エイベックスがサステナビリティー活動の推進に本腰を入れ始めた。2022年11月にサステナビリティーポリシーを発表し、AAAの與真司郎や古坂大魔王など所属アーティストもメンバーに名を連ねる専門部署を通じてサステナビリティー活動を推進する。その狙いとは?
エンターテインメント企業ならではのサステナビリティーを推進するための専門部署であるサステナビリティ推進室が設立されたのは2022年7月。社員6人を含めて、外部識者1人、学生メンバー4人やアーティスト3人という14人の組織だ。
エイベックスが22年11月に発表したサステナビリティーポリシーは「未来の才能と、未知の感動への貢献」。エンタメ企業として、サステナブルな社会の実現に向けて果たすべき重要課題として「『無形の豊かさ』を創る、届ける」「『次世代』を創る、届ける」「『無形の豊かさ』と『次世代』を創るための土台となる組織づくり」という3つの柱を策定し、主なアクションとして大きく5つを掲げた。
(1)サステナビリティーの推進を目的としたサステナビリティ推進室の設置
(2)エンターテインメントの強みを生かした「サステナブルな社会」の実現に向けた普及・啓発
(3)サステナブルな社会に向けた次世代との協業と社会経験の提供
(4)地域・コミュニティーとのパートナーシップ強化
(5)次世代型スマートライブの推進
「これまでもサステナブルな活動をしていなかったわけではありませんでした。取り組みを体系的にまとめて、企業として打ち出せないかと考えました」とサステナビリティー推進に本腰を入れ始めた狙いを語るのは、コーポレート戦略本部 サステナビリティ推進室の西本京史室長だ。
「例えば(2002年から開催してきたライブイベントの)『a-nation』で、来場者から使用済みペットボトルを回収するエコステーションを実施していましたし、11年の東日本大震災以降、南相馬エリアにダンサーを派遣して、屋内でも体を動かせるようにしてもらおうという活動を続けていました。今は新型コロナウイルス禍で中断していますが、原発事故の影響で外で遊べない子どもたちが運動不足にならないようにということで始めました。各アーティストやタレントもそれぞれの課題感の中でいろいろな社会貢献活動をしているんですよね」(西本氏)
アクションプランは、外務省の職員としてSDGs(持続可能な開発目標)を推進し、現在は山形県米沢市のSDGs推進参与を務める専門家の伊藤夢人氏とも相談しながら策定した。
「経営戦略との整合性をとり、今後具体的に何をやっていくか詳細なアクションプランを策定しました。コーポレートガバナンスも含めて、アクションプランにいろいろな部署がひも付いているということを対外的にもアピールし、実際にやっていることを示す仕組みをつくりたかったのです。その中でも当面、特に重視するのが5つのアクションです。エンターテインメントの会社は、SDGsへのリンクが難しい部分もあるのですが、社会がエイベックスに何を求めているかを整理し、企業理念にあわせてサステナビリティーポリシーをつくりました」(伊藤氏)
サステナビリティ推進室立ち上げの狙いは、もう一つあると西本氏は説明する。
「会社のブランド調査での5年ぐらいの推移を見ていると、20代以下のエイベックスに対するブランドの評価が、緩やかにですが上がり続けていました。この世代に向けて、企業としての魅力をどう伝えていったらいいか――。この世代は、サステナビリティーやSDGsに、すごく敏感で、とてもナチュラルに接しています。コミュニケーションの一つの取り組みとして、エイベックスのサステナビリティー活動を理解してもらうことがすごく重要だと思いました」
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