東急ハンズから社名変更したハンズは屋号も「ハンズ」に改称し、新しいロゴマークに移行した。デザインは、nendo(東京・港)の佐藤オオキ氏が担当。漢字の「手」をモチーフにした柔らかいイメージのデザインで、創業以来46年間親しまれてきたロゴマークとは印象が大きく異なる。発表直後はSNSで賛否両論、さまざまな意見が飛び交い、話題となった。

ハンズの新しいロゴマーク。1976年に創業したハンズの原点に立ち返り、漢字の「手」をモチーフにデザインした。「手でソウゾウしよう。手でワクワクしよう。」というブランドメッセージを掲げ、ブランドカラーはこれまでどおり緑色を踏襲した
ハンズの新しいロゴマーク。1976年に創業したハンズの原点に立ち返り、漢字の「手」をモチーフにデザインした。「手でソウゾウしよう。手でワクワクしよう。」というブランドメッセージを掲げ、ブランドカラーはこれまでどおり緑色を踏襲した
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 ロゴマークの刷新は、「ハンズの価値」をあらためて見いだすことから始めたという。ハンズ 執行役員 新生ハンズ推進室長の松永有加氏は、「カインズによる子会社化の発表後、代表の高家(正行)は、カインズとハンズを同質化させるのではなく、それぞれがとがっていく『ハリネズミ経営』を方針として打ち出していた。ハンズがとがり続けるためにも、今後、自分たちはどうあるべきか。ハンズの価値とは何か。議論が必要だった」と話す。

 従業員アンケートを実施すると、一番多かったのが「もう一度ワクワクしたい」といった内容だった。「裏を返せば、今はあまりワクワクしながら働いていないということ。コロナ禍の影響もあるとは思うが、“東急ハンズ”というブランドに甘えてしまっていた反省もある」(松永氏)。2022年3月末に東急ハンズが東急不動産ホールディングスからホームセンター大手のカインズの子会社になり、すぐにプロジェクトチームを発足。プロジェクトメンバーは松永氏や広報部の部長をはじめ、店舗の店長や店員など12人。そこにnendoの佐藤氏も加わり、新生ハンズが変えずに守るべきことや、変えていくべきことなどを話し合ったという。プロジェクト開始後、22年10月26日に新ロゴを発表するまで、およそ半年というスピーディーな取り組みだった。

新しいロゴマークでデザインしたショッピングバッグ
新しいロゴマークでデザインしたショッピングバッグ
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nendoの佐藤オオキ氏がロゴマークのデザインを手掛けた。漢字の「手」をモチーフに、一筆書きになるようにデザインした。ブランドメッセージの動画も、一筆書きのようなイラストで表現している
nendoの佐藤オオキ氏がロゴマークのデザインを手掛けた。漢字の「手」をモチーフに、一筆書きになるようにデザインした。ブランドメッセージの動画も、一筆書きのようなイラストで表現している
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見いだした「7つの価値」とは

 顧客がハンズに求めている価値を再確認するために、最も注力したのが自社の会員組織「ハンズクラブ」の顧客データの分析だ。膨大な購買データの中から、地域や来店頻度、年代などのほか、来店頻度が上がった人、下がった人、多数の店舗で購買している人など、さまざまな角度でデータを抽出し、分析したという。「社員自ら顧客データとこれほど深く向き合ったのは、ほぼ初めてだったと思う」と松永氏。その結果をはじめ、従業員アンケート、外部調査などを集約し、言語化したのが新生ハンズの実現に向けた「7つの価値」だ。

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