スペースで構成。おなじみの「Vロート」のロゴフォントを踏襲したレトロなタッチのロゴで認知度アップを狙う
大阪・梅田の商業施設「NU茶屋町プラス」に開業した「ロートレシピ」の旗艦店。飲食スペースと物販スペースで構成。おなじみの「Vロート」のロゴフォントを踏襲したレトロなタッチのロゴで認知度アップを狙う

健康を科学してきたからこそ、食に着目

 「パンシロン」「Vロート」「メンソレータム」「肌ラボ」など、市販薬や化粧品を手広く手掛けるロート製薬。現在、ヘルスケア&ビューティーを軸に国内外で100ブランドもの事業を展開し、直近の業績も大幅増収増益と好調だ。そのロートが食の新ブランド「ロートレシピ」を本格始動する。なぜ、競争の激しい食分野にあえて挑戦するのか。

 その理由は、祖業が大きく関わっているという。ロート製薬の創業は1899年。文明開化で食習慣が大きく変化した当時、胃病がまん延して死亡する人が多かった。「万病の元は胃にある」と確信した創業者の山田安民は、「人々の胃の健康を守ることが日本の発展には必要」と考え、胃腸薬「胃活」を発売。以来、同社には社会や生活者の変化と課題に向き合う姿勢が根付いてきた。

 昨今は、2030年に向けて「コネクトforウェルビーイング」をビジョンに策定。生活習慣病が増加し、心のつながりが必要な時代だとし、体と心の健康につながる事業を目指している。

ロート製薬が手掛けるブランドであることを伝えるため、店内には、創業当時の本社や胃腸薬「胃活」の写真、旧ロゴマーク、シンボルのハトの装飾などをアート感覚で配置した
ロート製薬が手掛けるブランドであることを伝えるため、店内には、創業当時の本社や胃腸薬「胃活」の写真、旧ロゴマーク、シンボルのハトの装飾などをアート感覚で配置した

 「できれば薬に頼らない製薬会社になることが本当の社会貢献だと考えている。そのためには、健康の元である食事に着目し、掘り起こしていく必要がある。人の健康を科学してきたロートだからこそ、その知見を使ってウェルビーイングの構図を作っていきたい」と、ロート製薬チーフコミュニケーションオフィサー(CCO)の檜山敦氏は、食事業を強化する狙いを説明する。

 同社は以前から食品事業に参入し、オーガニック豆を使ったスープ「ダルーラ」や成長期の栄養飲料「セノビック」など機能性食品を展開してきた。10年ほど前には、奈良県や沖縄県で循環型農業などのアグリファーム事業をスタートし、社員自ら農業を体験。「活動を通して分かったのが、日本には素晴らしい食材と作り方があること。実際に調理して健康に食べてもらうことが必要だと思った」と、檜山CCOは振り返る。

 22年9月には、阪神梅田本店の総菜売り場に「ロートレシピ旬穀旬菜」をオープンし、デパ地下に初進出。新店舗のロートレシピ 茶屋町店では同店とも連動し、20~30代の女性客を中心に幅広い年代に訴求していく。

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