「プラダ」「グッチ」などイタリアを代表するハイブランドが加盟する業界団体アルタガンマ財団が2022年10月、「NEXT DESIGN PERSPECTIVES(ネクスト・デザイン・パースペクティブス)」をイタリアデザインの中心都市ミラノで開催した。新型コロナ禍を挟んで3回目となる今回のコンセプトは、“DESIGN IN FLUX=流動の中のデザイン”。前後編の2回に分けてリポートする。

▼後編はこちら 不確実な時代のNEXT DESIGNを語る注目の5人 ミラノ現地リポート
2022年のキュレーターは、スイス・ローザンヌの現代デザイン応用美術館(Mudac)の新館長、ベアトリス・リアンザ(Beatrice Leanza)氏(写真提供/ALTAGAMMA)
2022年のキュレーターは、スイス・ローザンヌの現代デザイン応用美術館(Mudac)の新館長、ベアトリス・リアンザ(Beatrice Leanza)氏(写真提供/ALTAGAMMA)

 「次世代のデザインを考える」ことを目的とするこのイベントの中心となったのが、フォーラム(公開討論会)だ。そこではさまざまな分野で活躍するスペシャリストやアーティスト、デザイナーたちの現在進行系の仕事と未来へのパースペクティブ(展望)が語られ、世界から集まったジャーナリストやトップバイヤーたちが聞き入った。

 人間性と自然科学を包含した革新的なアイデアと、アイデアに終わらずそれを形にしていく彼らのプロジェクトは、まさに次の時代の始まりを実感させる。と同時に、いつの時代も自然や人間の軸は変わることなく、デザインの力が時代を描き出すのだということも感じさせた。

 フォーラム前後の交流会では、講演者も聴講者も同じ席でアートやデザインの“ネクスト”を語り合い、情報交換がなされた。さまざまな事件、事象、変化が起こっている現在の世界だが、会場にはアートやデザインを通し、世界の人々が共に良き未来をつくり出そうとしている雰囲気が満ちていた。

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動物が産業になっている現実を訴え、その代替を提案するアーティスト

 1983年イスラエル生まれのビーガン(完全菜食主義者)デザイナーで、動物権利活動家のエレズ・ネビ・パナ氏。イスラエルの工科大学でデザインの学士号を取得後、2014年にオランダでデザイン修士号を、塩の再結晶に焦点を当てた論文で取得した。その後、彼の塩の調査は長期的な研究プロジェクトに発展。過去8年間にわたりイスラエルの死海で、この地域の工業化と鉱物採掘によって引き起こされた塩の壊滅的な不均衡を調査しながら作品づくりをしている。

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