米国で急伸している、小売業者による広告事業「リテールメディア」が、日本でも成長の兆しを見せている。デジタルサイネージ「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」を軸に“店舗のメディア化”を推し進めるファミリーマートも、2023年にリテールメディアで攻勢をかける。22年8月末に3000店だったサイネージ設置店を、23年12月末までに1万店へと3倍に増やす計画だ。これまでの実績と今後の展開を追った。

ファミリーマート店内レジ上に3面設置されたデジタルサイネージ「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」(出所/ファミリーマート)
ファミリーマート店内レジ上に3面設置されたデジタルサイネージ「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」(出所/ファミリーマート)

 ファミリーマートビジョンとは、来店者の視認性が高いファミリーマート(以下、ファミマ)店内のレジ上を中心に、42~65インチのディスプレーを3面配置したデジタルサイネージのこと。企業の商品・サービスの広告やエンターテインメント情報、ニュースなど、さまざまなコンテンツを音声付きで配信するのが特徴だ。

 ファミマとその親会社である伊藤忠商事第8カンパニーが2021年9月に設立したゲート・ワン(東京・港)が、サイネージの設置とコンテンツの配信を担当。サイネージに配信する企業広告については、営業から配信、効果検証まで、やはりファミマと伊藤忠などが出資して20年に設立したデータ・ワン(東京・千代田)に任せ、両社で連携してファミリーマートビジョンを運営する形を取っている。

広告主の40%はリーチメディアとして活用

 ゲート・ワンは21年9月からサイネージの設置を開始。22年8月末時点で、全国のファミマ約1万6000店舗のうち全国の都市圏を中心とする約3000店舗に導入。月間8200万人以上と接触可能なメディアに育て上げた。同社の速水大剛COO(最高執行責任者)は、「その過程でいろいろ分かったことがある」と振り返る。

 まず、「デジタルサイネージの設置が来店客数を増やす効果があると分かった」(速水氏)。サイネージ設置店と非設置店のデータを比較した場合、設置店のほうが0.4ポイント、具体的な来店客数に換算すると1日1人相当、来店客が多いという結果を得た。このプラス効果が365日積み重なれば、「店の売り上げ増に貢献する」(速水氏)というわけだ。

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