コンピューター内の仮想空間やサービスを示すメタバースの認知度が向上するにつれ、著名な建築家がメタバース空間で建物を設計するという例が見られるようになってきた。

 ビャルケ・インゲルス氏が率いるデンマークのBIG(ビャルケ・インゲルス・グループ)は2022年3月に、米国に本拠を置くカナダのデジタルメディア、放送会社のヴァイスメディアのバーチャル社屋を設計している。トンネルと開いた空間を組み合わせた建物内にいるとして没入感が楽しめる。主に実験的なプロジェクトを推進するオフィスになるという。英ザハ・ハディド事務所も展覧会の作品として設計するなど、メタバースのプロジェクトに積極的。同事務所のプリンシパル、パトリック・シューマッハー氏は「メタバースは建築家や建築教育が今後関わっていく領域になる」と、あるインタビューで語っている。

メタバース専門の設計事務所も

 メタバースの不動産業者といえるスイスのパックスワールドが立ち上げた仮想空間に、商業施設を設計したのは英グリムショーアーキテクツだ。米サンフランシスコが拠点の大手建築事務所HOK(ヘルムース・オバタ・カッサバウム)もメタバースに建築家やデザイナーが寄与できることは大きいと、その考え方やコンセプトを自社のWebサイトに掲載している。メタバース専門の建築事務所も出てきた。独ヴォクセルアーキテクツはメタバースで設計を請け負い、すでに数々のバーチャルな建物をつくっている。

 メタバースは仕事や会議、ショッピングなど現実の生活空間に近く、単なるゲーム上の仮想空間とは異なるだろう。建築家の技能が生かされる新領域となるかもしれない。

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