みずほ銀行とソフトバンクが共同出資して2016年に設立し、17年9月に本格的に事業を開始するなど個人信用スコア事業の草分け的存在だったJ.Score(Jスコア、東京・港)が、22年12月、事実上の事業継続断念を表明した。その一方、フィンテックベンチャーのMILIZE(ミライズ、東京・港)は、新会社「みらいスコア」を設立して個人信用スコア事業に新規参入する。狙いの1つは地銀の「ネットワーク」。MILIZEとみらいスコアのもくろみを追った。
個人信用スコアとは、年齢や性別に加え、消費者の属性など個人にひも付くさまざまなデータを統合して分析し、個人の信用力を数字にしたもの。例えば、アント・グループが展開する「芝麻(ジーマ)信用」の信用スコアが広く普及する中国では、芝麻信用のスコアが事実上、個人の信用を測る社会的基準にまでなっている。
みずほ銀行とソフトバンクは折半出資で16年にJ.Score(Jスコア)を立ち上げ、ソフトバンクが持つ携帯電話ユーザーやみずほ銀行が持つ口座開設ユーザーからの許諾を得られた個人データや、Jスコアが独自で収集する個人データなどを統合してAI(人工知能)によって分析し、個人信用スコアを算出する仕組みを構築。Jスコアは、こうして得られた個人信用スコアに基づいて、ユーザーに最適な利率と貸出限度額をはじき出す「AIスコア・レンディング」事業や、スコアに応じて提携企業が用意した特典を付与する「AIスコア・リワード」事業を展開し、日本でも個人信用スコアの普及と収益化を図った。
Jスコアの事実上の撤退で個人信用スコア事業の先行きに暗雲?
だが、創業以来赤字が続き、22年3月期も約15億円の最終赤字を計上。みずほ銀行とソフトバンクはJスコアの赤字を埋めるため、18年と19年の2回にわたって計100億円を増資してきたが、今回、これ以上の資金投入を諦め、事実上、事業の継続を断念した。
Jスコアから、既存顧客が多数存在するAIスコア・レンディング事業を分割し、LINE傘下のLINE Financial(東京・品川)やみずほ銀行などが出資するLINE Credit(LINEクレジット、東京・品川)がこれを吸収する形で、事業を統合する。今後は、スコアリングサービス「LINEスコア」とスマートフォンを活用した少額融資サービス「LINEポケットマネー」を提供するLINEクレジットが個人向けローンサービスを継続して提供し、スコア・リワード事業はサービスを停止。Jスコアは清算される予定だ。
個人信用スコア事業については、LINEスコアを提供するLINEクレジットの他に、「ドコモスコアリング」を提供するNTTドコモなども事業を継続しているものの、今回のJスコアの事業継続断念で、個人信用スコアの普及と収益化の難しさが改めてクローズアップされた格好だ。
あえて新規参入するMILIZEとみらいスコア
そんな個人信用スコア事業に対し、22年11月に新規参入を表明したのが、フィンテックベンチャーのMILIZE(ミライズ、東京・港)だ。新会社みらいスコア(東京・港)を設立。みずほ銀行出身でJスコアの初代社長だった大森隆一郎氏を代表取締役社長CEO(最高経営責任者)として招き、本格的に事業化に乗り出すという力の入れようだ。
Jスコアなどと同じく自社で専用アプリを開発し、ユーザーに提供する形で個人信用スコア事業を展開するほか、個人データを大量に抱える金融機関や一般企業から個人データの提供を受けて個人信用スコア算出の精度を引き上げ、そこで得たスコアを個人データ提供元の金融機関や企業に戻してビジネスに活用してもらうという”協業”モデルでも収益化を目指す。併せて、個人信用スコア事業への取り組みを自身で検討している金融機関などに対し、コンサルティングや事業支援を進めることでも収益を得ようと考えている。
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